50代からの夫婦関係、ポイントは「人生の中心」が何か?
子育てが一段落した50代夫婦。かつては、定年、リタイヤ後の人生をそろそろ考え出す年代でしたが、今は人生100年時代。50代はまだまだ人生の前半を折り返したばかりとも考えられます。人生の後半戦の数十年、子供ではなく、人生の中心に来るのが何かによって夫婦の方向性は2方向に大きく分かれます。
夫はルームメイト。自分の時間を大切にしたい
子供が育った後、人生の中心は「自分の時間」と考えているのは朋美さん(56歳・仮名)。
結婚後も一人息子を育てながら、ずっとキャリアを重ねてきた朋美さん。55歳で役職定年を迎え、本社の部長職から関連会社に転籍。働き方も生活スタイルもちょっと変化しました。
「本社にいたころはカスタマーサービスを担当する部署だったので、忙しい職場でした。夫も残業の多い職場だったのであまり頼りにできず、息子を保育園から連れて帰ってきて、食事とお風呂を済ませて寝かせて、帰ってきた夫と入れ違いにまた会社に戻って仕事をしたときもありました。でも、そうでもしないと、男性と同じような昇進もできなかったと思います」
保育園の送り迎えが大変だった一人息子も今は地方の大学で一人暮らし。今の朋美さんの生活の中心は「夫婦」ではなく「自分」です。
「夫との仲が悪いわけではありません。今の夫との関係は同じ家をシェアする『ルームメイト』って感じですね。昔から『自分のことは自分でやる』という人なので、こちらもそのように接しています。お互いに相手に頼らず、かといって迷惑もかけず、マイペースで生活をしています。食事は食べたいものを自分の分だけ作る。冷蔵庫に残りがあって『ご自由にどうぞ』と付箋が貼ってあったら、相手の作った物を食べてもいいというルールです」
ちなみにパートナーとはセックスレス歴18年。
「人肌が恋しくなることはないですか?」と質問をすると「性欲は感じませんが、誰かの手が触れてほしいと思う時はあります。そんな時は長年通っているマッサージに行きます。別にHなマッサージじゃないですけど、人の手で体に触れてもらうだけで、十分癒されます。あとは5年前から始めたランニングが、今一番ハマってます。走っている時が一番楽しいですね」
あくまでもパートナーと対等で、最低限のつながりでお互いのライフスタイルを持ち続ける。夫婦二人がお互いに相手に依存しないからこそできる生き方なのかもしれません。
夫の世話の先回りはおしまいに……自分を中心にしたい
夫婦の関係が対等ではないけれど「自分の時間が人生の中心です」というのは美知子さん(53歳・仮名)。パートナーは中小IT企業の2代目社長。起業した義父は典型的な昭和の亭主関白で、家のことは何一つせず、妻が靴下まではかせてあげるような生活スタイル。それを見て育った美知子さんの夫も「絶対に外に働きにいかず、俺の世話だけをしてほしい」ということで、美知子さんは専業主婦一筋で30年を過ごしてきました。
「彼の収入がそれなりにあったので、私が外で仕事をせずに済んだことはありがたいと思っています。でも、『夫の身の回りの世話』も立派な“仕事”です。たとえば、日曜日、夫がゴルフに行くなら天候や気温に合わせて服や道具の準備をするのは私。当日、夫を起こし、朝食を出し、服の着替えを手伝うのも私。社用車で迎えに来た夫の部下に謝礼を渡すのも私。『夫がゴルフに行く』というだけで、こんなにいろいろ仕事があるんです。でも夫は二言目には『お前は働かずにすんでいいな』と言い、私に対する感謝もありませんでした」
そんな美知子さんも結婚30年を迎え、少しずつ気持ちに変化がみられるそうです。
「先回りして、いろいろしてあげることをやめました。やってあげたことが夫の気まぐれで無駄になることも多く、以前はそれに腹を立てたり、がっかりしたりしていました。でも、そもそも何もしなければ、残念な思いもしなくて済むと気が付きました。だから夕飯も、夫が帰ってくるまで何もせず、帰宅したら食べたいものを聞いて、作れるものなら作りますが、作れないものはデリバリーをオーダー。極力自分の手間を省くようにしています。とにかく言われたことだけを、最低限の労力で行います。また、私の夫への献身を感謝してもらいたいと思うこともやめました。期待してもがっかりするだけ。だから夫のために使う時間をできるだけ減らして、そこに注ぐエネルギーを減らす。最低限のことしかしなければ、感謝されなくても不満はありません。その分、自分の好きなことに時間を使うようにしています」
パートナーとの関係性が、「割り切った関係」に向かうのも50代の特徴。パートナーを表向きには排除しないまま、上手に自分を自分の人生の中心に置くテクニックは、参考になる方も多いかもしれません。
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