「ぎょう虫検査」はいつまで行われていたのか
ぎょう虫検査が行われなくなったのはなぜ?
ぎょう虫検査の実施は2015年度まで。2016年3月末に廃止
以前は、文部科学省の学校保健安全法法施行規則により、学校での健康診断の項目に「ぎょう虫検査」(寄生虫卵検査)が含まれていました。この法律が2014年4月末に改正され、ぎょう虫検査は2015年度限りで廃止されることになりました。2016年3月まではぎょう虫検査が行われていたことになりますので、廃止されたのは比較的最近です。ご兄弟がいる家庭の場合、上の子はぎょう虫検査をしたが、下の子には検査がなかった、ということもあるかもしれません。
ぎょう虫検査の目的・ぎょう虫がいた場合の症状
ぎょう虫は人の腸に寄生する寄生虫です。口から入った虫卵が入ると、小腸で幼虫になり、大腸に移動して2~6週間で成虫になります。雌の成虫は直腸に移動し、夜間に肛門から出て虫卵を産みつけます。成虫は肛門周辺の皮膚に粘着性のゼラチン状の物質を付着させ、その中に虫卵を産みつけます。肛門の周りに産みつけられる卵の数は約100万個です。わずか7~8時間で感染力を持つようになり、人から人へ感染していきます。卵は下着やふとん、床などにも散らばるため家族内や集団の場で感染しやすくなります。虫卵は体外では常温で3週間以上生存することができます。症状はぎょう虫がいると肛門のかゆみも起こるので、肛門を触った手から口に感染してしまいます。また、肛門のかゆみから不眠に陥ってしまうこともあります。衛生面や不眠などで子供の成長への影響が懸念されたことも、一斉検査が始められた一因になりました。
学校などの集団生活の中でぎょう虫を持つ子が増えると、家族内にも感染が拡大してしまうため、昭和33年から小学校3年生以下で一斉に検査し、一斉に駆除する方法が行われてきました。
ぎょう虫検査はなぜなくなったのか? 廃止の理由は「寄生虫感染率の激減」
化学肥料の使用や衛生環境の改善に伴い、過去10年の検出率は1%以下になるほど、子どもの寄生虫感染率は激減しました。文部科学省の学校保健統計調査によると、2015年度のぎょう虫の虫卵保有者の割合は、幼稚園で0.06%、小学校(6~8歳)で0.12%でした。2013~14年に開催された「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」で、医学的・疫学的に学校で寄生虫卵の検査をする意義は乏しいとの見解が示されたことを受け、ぎょう虫検査は学校での健康診断の項目からなくなりました。