量より質! ほとんどの人が見落としている勉強の「学習効率」
勉強時間は同じなのに成績が上がらない子と成果を出す子の違いって?
仮に、成績が「学習効果×勉強時間」で決まるとしましょう。勉強時間が長い方が良い成績につながりそうです。しかし、学習効果がゼロに近いものであったらどうでしょうか。これでは、ほとんど成績に結びつきません。このように“質”を意識せず量だけで必死に頑張ろうとする勉強法は多くの人が陥りがちです。
逆に、非常に学習効果が高い勉強をしたらどうでしょうか。その場合、勉強時間が少なくても、良い成績に結びつく可能性が高いと考えられます。
そう、勉強において最も大切なことは、勉強した時間とその成果との関係、つまり「学習効率」というコストパフォーマンスなのです。
一気にまとめて集中型とコツコツ分散型では“記憶の定着”が全然違う
記憶には、長い期間をかけて学んだものほど忘れにくいという性質があります。例えば、テスト前に数学を8時間勉強するとします。
次のように、
- パターンA:テストの前日に8時間まとめて勉強する
- パターンB:8時間をテスト前1週間(7日間)に分けて勉強する
多くの人が、テストの前日になってなるべくたくさんの勉強をしようとします。これがパターンAの勉強法です。この方法だと、確かに翌日のテストはまずまずの成績が取れるでしょう。しかし、実はそこがワナなのです。
学習科学の研究によると、1週間などある程度の期間を空けて再度テストする「遅延テスト」を行うと、パターンBの方が良い成績を残すということが分かっています。一方パターンAは、テストが終わって1週間も過ぎると、多くのことを忘れてしまうという現象が起こります。
つまり、パターンAのようにテスト前にまとめて一気に勉強すると、後々のテストでは多くを忘れてしまい、その都度復習しなければいけないという無駄が発生してしまうのです。
「分散効果」により学習効率が上がるのには科学的根拠がある
例えば、同じ8時間の勉強でも、間隔を空けて2時間ずつ4日間にわけて勉強することにより学習定着率が上がります。いわゆるコツコツ型勉強法ですが、学習科学ではこれを「分散効果」と呼んでいます。この効果により成績が良くなる理由は諸説ありますが、もっともなのは「精緻化(せいちか)」と呼ばれる現象が起こるためです。精緻化というと少し難しいので、具体的に数学で考えてみましょう。
ある程度、間隔を空けて勉強すると、
「補助線ってどこに引けば良かったんだっけ?」
「おうぎ形の面積の公式って何だったっけ?」
など、“適度に忘れる”ということが起こります。間隔は空けすぎてもいけませんが、適度に設けることにより、問題を解くのに必要なことを思い出したり深く考えたりするようになるのがポイントです。
そこで、パターンBをイメージした次のようなスケジュールで勉強することをおすすめします。
<成績が上がる勉強のスケジュール例>
- 1日目:数学を2時間勉強する
- 2日目:数学を勉強しない
- 3日目:数学を2時間勉強する
- 4日目:数学を勉強しない
- 5日目:数学を2時間勉強する
- 6日目:数学を勉強しない
- 7日目:数学を2時間勉強する
- テスト日
一気にまとめて集中型の勉強法は長い目で見ると損
長時間同じパターンの問題を解き続けると、「この問題はこの公式を使って解く」ということがルーチンワーク化されてしまいます。順番通り解いているから同じ公式を使うということが分かるだけで、この問題を解くのに必要な公式は何かを考える、また思い出すことをやめてしまうのです。極端な例になると、何度も何度も同じ問題をくり返し解いているうちに、答えの数字を覚えてしまうことになります。テスト前にまとめて勉強すると、同じことのくり返しの中で脳が「分かった」と判断して、深く考えることを止めてしまうのです。
一気にまとめて長時間勉強する方法がそれほど成果を生まない理由は、適度に忘れるために必要な間隔を取れないためです。これでは、逆に後で復習に多くの時間を費やさねばならず、かえってたくさんの勉強時間を確保しなければならないという悪循環に陥ってしまうのです。
たくさん勉強しているのに成績が伸びない人は、まさにこのワナにはまっているのです。「まとめて一気に勉強する」よりも、少しずつわけて「コツコツ勉強する」方が真に効果的なので、ぜひ実践してみましょう。
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