コロナ禍という「非常事態」をどう捉えるか

プチ整形

コロナ禍で、なかなか親しい人にも会えない。寂しいと思って落ち込む人もいれば、「これがチャンス」とダイエットなどに取り組む人もいる。

 

在宅勤務が続いて

「うちの会社、今年の初めから基本的に完全リモートになったんです。出社は月に1、2度。それも部署や仕事ごとに出社日が違うし、会議も在宅で音声のみでもOKなので、半年以上、顔を見ていない同期もいます」

ユキノさん(35歳)はZoomで、そう話してくれた。今のところは人に会うのを抑制しているというので、Zoom取材となった。

「同期とは仲良しで、毎月、同期会をやっていたんです。就職して12年くらいたって、同期は減りましたが、それでもいろいろ話し合って毎回、英気を養っていた。それがコロナ禍でまったくリアルで会えなくなった。去年の夏くらいまではリモート飲み会などもしていましたが、そういうのも物足りなくて、いつの間にかやらなくなりました」

ユキノさんも、「生きている実感」がなくなり、人と会えない寂しさも募って、一時期は鬱々と過ごしていたという。

「私は地方出身で、今はもう父は亡くなっているし、母は病気をして体が不自由になり、施設に入っています。実家は姉一家が住んでいますが、姉とは昔から折り合いが悪くて……。帰るところはない状態。このコロナ禍でかなり精神的に弱って仕事を辞めたいと思ったこともあるんです。でも辞めたら食べていけないのが現実。だからこそこの時期を、どうやって前向きに過ごそうかと考えました」

そこで彼女が思いついたのが、ダイエットだ。この3年ほどで体重が増えたのが気になっていたので、ちょうどいいと思ったという。

「お正月あたりから少しずつ体重を落として7キロほど痩せました。無理したわけでもないし、少し食べる量を減らしてウォーキングをがんばっただけ。でも着られなくなった洋服が着られるようになって経済的にも助かりました」

以前買った服をあれこれ着ているうちに、気持ちも少しずつ上向いていった。

 

プチ整形にもトライ

痩せてきたら、自分に対する欲が出たとユキノさんは言う。

「今だからできることといえば、人と会わないからこそのプチ整形もありだと思ったんです。6月に奥二重をしっかりした二重にする手術を受けました。昔から目が腫れぼったく見えるのが気になっていたので、さらに気分が上がりましたね」

8月初めに、ユキノさんの出社日があった。会社に入っていくと、たまたま同期の中でもいちばん仲のいいマリさんにばったり。

「LINEなどでは連絡をとっていたけど、部署も違うので会うのは半年ぶりくらいでした。私はなんとも思わずに『久しぶりだねー、元気?』と声をかけたんですが、彼女はいぶかしそうに『ユキノ? すっかり変わったね』って。『ちょっとダイエットしたんだ』と言うと、へえ、とどこかよそよそしい感じでした」

なんとなく気にしつつも、その日は同じ部署の人たちと打ち合わせをして帰宅した。その晩、同期の別の女性・ケイコさんから連絡があった。
 
All About

「ユキノが激やせして具合が悪いみたいだってマリが心配してたという話だったんです。表情も変わったって。なんだそれと思いました。ケイコがあまりに心配するので、じゃあ、実際に私を見てよということになり、翌日の昼間、少しだけお茶しようと」

ユキノさんに会ったケイコさんは、開口一番、「痩せたねー、でもかっこいい。化粧も変えた?」と言った。

「ダイエットしてプチ整形したんだと正直に言ったんです。マリは何も聞いてこなかったから私は話さなかっただけだとも言いました。するとケイコは、『たぶん、マリは嫉妬してるんだと思う』って。マリはもともと美人だしスタイルもいいし、私に嫉妬なんてしないでしょと思ったんですが、ケイコに言わせると『マリは自分がいちばんだと思っているから』とため息をつくんです。どうしたのかと思ったら、以前、ケイコが新しい服を着て会社に行ったとき、マリから『コーディネートがむずかしそうな服ね』と言われたんですって。それって似合ってないという意味だとケイコは受け止めたと言っていました。だから今回も、『きれいになったユキノに嫉妬しているのよ』と」

その後、ユキノさんが病気でガリガリに痩せ、表情も変わったという話が噂となって、あまり会わない先輩や後輩から心配するメールが相次いだ。噂の元はマリさんだろう。

「マリとは仲良しだったのに、どうしてそういうことを言うのか……。悲しいです。でもせっかくがんばって痩せたから、ストレスから食べ過ぎてリバウンドしないようにと思っています」

人が努力していい方向に変化すると、それを揶揄する人はいるものだ。ユキノさんがどれだけ努力してダイエットをしたか、そして思い切って手術をしたか、その気持ちをマリさんは考えようともしなかったのだろう。

「こういうことがあると、本当の友だちだったかどうかがわかりますね。ケイコが『私が噂を否定しておこうか』と言ってくれましたが、しなくていいと言いました。いずれ真相はわかるだろうし、会える時期が来たら自分から説明したいし」

人と人が顔を合わせなくなると、いろいろな噂が乱れ飛んだり憶測だけがひとり歩きしたりすることもあるのかもしれない。だが、こういう非常事態だからこそ、人としての真価が問われるのではないだろうか。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。