葬儀・葬式

身寄りがない人が亡くなった場合の葬儀や納骨先は?お墓を継がない「永代管理墓」の選択も

「身寄りがないため葬儀やお墓は不要」という声を耳にすることがありますが、死後は様々なことを第三者に託す必要があります。民法改正による成年後見人の死後事務範囲、最近注目されている永代管理墓などについて事例をもとに紹介します。

吉川 美津子

執筆者:吉川 美津子

葬儀・葬式・お墓ガイド

身寄りがない人が亡くなった場合、誰が故人を引き取るのか?

身寄りのない人の終活は、生き方や逝き方を考えるきっかけに

身寄りのない人の終活は、生き方や逝き方を考えるきっかけに

身寄りのない人が高齢になると、生きていく上で様々な問題が生じてきます。

例えば、高齢者であったり保証人がいないことを理由に賃貸借契約ができなかったり、本人に判断能力がないために手術等の同意をすることができない場合は、医療機関のほうで社会的相当と思われる医療行為を決定することになります。

今回は、身寄りがない人が亡くなった場合の死後の葬儀やお墓について、事例をもとに紹介したいと思います。なお、ここでいう「身寄りのない」とは、頼ることができる親戚がいない、親戚等がいても連絡を取ることができない、自ら希望していない、といったケースのことを想定しています。

今回の事例は、102歳で老衰のため亡くなった高齢者施設に入所していたAさん。

きょうだいはすでに死去、夫と生涯独身だったひとり息子も先に亡くなっています。遠縁にあたる親戚はいるものの、30年以上連絡をとっていません。晩年は成年後見人がつき、身上監護や財産管理等を行っていました。

施設で亡くなったAさんは、その後、どうなったのでしょう。
 

「死亡届」を出す人は法律による

亡くなったら最初にすべき手続きは「死亡届」の提出になります。

死亡届の提出については法律により、同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人、または同居者以外の親族となっています。

死亡時に成年後見を受けていた高齢者の場合は、成年後見人が届出人となることもあります。また、施設入所者の場合は、家屋の管理人である施設長が届出人となることもあります。

Aさんの場合は、成年後見人が届出人となり、死亡届を役所に提出しました。
 

遺体は誰が引き取るか

死亡届などの手続きができる範囲については法律によるものの、遺体の引き取り人については定められていません。死亡届が提出されても、その届出人に遺体を引き取る義務が生じることにはならないのです。

一般的には「遺体は祭祀を承継すべき人に帰属する」と考えられています。祭祀とは、神仏や祖先をお祭りすること。遺言があれば指定された人が、ない場合は配偶者や子ども、親戚など慣習により決められ、それでも決められない場合は家庭裁判所によって指定されます。

Aさんの場合、死後、成年後見人が故人と対面し、ご遺体を引き取りました。葬儀社を手配し、葬儀社の霊安室に搬送・安置、火葬までの時間を過ごしました。
 

遺骨の行先はどうなるのか 

2016年の民法改正により、成年後見人はそれまでできなかった一定範囲の死後事務を行うことができるようになりました。そのため成年後見人は、家庭裁判所の許可を得て前述の「死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結」を行うことができるようになったのです。

火葬後の遺骨の扱いについての契約は法律に明記されていませんが、これに準ずるものとして、納骨に関して家庭裁判所の許可が得られる場合があります。
 
Aさんの場合は、すでに亡き夫と子どもの墓が寺院内にあり、遺骨の行先が決まっていたため、成年後見人は菩提寺に連絡を入れました。Aさんの家とは先代からの付き合いだったこともあり、火葬当日に住職が立ちあってくれました。一緒に骨上げを行い、そのままAさんは家族が眠るお墓に納骨されました。

身寄りのないAさんでしたが、死後は家族と一緒の場所に再び集ったわけです。しかし、Aさんのお墓問題がこれで解決したわけではありません。今後このお墓を守っていく人がいない今、「無縁墳墓」となってしまう可能性があります。
 

遺体の引き取り手がいない場合

Aさんのように、遺体の引き取り手がいて、納骨先まで決まっている人ばかりとは限りません。
たとえば、親戚付き合いも近隣の付き合いもなく、突発的な急病や事故などで身寄りのない人が自宅で亡くなった時はどうなるのでしょうか。

死亡が確認された後、まずは自治体や警察で遺体の引き取り手を探します。引き取り手がいない場合は、「墓地、埋葬等に関する法律」に基づき自治体のほうで遺体を引き取り、火葬、遺骨はそれぞれの自治体で保管されるか、自治体が保有するまたは委託先の墳墓や納骨堂などに納められます。こういった遺骨の保管や管理については規定がないため、それぞれの自治体の判断にまかされているのが現状です。

費用については、遺留金品から支出されることが前提となりますが、ない場合は生活保護法に基づく「葬祭扶助」が適用されることもあります。
 

身寄りのない人の「終活」は

よく「自分の葬儀は簡単で良い。火葬だけして、遺骨は海に散骨してくれれば良い。モノはすべて処分して」という意見をよく耳にします。その希望を叶えることは可能ですが、火葬も散骨も自分で行うことはできません。モノを処分するにも誰かに託す必要がありますし、それには労力と費用がかかります。

「身寄りがないから誰にも迷惑をかけない」というわけにはいかないのが現実で、自分の死後に幾人もの人が関わることを念頭に終活を考えたいものです。

死後の希望を実現するために「死後事務委任契約」を結んでおくのもひとつの方法です。死後事務の内容は、関係者への連絡、葬儀や納骨の手配、病院・施設・住居の片付けや未清算分の支払い、電気・ガス・水道・電話などの各種解約と清算、役所の手続きなどがあります。

死後事務は身近な信頼できる第三者との間で契約を締結することもできますが、煩雑な手続きがあったり法律行為が絡んでくることもあるため、法律の専門家が入ることが一般的です。最近は社会福祉協議会で類似のサービスを提供しているところが増えてきました。

受任者への報酬のほか死後事務に関する費用については、あらかじめ預託しておくか、遺産から支払う形になります。
 

継ぐ人がいなくても入れる「永代管理墓」 

納骨先については、お墓を子々孫々継ぐことを目的としない「永代管理」「永代供養」システムをとっているお墓が注目されています。血縁者ではなく墓地の運営主体である自治体や寺院等が、遺骨を管理・供養してくれる仕組みです。なお、宗教儀礼をともなう「供養」は自治体の墓地・霊園では行いません。

納骨方法は合同納骨や個別に使用できるお墓など様々。供養塔のような石塔をシンボルとするタイプや樹木をシンボルとするタイプもあり、永代管理墓・永代供養墓のスタイルも多様化しています。生前に、永代管理墓・永代供養墓を購入しておくことで、火葬後、納骨までの道筋ができます。

「先祖代々のお墓があるけれど、自分の代で途切れてしまう」という場合は、先祖の遺骨は別のところに移し、お墓を更地にして返還する「墓じまい」を検討することもひとつの方法ですが、先祖や自分が入るお墓がなくなってしまうのは寂しいもの。

いずれは自分が入ることも想定した上で残しておき、没後数年間は管理や供養を寺院や第三者に委託できる仕組みもあります。すぐに墓じまいを考えるより、寺院や石材店に相談してみることをおすすめします。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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