コロナ禍で高齢者の「ペットロス」が長期化…最愛のペットを見送った飼い主には重すぎる7つの言葉

新型コロナウイルスは私たちの生活に大きな影響を与えました。それはペットを見送った高齢者の方も例外ではありません。コロナ禍だからこその問題と癒し方、周囲の人が気をつけるべきことをペットロスカウンセラーの川崎恵がお伝えします。

川崎 恵

執筆者:川崎 恵

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高齢者が「ペットと暮らす」ことで得られるメリット

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ペットといえば「癒し」の代名詞のような存在と思われがちですが、ペットは単なる癒しに留まる存在ではありません。特に高齢者の方にとって、ペットがもたらす効能は他の年齢層よりもはるかに大きなものなのだといわれています。具体的なメリットの一例を記してみましょう。

  • ペットの世話(食事、散歩、掃除)をすることで生活のリズムが整う
  • 自分が必要とされていることで生きがいを得る
  • 外出する機会ができる(散歩・動物病院・ペットの生活用品を買う)
  • 散歩や外出先でペットのことを話す機会が生まれ、地域社会と接点ができる(新たな友人ができる、コミュニティに参加できる、地域の一員であることを実感できる)

高齢者の方の健康は、決してその個人のみで完結できるものではありません。助けとなる他者を必要とすることが多いものです。ただ、そのサポートを子どもや孫が行おうとすると感情面でうまくいかず「壁にぶつかる」のもリアルな現実です。その壁を難なく越えるのがペットなのかもしれません。上記のメリットから見てとれるように、ペットは高齢者の方の心身を支える大きな役割を果たしているといえるでしょう。
 

「ペットロス」の高齢者の多くが口にする言葉

筆者はペットロス専門のカウンセリングサロンでペットロス相談を受けていますが、ご相談者様にとってペットが「何者にも変えがたい存在であること」を日々実感しています。

老若男女問わず「ペットは家族の一員である」と言われる方が非常に多いのです。そして、その存在を見送ったとき多くの方が吐露するのは「両親の死よりも悲しい」との言葉ですが、高齢者の方の場合は、それとは若干異なります。遠い記憶である両親の死を思うのではなく、長年連れ添った夫や親友との別れを思い返し、「あの時よりもはるかに悲しい」と言うのです。

また、声を小さくして「あの子は、実の子どもより、孫よりも可愛い存在なんです」とも……。本来、子どもや孫とは目の中に入れても痛くない存在。これらの言葉からも、高齢者の方にとってペットがどれだけ心の支えであったか、かけがえのない存在であったかを伺い知ることができます。
 

高齢者の「ペットロス反応」

そもそもペットロスとは、ペットの喪失に伴う心身の自然な反応を意味します。主な反応としては以下が挙げられます。

《心の反応》
深い落ち込み・後悔・罪悪感・喪失感・絶望感・孤独感・不安感・怒り・憎しみ・感覚鈍麻・無気力・希死願望

《体の反応》
号泣・頭痛・めまい・眼精疲労・関節痛・胸の痛み・胃の痛み・嘔吐・過呼吸・パニック・倦怠感・脱力感・記憶力の低下・持病の悪化・睡眠障害・摂食障害・幻聴・幻覚

高齢者の方は1日の大半をペットと過ごしているので、その存在を失うことは「生きる世界が根底から崩れたこと」を意味します。また、ほかの年齢層とは違い、社会や地域との接点も少ないので、ペットの死から気持ちを切り替えることが難しく心身に大きな負荷がかかりやすいといわれています。高齢になると持病を抱える場合も多いので、病気が悪化しないように周囲が優しく見守ることも大切です。
 

コロナ禍で長期化する「高齢者のペットロス」

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コロナ禍で高齢者のペットロスは「回復しづらい」傾向に

新型コロナウイルスにより私たちの生活は大きく変わりました。人との距離をとらざるを得ないコロナ禍は「高齢者がペットロスから回復する機会を逸する傾向にある」といわれています。

その1番の要因は、他者との積極的な交流を避ける時流にあります。例えば、このコロナ禍では高齢者の方が自らのペットロス体験を他者に話し、心を癒す機会が減少しました。また他者に話を聞いてもらい、寄り添ってもらうことで心を癒す機会も減少しました。

ペットを失った後は、誰でも内にこもる傾向にあります。しかし、コロナ禍ではそこに「安心安全のためのに物理的に距離をとる」との時流が加わり、ペットロスから1歩先に進む機会が失われやすい傾向にあるのです。

高齢者の方は他の年齢層と比較して交流範囲が狭いものです。その上、時流によりさらに周囲から孤立しやすくなり、孤独感を抱きながらも癒すきっかけをつかめずにペットロスが長期化してしまう……これがコロナ禍特有の「高齢者のペットロス」の特徴といえます。
 

高齢者のペットロスで周囲が気をつけるべきこと

高齢者の方は免疫力が低いので、ペットを失ったあとに体調を崩されるケースが多くみられます。周囲の方は注意深く見守ることが大切です。何よりも丁寧に話を聞いてあげてください。高齢者の方が何度同じことを話しても、その都度、新しい話を聞くように心と耳を傾けて聴いてあげてください。くれぐれも、下記のような言葉を投げかけてはいけません。

  • その話、何度も聞いたわよ
  • 悲しんでいたら成仏できないよ
  • 泣いていたらあの子が困るよ
  • 大往生だったのよ
  • ペットを飼うのは無理があったのよ
  • 自分のことで精一杯でしょ、次の子はダメよ
  • 次の子を迎えたら?

ペットロスが回復するまでの期間には個人差があります。本人の心身の状態、ペットとの関係性、看取り方、死生観など様々なことが影響しますので、周囲は長期的な視点で見守ってあげてください。
 

高齢者が「次のペット」を迎えるメリット・デメリット 

高齢者の方が再びペットを迎えることには大きなメリットもありますが、心配すべきデメリットも他の年齢層より非常に高いといえます。

《メリット》
・再び心身を癒すパートナーができる
・世話をする対象ができることで生きがいに繋がる
・心身の健康につながる
・地域とコミュニティが再び築ける

《デメリット》
・ペットロスが悪化する可能性もある
・飼育困難になる可能性もある
・ペットを心配し、ご自身の体調が悪くても病院へ行かない可能性もある

「次の子を迎えたら?」とは、安易に周囲がいえることでありません。ペットの世話やしつけが充分にできなくなったり、また自身が病気になるといった緊急事態が起こる可能性もあります。次のペットを迎えることを検討するときは、高齢者の方にどのようなことが起こっても「ペットが安心して生活できる」バックグランドを整えることが非常に重要です。
 

まとめ

現在のコロナ禍は、悲しみを持った人に物理的に寄り添いにくく、孤立孤独が進みやすい傾向にあります。高齢者の方がペットを見送ることは、単にペットを失ったというのではなく「最愛の存在を失った」という意識で温かく見守ってあげてください。

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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