亀山早苗の恋愛コラム

独身でいたい私に「結婚しないの?」と質問するのはなぜ?彼女がSNSで「匂わせる」理由

「恋愛したくない」「恋人はいらない」。そういうタイプの女性が増えている実感がある。だが彼女たちがそれを公に口にすることは少ない。「ヘンな人」という扱いを受けたくないからだという。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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恋人などいらない……しかたがないのでいるフリをしている私

恋人いらない

「恋愛したくない」「恋人はいらない」。そういうタイプの女性が増えている実感がある。だが彼女たちがそれを公に口にすることは少ない。「ヘンな人」という扱いを受けたくないからだという。

 

家庭への憧れはない

「29歳のときに3年つきあった彼と別れたんです。原因は彼が結婚したがっていて、私がしたくなかったから。早く子どもがほしいと言う彼に、私は結婚も気が進まないし子どももいらないから、別の人と幸せになってと言うしかありませんでした」

ミカコさん(35歳)はそう言って苦笑する。7歳のときに両親が離婚、母と暮らしたが彼女が中学生のときに母が再婚、離婚。そして高校生のころにまたも結婚、離婚を繰り返した。母の再婚、再々婚に際しては継父を「この人は父親ではない。母の新たなパートナー」と割り切っていたという。

「結婚そのものに疑問を抱きましたね。まだちゃんと言葉で説明できなかったけど、母が私の父を捨てて、次々別の男性と結婚を繰り返すことに、何の意味があるんだろうと思っていました。母は小さいながらも事業をやっていて、経済的には困っていなかった。だから純粋に“頼れる誰か”がほしかったんでしょう。だからいちいち結婚という形をとることにこだわった。でも思春期の女の子がいる家庭に、新たに大人の男が入ってきて一緒に暮らすのはしんどいですよ。きょうだいがいればいいけど、私はひとりっ子だったから、母とパートナーから、いつもつまはじきにされているような気がしていました」

だから彼女は結婚への憧れなど抱いたこともない。恋愛はしたが男性には頼らなかった。幸い、大学を卒業して希望していた仕事に就くことができた。数は少ないが本音を話せる友だちもいる。“家庭”という重荷は背負いたくなかった。

 

リア充のフリに疲れてきて

前の彼と別れてから、彼女はデートをしたり軽い恋をしたりして満足してきた。長くつきあうような恋愛は避けたいと思っていたので、自分のペースで生活できている。

「母の再婚離婚で振り回されてきたから、私は私のペースで生きていきたいんです。でも周りから見ると、結婚につながるような恋愛をしようとしない私のことが心配なのか、なんとかしてやりたいと言ってくれる人が多くて(笑)。ある意味、ありがた迷惑なんですが」

男性を紹介すると言ってくれる職場の先輩もいれば、趣味でつながっている知人は「ミカコさんの結婚相手候補」だといって男性を連れてきたこともある。

「無碍に断れないだけにつらいんですよね。しかたがないので、最近はリア充だというフリをしています」

仲良しの友人と食事に行ったときは、あたかも誰かとデートしているかのような写真をSNSにアップする。相手を写さず、誰かといることだけを「匂わせる」のだ。

ひとりで映画を見に行っても、自分の思いとは別の感想を入れ込み「こんな意見もあるみたい」と、あたかも恋人と一緒に観たかのように書く。

「そうしているうちに、『なんだ、つきあっている人いるんだ』と言われるようになりました。いないけどいることにしておいたほうが、周りに気を遣わせずにすむとホッとしていたら、『結婚しないの?』と言われるようになった」

私のことなど放っておいてと言いたいところだが、周囲の温かい気持ちがわかるだけに、突っぱねることもできずにいる。

「リア充であってもなくても、周りはいろいろ言うものなんだろうし、言われているうちが華だとも思う。でも私はひとりでいるのがいちばん気楽。私のことをわかってくれているはずの友人でさえ、『30年後に後悔するよ』と言いますが、後悔したとしてもそれはそれで私の人生だもの、放っておいてと思いますね」

彼女を振り回した母は、4度目の結婚をしているが、あまりうまくいっていないようだ。いくつになっても学ばない母だと彼女はふっと笑った。

「ひとりで生きていくのは選択肢のひとつ。結婚さえすれば幸せというわけじゃないことはみんな知っているはずなのに、それでも『結婚しないの?』と質問するのはなぜなんでしょうね。私にはそれがいちばん不思議です」

世の中は結婚する人が大多数だからなのだろう。だが、どんな生き方をしようが、それはその人の自由。日常が充足しているフリをしてきたミカコさん、そろそろそんな演出にも疲れてきたようだ。

「これが私の生き方なんです、と言わずにすむような世の中だったら気楽なんですけどね」

最後はため息交じりにそう言った。
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