ケース1. 仲良し“過ぎる”一卵性母娘
パートナーが「親子仲良し」「親孝行」と聞けば歓迎すべきことと思いがちですが、度を越した親密さは考えものです。特に一卵性母娘に近い仲良し“過ぎる”母娘は、結婚後の生活、夫の気持ちにいろいろな影響を及ぼすようです。琴乃さん(36歳・仮名)は某大学病院で内科医として多忙な日々を送っています。仕事と育児の両立が難しく、妊娠・出産を機に大学病院を辞める女性医師が多い中で、琴乃さんは産休と半年の育休で職場に復帰。ママさん医師として仕事を続けています。
「私が仕事を続けていられるのは100%母のおかげです。母はもともと医師になる夢を持っていたんですが、経済的な事情で断念。でも母の思いは私に託され、私は子どもの頃から『将来は医者になってね』と言われ続けてきました。プレッシャーでもありましたが、受験勉強中の、彼女の献身的な応援体制があってこそ、今の私があると感謝しています。夫なんて、残業ばかりでまったくあてにならないですもん」
琴乃さん母娘の二人三脚は今でも続いています。結婚後の住まいをわざわざ実家の近くにして、全面サポートをしてもらっています。
例えば、息子の毎日の保育園へのお迎えは母親の担当。夕方、保育園から連れてくると琴乃さんの家で夕食を作り、孫を入浴させたり、絵本の読み聞かせをしたり、琴乃さんが帰宅するまで母親は自分の家には帰りません。父親は一人で自由気ままにしていると。車で5分ほどの距離です。
毎日遅くまで義理の母が自宅にいる環境を、パートナーは不満に感じてはいないか?と琴乃さんに聞くと、
「うっとうしいかもしれませんが口には出しません。何か言えば『文句言うなら、母の代わりに私のサポートをしてくれるの?』って言われることがわかっているからでしょうね。結婚の時に私が仕事を続けることが条件でしたから、私が働ける環境を自分が作れないなら、母を受け入れるのは当たり前です」
夫婦の在り方は十人十色。どれが正解という決まりはなく、当事者が納得していればどんな形でもいいはずです。しかし、琴乃さんから最後まで夫に対する配慮や気遣いが感じられなかったことは、少し気になる点でした。
ケース2. 新婚旅行先で「俺はお抱え運転手か」と……
優華さん(28歳・仮名)の両親は彼女が中学生の時に離婚し、一人っ子だった彼女は、それ以来、母親と二人暮らし。母親と仲良しで何をするにも二人一緒というのが彼女のスタイル。優華さんの夫もその点は最初から想定内だったといいます。「彼女と付き合い始めた時から、そのことは気づいていました。親が離婚したのは寂しかったでしょうし。彼女と母親が唯一無二の関係であることは仕方ないですし、彼女と生きていくということは彼女の母親も背負っていかざるを得ないだろうと覚悟していました。でもちょっと、想像を超えていましたね」
と笑いました。一番驚いたのは新婚旅行のハワイで彼女の母親とホテルの朝食会場で会ったことだそうです。
「もちろん偶然ではなく意図しての同宿ですが、旅行中は別行動と決めていました。でも、そういうわけにはいかなかった。初日から合流してきました。部屋は別だったものの、朝食から就寝までは常に3人で行動。僕が運転するレンタカーの後部座席で母娘が楽しく会話しているとか当たり前で、俺はお抱え運転手かと……。もはや怒りを通り越して開き直りの境地。しらけたハネムーンでしたよ」
日本に戻ってからも、仲良し具合は度を越しています。アポなしで訪ねてきて、気が付くと一緒に夕飯を食べていることは茶飯事です。
「基本的にはいい人で、僕のことも息子のようにかわいがってくれるのですが、なし崩しに同居になっちゃうのかなというのがちょっと心配です。僕も一人っ子なんで、将来は親の世話もあると思うんで。ま、将来はいっそのこと、両方の実家と僕らの3家で同じマンションで暮らすかなと。家どうしで喧嘩になったらいやですけど」
「いやいや、それは息が詰まるでしょう。お互いに監視されたり、習慣が合わないことをきっかけに不穏な空気が漂うのではないですか」と私は感想を述べました。
一人っ子同士の結婚+母子密着はトラブルの種をはらんでいます。今回のパターンに限っては、優華さんのパートナーのおおらかな性格が幸いしたようです。
少子化で一人っ子が増え、また離婚件数も少なくない現状で「ママが一人で寂しそう」と思う女性が夫より母親を頼るようになるのはしかたないことです。
子どもの世話を手伝ってくれるのは助かりますが、確実に介護の時期がやってきます。男性の方々は「今は助かってるからしょうがない」と目をつむらず、妻と母親との距離感を話し合ってください。母子密着問題は今後一層注目を集めるようになることでしょう。
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