見直されている肌色の表記
2021年3月、コンビニエンスストアのファミリーマートは、プライベートブランドの女性用下着から、「はだいろ」を記した商品を回収したことがニュースとなりました。この件に限らず、商品の色名に、「肌色」という表記を差し控える企業が増えています。今回は、オールアバウトが実施したアンケート調査をもとに、科学と歴史の観点から、肌色を掘り下げてみましょう。
肌色の調査結果
今回は以下の3つの設問について調査しました。・次のうち、どれが「肌色」だと思いますか?
・「肌色」という表記がなくなったことを知っていますか?
・「うすだいだい」という表記はわかりやすいですか?
調査結果はこちらです。
「肌色」だと思う色は、②が50.4%、①が45.8%という結果になりました。
「肌色」という表記がなくなったことを、58.6%がご存知ですが、24歳以下は29.0%にとどまっています。
「うすだいだい」などの表記については、68.6%が「わかりづらい」と回答しており、「肌色」という表記については、16.8%が差別意識を「感じる」、17.2%が「わからない」と回答しています。
肌色の表記をめぐって
文房具メーカー各社は、2000年前後に「肌色」の表記を「うすだいだい」や「ペールオレンジ」に変更しました。こうした判断の背景には、サプライチェーンがグローバル化していることがあげられます。日本の企業とはいえ、顧客、従業員、株主、取引先などには、さまざまな肌の色の人がいらっしゃいます。国際的な感覚を尊重し、表記を改めたわけです。その一方で、「うすだいだい」「ペールオレンジ」は、わかりづらいと感じる人が多いようです。これらの色名は、系統色名と呼ばれます。形容詞(薄い、pale)と基本色名(だいだい、orange)の組み合わせなので、明るい青、濃い緑などと、形式的には同じです。しかし、「肌色」「瑠璃色」「オリーブ」などの慣用色名と比べると、親しみやすさや情緒に欠けるところがあります。
肌色をめぐる科学と文化
日本人の肌に近いのは3、4、5ですが、JIS規格「物体色の色名」に登録された「肌色」は1です。人間の脳は実際の色よりも明るく鮮やかな色を記憶するため、日本画、人形、アニメのキャラクターなどには、1のような色が使われています。ただ、「肌色」という色名が使われるようになったのは、明治以降といわれます。それ以前は、「穴色(ししいろ)」「肉色(にくいろ)」「人色(ひといろ)」などが用いられていました。
2は白人の肌をイメージした色で、肉を意味する「Flesh(フレッシュ)」という色名が使われていましたが、米国などでは、1960年代頃から「Peach(ピーチ)」という表記に改められています。
本アンケートの「この色に自由に名前をつけるとしたらどのような名前にしますか」という質問には、「きなこ色」「春霞」「和肌色」など、さまざまな回答をお寄せいただきました。
近い将来、「肌色」にとってかわる新しい色名が登場し、広く使われるようになるかもしれませんね。