JR新庄駅(山形県新庄市)
新幹線の駅というと、高架上にある駅が多く、乗降や在来線との乗り換えに手間取ることも多い。エレベータの設置は必須となったとはいえ、乗降に時間がかかったり構内が分かりにくい難点がある駅も少なからずある。こうした中、新幹線が発着する駅の中で、究極のバリアフリーな駅として知る人ぞ知る駅が山形新幹線の終点・新庄駅である。JR新庄駅(山形県新庄市)は、元々は奥羽本線の中間駅で、陸羽東線、陸羽西線が分岐する要衝の駅だった。1999年に山形新幹線の山形駅~新庄駅の延伸開業とともに現在の駅ができあがった。 山形新幹線は新幹線とはいうものの在来線の線路幅を1435mmの標準軌に拡幅して新幹線車両が直通できるようにしたもので、厳密には在来線である。したがって、踏切や単線区間があり、高架ではなく地平を走る区間がほとんどだ。山形新幹線の新庄駅ホームも地平にある。しかし、在来線とは線路幅が異なり、直通はできないので、元々はつながっていた山形方面から秋田方面へ続く線路を分断せざるをえなくなった。
その分断された部分を通路とし、改札口からみて一番奥にある陸羽東線のホームをつなぐことにより、「干」の字の形のホームができあがった。改札口から見て、右手の1、2番線が山形新幹線および同じ標準軌の線路を走る山形、米沢方面へ向かう普通列車専用の乗り場、左手の3番線が陸羽西線乗り場、4番線が奥羽本線の横手、大曲、秋田方面乗り場、正面奥に位置する5番線が陸羽東線乗り場となっている。
すべての番線相互の乗り換え、改札口からの行き来は同一平面上で行われ、段差は一切ない。これだけの路線の乗り換えがありながら、すべて段差なしにスムーズに行えるとはよく考えられた設計だと感心する。究極のバリアフリーの駅といわれるゆえんだ。
新幹線と在来線が同一平面上で乗り換えできる駅~新函館北斗駅、新潟駅
新幹線と在来線が同一平面上で乗り換え可能な駅として、かつて九州新幹線が全通する前の新八代駅が有名だった。同じホームの片側に新幹線が、反対側には在来線特急が発着し、ホームを数メートル歩くだけで乗り換えができたのである。これは、2011年3月の博多~新八代開通にともなって終了となった。 現在、新幹線と在来線が同一平面上で乗り換え可能なのは2駅ある。まずは、北海道新幹線の新函館北斗駅で東京方面へ向かう場合だ。函館駅発の「はこだてライナー」および札幌方面からの特急「北斗」を降りると、同じホーム上に新幹線乗り場への改札機があり、そこを通り抜けると目の前の11番線で新幹線「はやぶさ」が待っている。きわめてスムーズに乗り換えられる。
しかし、逆はそうはいかない。東京方面からの「はやぶさ」が到着する12番線は在来線ホームとつながっていない。そこで一旦、上の階にあるコンコースに向かわなければならない。しかし、将来は札幌駅まで延伸する計画なので、多くの乗客が一斉に下車することはなくなる。よって、必要最低限のエレベータやエスカレータしか設置されておらず、大変混雑する。
やむなく階段を上ることになるのだが、当然バリアフリーではない。乗り換えを急ぐ場合ストレスになる。したがって、東京や本州へ向かう場合にのみバリアフリー設備が充実していると限定付きなのだ。
新潟駅に関しては、11番線に到着した上越新幹線の降りたホームの反対側にあたる5番線で特急「いなほ」が待っている。したがって、改札機を通り抜ければ、スムーズに乗り換え可能だ。他の列車や路線に関しては、まだ駅の全面高架化工事が完了していないため、しばらくは戸惑うことがあるかもしれない。
行き止まりで櫛形ホームの終着駅は原則バリアフリー ~JR高松駅、JR函館駅など
行き止まりで櫛形ホーム(頭端式)の終着駅は、線路が行き止まりになる先ですべてのホームがつながっているので原則平面移動が可能だ。ヨーロッパの大都会にあるターミナル駅の多くは行き止まり式で櫛形ホームがずらりと並び壮観だ。 わが国では、この手の駅は決して多いとはいえない。JR四国の高松駅の場合、瀬戸大橋線、予讃線と高徳線との相互の乗り換えもスムーズに乗り換えできる。ただし、長い編成の列車の場合、ホームを回り込むためかなり歩かなければならないこともあろう。JRでは函館駅、門司港駅など、関西の私鉄のターミナル駅にはいくつも例がある。左側通行にはこだわらない停車駅
日本の鉄道は言うまでもなく左側通行である。したがって、原則通りの運行方法を墨守すれば駅や列車の行き先によっては、駅舎とは遠いホームに発着になる場合もある。そうした場合、発着ホームと駅舎内の改札口の距離が遠く離れているのみならず、階段を上り下りすることにもなる。そこで地方の列車本数の少ない駅の場合、特急などの優等列車を敢えて右側通行になる駅舎側のホームに横付けしてバリアフリーにしている場合がある。こうすれば、エレベータやエスカレータの設置費用が節約でき、乗降客の利便性も向上し、一石二鳥となる。もちろん信号設備などの改良は必要である。
たとえば、JR外房線の大原駅では、下り特急「わかしお」は、本来は上り線が発着する駅舎側のホームに停車し、いすみ鉄道への乗り換えが平面上で行えるように便宜を図っている。
JR北海道の南千歳駅(北海道千歳市)では千歳線、石勝線と新千歳空港駅へ向かう支線との乗換駅で、2面4線の外側が千歳線と石勝線、内側の2線が新千歳空港が起終点となる快速エアポートが発着するホームだ。
この駅では、快速エアポートを敢えて右側通行にして、空港と札幌とは反対に位置する苫小牧、室蘭や帯広、釧路方面との乗り換えの便を図っていた。しかし、快速エアポートが増発されると、発着がスムーズに行えなくなるとの理由で、2020年3月14日からは、原則左側通行になってしまい、乗り換えには跨線橋を渡ることが必要となった。バリアフリーの観点からは残念な変更である。
停車中の電車を通路として利用! 阪神電鉄の尼崎駅
阪神本線の尼崎駅は、本線の他、阪神なんば線が発着、さらには特急、急行と各駅停車の乗換駅にもなっている。したがって、ホーム4面6線という複雑な構内配線である。例えば、大阪梅田駅から阪神本線の尼崎行き急行に乗る。尼崎駅からは阪神なんば線直通の高速神戸行き快速急行に乗り換えたいのだが、急行は6番線に到着、快速急行は4番線発車である。常識的に考えると6番線から4番線へは階段やエレベータなどを使っての乗り換えとなるはずだ。しかし、尼崎駅では間の5番線に普通列車高速神戸行きがすでに停車して両側のドアを開けている。乗り換え客は迷うことなく5番線に停車中の普通電車を通り抜け4番線の電車に乗り換えるのだ。
別に特例でも何でもなく尼崎駅では普通に行われていることで、「中通し」といわれている。甲子園駅での野球観戦の混雑時に階段使用を避けるために行われたのがルーツだそうで、阪神電車名物とのこと。慣れない乗客のために「停車中の電車を通り抜けてお乗りかえください」と車内放送する車掌もいる。電車通り抜けとは実利を重んじる関西ならではのやり方で、究極のバリアフリー設備であろう。
バリアフリーという観点では、わが国の駅はまだまだ不十分な点が多い。その中でも特に目に付いた駅をいくつか挙げてみた。ご参考になれば幸いである。
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