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最新家計調査からわかる、昨年の消費支出の動向
昨年からの新型コロナウイルスの影響は消費行動に確実に現れています。在宅勤務への切り替えや通勤の頻度が減少するなど、仕事のスタイルが変わると同時に、消費行動も変わります。プライベートでも旅行の自粛や外食や会食を控えるなど、食生活や娯楽、友人との付き合いといった消費行動にも変化が起きています。2021年5月に発表された総務省統計局の『家計調査報告(貯蓄・負債編)』では、平均貯蓄額が昨年から増加となりましたが、この先、新型コロナウイルス感染症の影響が、どう家計に影響を与えるのか、計り知れません。
まずは、昨年の消費支出の傾向を確認していきましょう。
実質的な消費額は2001年以降で最大の減少幅に
総務省統計局の『家計調査報告(貯蓄・負債編)』に先立ち、毎年2月に「家計収支編」が発表されます。この調査データから消費支出の傾向を見ていきます。二人以上の世帯データでは、1カ月の平均消費支出は27万7926円で、前年から1万5453円の減少となり、物価変動などを考慮した実質増減率では、5.3%の減少。これは同調査で比較可能な2001年以降で最大の減少幅となりました。
近年の推移を見ていくと、2011年に東日本大震災が発生し、消費支出は大幅に減少。その後3年連続で消費支出が増加。しかし2015年から再び、消費支出が縮小する傾向にありました。実質増減率では、2018年まで5年連続で減少。2019年はゴールデンウイークの10連休、消費税率の引き上げによる駆け込み需要で、消費支出額が増え、実質増減率も0.9%の増加となりました。
それが、今回の調査では、消費支出額が大幅に減少、実質増減率も過去最大の下げ幅という結果に。コロナ禍が収束する見通しが立ちにくい今年。昨年以上に家計の引き締め、外出自粛などが行われれば、消費に大きな影響がでてくるかもしれません。
支出の内訳10項目のうち7項目で実質減少に
二人以上世帯の消費支出の内訳では、10項目のうち7項目が実質減少。減少したのは、食費、住居、被服および履物、交通・通信、教育、教養娯楽、その他の消費支出の7項目。なかでも、被服および履物が19.8%の減少と大きく、次いで教養娯楽の18.1%の減少。いずれも外出自粛の影響が大きく反映されています。その他の消費支出の内訳で、こづかいが12.9%減少、交際費が16.5%減少という点も、コロナの影響が大きく出た項目と言えるでしょう。一方、増加した項目は、光熱・水道、家具・家事用品、保険医療の3項目。なかでも、ステイホームを反映した光熱・水道、家具・家事用品の増加は当然の結果と言えるでしょう。保険医療に関しては、消毒、除菌などの衛生用品の購入などが増加の要因だったかもしれません。
消費支出を年代別で見ると、29歳未満を除く全年代で支出が減少
年代別で前年と比較してみると、全体平均では1万5453円の減少で、29歳未満を除き各年代で減少しています。なかでも、50歳代が前年より2万4315円の減少となっており、コロナ禍による行動変化の影響が最も大きかった年代といえます。年収が多いほど、消費支出は増加する
当たり前といえば、当たり前ですが、年収別で消費支出をみると、年収が多いほど消費支出は増加します。表面的には、そのとおりなのですが、基本的な生活にかかるコストは、年収が低くても、それなりの額が必要です。年収が最も低い第1階級の消費支出を1年で換算すると約230万円。この階層の平均年収は255万円ですから、残りは30万円程度。これでは貯蓄に回すお金はなく、日常生活でギリギリの状態といえるでしょう。かたや、最も年収が高い第5階級の年間消費額は約470万円。平均年収から差し引いて700万円以上も貯蓄に回せる家計力があるのです。
年収が低い層には、若年層が多く含まれていますから、今後の年収アップなどで、家計収支は改善されるかもしれませんが、現状では、給料のやりくりで精一杯、というのが実情でしょう。
ただ、年収別にみても、どの階層も昨年から支出額が減少しており、年収にかかわらず、コロナ禍により消費が抑えられたという結果になっています。
新型コロナウイルスによる家計への影響を考えておく
今回の調査は2020年に行われたもので、新型コロナウイルス感染症による、さまざまな影響が確実に反映されています。各家庭においては、世帯収入の減少、場合によっては貯蓄の取り崩しで生活を乗り切っているケースもあるでしょう。また、消費支出の10項目で説明したように、行動変容、外出・旅行の自粛などにより、支出額の減少だけではなく、支出のバランスも変化しています。各家庭では、こうした家計への影響を洗い出しておくことが重要です。まだまだ厳しい状況が続きますが、半年先、1年先の家計の見通しを立て、支出の管理をしていくようにしましょう。
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