亀山早苗の恋愛コラム

「パートナーがいてもひとりの時間が欲しい」問題は男女の差ではない

「ひとりでいる時間が必須」だと感じている人は、男性にも女性にもいる。お互いにそれがわかっていれば問題はないが、片方が「一緒にいてくれないのは愛情が薄くなったからか」と考え始めるとトラブルになりやすい。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「ひとりでいる時間」が大切な人、常にべったりしたい人

ひとり時間

タレントの紗栄子さんがテレビ番組で、「仕事のとき以外はずっとパートナーと一緒にいたい」と発言し、それに男性タレントが反論して話題となった。

だがこれ、男女の性差ではなく、個人差である。「ひとりでいる時間が必須」だと感じている人は、女性でも多いものだ。お互いにそれがわかっていれば問題はないのだが、片方が「一緒にいてくれないのは愛情が薄くなったからか」と考え始めるとトラブルになりやすい。

 

「ひとり時間が貴重」だとわかってもらうのが大変

30歳のときに結婚した彼は、実家住まいだったとマサコさん(39歳)は言う。彼女は学生時代からひとり暮らし。

「仕事から帰ってきたら、まずひとりでぼーっとするのが日課でした。深夜もひとりで本を読んだりする時間は重要だった。結婚しようとなったとき、私にはひとりでいる時間が必要なんだと彼に言いました。彼は『わかった』と言ったけど、実際に生活が始まってみると、まったくわかっていなかった」

新婚旅行はフランスへ。着いた翌日、彼女は昼間、「しばらく別行動しない? 夕飯までにはホテルに戻るから」と言ってみた。すると彼はいきなり、「どうして? 一緒に行動すればいいじゃない。きみの行きたいところへ行くから」とすがりつくような目で言った。

「外国に来たら、ひとりで現地を歩いてみたいと思っていると私は言いました。すると彼は自分勝手だのなんだのとぶつくさ言って」

それでも彼を振り切って、彼女はひとりで街を歩き、美術館へ行き、スーパーマーケットで買い物をし、カフェでひとりお茶しながら現地の人たちを眺めた。そういう時間が彼女には重要なのだ。

「夕方ホテルに戻ると、彼は部屋で寝ていました。がっかりしましたね。ひとりでこういうところへ行ってきたよと情報交換できると思ったのに」

気まずい新婚旅行を経て始まった新生活でも、同じことが起こった。平日の夕飯はそれぞれ各自でと決めていたので、彼女は早く帰ってくると自分だけで夕食をすませて自室にこもり、読書をしたりネット配信の映画を観たりした。

「彼が帰ってくるのはわかりますから、一応、部屋から出て『お帰り』とは言います。でもそこから彼は一緒にテレビを観たがる。私、そもそもテレビは観ない。ただ彼と会話はしたいと思うから、リビングで話そうとすると彼はテレビに夢中。じゃあ部屋に行こうと思ったら一緒にいようと言う。そういうの、私にとっては時間の無駄なんだよねとうっかり言ってしまったことから、決定的に関係がまずくなりました」

彼女は彼と一緒にいることが無駄だと言ったわけではなく、ふたり並んでテレビを観ているだけの時間が無駄だと思ったのだ。それは彼には伝わらなかった。何を話すわけではなく、一緒にテレビを観ることこそ「家族の証」だと彼は思っていたのだ。

結婚生活は1年ももたなかった。彼女は家を出て自分でアパートを借りて新生活を始めたが、彼は「こんなに早く離婚するのはみっともない」と言い続け、離婚が成立したのは結婚して2年が経過したころだった。

 

夫に説得され、ようやくいい関係に

「大好きな夫と一緒にいたい。その何がいけないのかと悩んだ日々がありました」

そう言うのは、ハルコさん(43歳)だ。同い年の夫との間に12歳になる一人娘がいる。

「夫は結婚したときから、『今から1時間ひとりにさせて』と言う人でした。そのたびに私は、私のことが嫌いになったのか、うっとうしいのかと悩んでいました。子どもが生まれてからも、彼は隙間を狙って『30分、ひとりで外へ行ってくる』と。その代わり、私にもひとりでどこかへ行ってくればと言う。でも私は家族を置いて、ひとりになることはできなかった」

あるとき、彼女は思いきって夫にその話をした。すると夫は「きみがそんなに悲しい思いをしているとは気づかなかった」と平謝り。自分にとって、ひとりでいる時間の重要性をじっくりと説明した。

「ひとりでなければ考えられないこともあるし、できないこともある。きみもひとりでいる時間を充実させたほうがいいよって。私は家族でいるのが好きだし、夫といるのが好きなのにと裏切られたような気持ちになりました」

ところがその後、友人に誘われて結婚してから初めて芝居の舞台を観に行くことに。夫に子どもを預けて芝居へ行き、帰りに友人と食事をしていると、友人が急遽、帰らなければならないことになった。

「ひとりで食事を続けるのは嫌だったんですが、そこは友人の知り合いの店。『注文しちゃったし、食べられるだけ食べていってよ』と懇願されて、生まれて初めてひとりで外食することになって。でも、意外と人目が気にならなかったんです。芝居のパンフレットを見て思い出しながら食事をする時間が、けっこう楽しかった。そこでそうか、ひとりの時間が充実していると夫が言うのはこういうことか、と」

帰宅して夫にその話をすると、夫もうれしそうだった。それ以来、家族でいる時間と同様、ひとりの時間も大切にするようになったとハルコさんは言う。

「今ではむしろ、夫が娘と一緒にいたがって、私はひとりでいるのを好んでいるかもしれませんね。家族と過ごす時間は最優先ですが、同時にひとりでいる時間を大切にするようになって、夫とかえっていい関係になりました」

ひとりの時間を過ごすのは家族から逃げるためではない。自分自身を充実させる「ひとり時間」が必要不可欠な人がいるのだ。夫婦でその価値観が違う場合、互いにどこまで理解できるか、妥協できるか話し合ってみるしかない。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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