基礎をおろそかにしての応用はなし! 偏差値30台40台からの逆転戦略
偏差値30台、40台……模試「E判定」から逆転合格するには?
そんな大学受験で逆転合格する人は、一体どんな勉強をしているのでしょう? リアル版「ドラゴン桜」とまではいきませんが、1年間で偏差値を10以上アップさせた、日本史が得意で英語はまずまずの成績、総合偏差値40台のAさん、また、得意科目のない総合偏差値30台のBさんのE判定からの逆転合格勉強法について紹介します。
総合偏差値40台、苦手科目の英語を基礎から徹底復習、E判定だった第一志望に合格したAさん
Aさんは日本史が得意で、英語はまずまずの成績でした。そんなAさんの逆転勉強法はまず、得意な科目を徹底的に伸ばすことでした。金谷俊一郎著『日本史B一問一答【完全版】(東進ブックス)』を穴が空くまでくり返しやるようにアドバイスし、それと並行して解説系の参考書、金谷俊一郎著『金谷の日本史「なぜ」と「流れ」がわかる本【改訂版】(東進ブックス)』シリーズを熟読させました。
この他、もともと日本史が好きなだけあり、「徳川四天王って?」「『ちょ』から始まる戦国武将を何人知ってる?」など、教科書には載ってない雑学的な問題を出すことで、知的好奇心をかき立てることにしました。また、DSソフト「山川出版社監修詳説日本史B総合トレーニング」の対戦を通じて、ゲーム形式で知識の定着を図ることにしました(有料版アプリを利用するのも良いでしょう)。
その結果、河合塾の模試で偏差値57.4だった日本史Bは、最高で71.2をたたき出す快挙を達成しました。
一方、英語は王道通り学校配布の教材である『英単語ターゲット1900(旺文社)』をボロボロになるまでやり込み、瓜生豊・篠田重晃(著、編集)『Next Stage英文法・語法問題(桐原書店)』で文法事項を補いました。自分のレベルに合っているのなら、学校の教材を100%こなすことが大切だからです。
あとは、他学部も含め、志望する大学の赤本(過去問)を徹底的にやり込みました。
こうして、一番悪い時で41.9だった英語の偏差値を最高で63.0までアップさせたAさんは、最初はE判定だった第一志望の大学に見事、合格することができました。
総合偏差値30台のBさん。偏差値40台の日本史を「一問一答式」で基礎から復習して偏差値10アップ
得意科目がないBさんは、最初の記述模試で英語の偏差値は39.8、日本史の偏差値は41.3しかありませんでした。しかし、勉強の仕方を工夫した結果、偏差値50前後までアップさせてずっとE判定だった大学に合格しました。BさんもAさんのケースと同様、まずは日本史の一問一答式を徹底的にやるよう指示しました。とはいえAさんと違うのは、金谷俊一郎著『日本史B一問一答【必修版】(東進ブックス)』をやってもらったことです。必修版は完全版と違い、星2つ~3つの(出題頻度の高い)問題が中心に収録されています。しかも、見開きで左側に問題、右側に答えと解説という構成になっています。日本史の偏差値が40台のBさんは、まだ基礎的な知識が不十分だったので、基礎が網羅できる必修版の方が向いていたからです。
そんなBさんがある時、「学校の日本史の先生が教科書を読みなさい。一問一答式はテストの直前におさらい程度にやればよいと言っていたんですが、どうすればよいでしょう?」と質問してきたことがあります。しかし、高校で日本史の先生になる人は、もともと歴史が得意であるため、教科書を読むだけでもある程度、歴史の流れが理解できるのでしょう。一方で歴史が得意でない人は、重要語句の一つひとつの理解が不十分です。これは英語でいえば単語力不足、数学でいえば計算力不足と同じであるため、まずは一問一答式で基礎知識を身につける必要がありました。
そこで、私は学校の先生とは逆の勉強法、まずは一問一答式をしっかりやるように指示しました。そして、よくわからないところがあったら、教科書の代わりに石川晶康著『日本史B講義の実況中継シリーズ(語学春秋社)』の該当する箇所だけを読むようにアドバイスしました。
実は学校で使っている(検定)教科書は、紙面の都合で歴史の流れや背景が省略されています。例えば、明治政府が行った「秩禄処分(ちつろくしょぶん)」は、学校の教科書ではたった数行で説明が終わっています。「秩禄」とは、明治政府が主に士族(元武士)や維新功労者に支払ったいわば給与(禄)です。ところがその多くは官職につかず、新政府に対してほとんど貢献していませんでした。しかも、これが明治政府の支出の3分の1近くを占めたため、財政を圧迫します。こうして、秩禄を取りやめないと明治政府自身が傾いてしまうため、廃止となったのです。
歴史の流れや背景を詳しく理解するためには、教科書以外の解説系の参考書や動画、歴史マンガなどを見て、調べる必要があります。逆に、教科書は必要最小限のことが網羅されているため、テストの直前にもう一度おさらいするときに向いています。そのためBさんには、まずは一問一答式、それから教科書を読むように指示しました。
このように必要な教材を必要に応じて使い分けることが逆転合格の最大のポイントです。
偏差値30台の英語も「語彙力」「速読力」の超基礎レベルから復習し、E判定だった大学に合格
英語の場合はどうでしょうか。くしくも、Bさんは共通テスト最初の世代でした。共通テスト対策は手探り状態ではありましたが、それでも英語の基本は相変わらず「語彙力」と「速読力」にあります。そこでまず語彙力と速読力を上げるため、風早寛著『速読英単語入門編[改訂第2版*](Z会)』を秋までに終わらせ、その後、必修編を読むようにアドバイスしました(*現在は改訂第3版)。速読英単語は筆者が受験生の時にもあった単語集です。見開き1ページ構成で、左側に英文、右側に日本語訳が載っているのが特長です。英文を読みながら単語を覚えるというコンセプトの単語帳ですが、どちらかといえばひと通り単語を覚えた人が、速読という実践力をつけるのに向いています。こちらは、入門編をやってから必修編をやるのがポイントです。
また、長文読解には、英文解釈のための「英文法」と、「構造分析」と呼ばれる英文の主語と動詞、修飾関係などを読み取る力が必要です。Bさんに限らず、英語の偏差値が40前後の塾生にはまず、大岩英樹著『大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】(東進ブックス)』を読んでもらっています。これは英文解釈に必要な基礎的な文法の知識と技能を身につけるためです。
例えば、英文中にrunという単語が出てきたとき、たいていは「走る」という意味ですが、「run a restaurant」と目的語をともなうときは、「(レストラン)を経営する」という意味になります。このとき、このrunが他動詞だということがすぐにわからないと正しい解釈ができません。これが長文読解の場合、「この人はレストランの中で走り回る人なのかな」と、致命的な誤解をしかねないのです。文法というと、英語嫌いを生み出す諸悪の根源みたいに思われていますが、英文解釈のためには最低限の文法の知識は欠かせないものなのです。
また、高校では教科書の英文を一文ずつ読んで、先生、あるいは生徒がそれを日本語に訳しながら構造を書きこんでいくという一文精読の授業が大半を占めていると思います。しかし、入試ではこれを分単位でこなさなければいけません。つまり、一文精読のような悠長なことをやっている場合ではないのです。
そこで、塾生には構造分析が初めから載っている参考書の多文多読をすすめています。例を挙げるとしたら、安河内哲也・大岩秀樹著『英語長文レベル別問題集シリーズ(東進ブックス)』です。こちらは、問題文は英文だけが載っていますが、解答ページが見開き構成になっていて、左側に英文と構造分析、右側に日本語訳が載っていて、対訳することが可能です。
また、「レベル1超基礎編(中学~公立高校受験レベル)」から、「レベル6難関編(難関私大・難関国公立大レベル)」までレベル別になっているのも特長です。自分の英語力に合ったものから始めると良いでしょう。
逆転合格の秘訣は自分のレベルにあった問題集をやること
「E判定」からの逆転合格を狙うには、場合によっては小学生や中学生の問題集からやり直しも必要
例えば、数学の場合は、基礎からおさらいするなら上園信武著『数学I・A基礎問題精講五訂版(旺文社)』がおすすめです。
学校の先生はもちろんですが、最近ではYouTuberがいろいろな参考書や問題集を「おすすめ」として紹介しています。もちろん、どれもこれも特長をもった素晴らしい参考書や問題集ばかりです。しかし、それらが全て「万人向けか」と言われると、必ずしもそうではありません。
難関大学を目指しているからといって、最初からそれ相応の難しい問題集に取り組むのは早計です。基礎が不十分であれば、まずは基礎が身につく問題集からやるなど、自分の今の学力レベルに合った問題集をやることがポイントなのです。
ドラマ「ドラゴン桜」でも、場合によっては小学生や中学生の問題集からやり直しをさせているシーンがあります。実はこれはとても理に適ったことなのです。
この点さえ見誤らなければ、逆転合格は多くの人にとって、実現可能なことなのです。
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