先行きが不透明な時代に必要なチカラ
――コロナの影響により、収入ダウンが家計を直撃し、やりくりに頭を悩ませている人も少なくありません。先行き不透明な時代に家計を守るには、何から取り組むべきでしょうか?
畠中雅子さん:コロナ禍の今、収入を増やすのは容易ではありませんし、給料やボーナスなどは、自分でどうにかできるものではありません。結局は会社頼みになってしまいますよね。まずは、自分がコントロールできる部分、つまり、家計の支出管理を見直すことから始めましょう。
その際に一番大切なのは、「自分、あるいは自分たちが毎月いくらあれば暮らせるのか」をきちんと把握することです。そのためには、最低3カ月分くらいの支出データから、各費目の平均値を割り出すことが大事。1カ月だと予定外の出費や季節ごとによる光熱費など、金額にばらつきがでてしまうので、もう少し長期で見ていくこと。
まずは、家計管理の能力を見つめ直してみることです。“毎月いくらあれば暮らせるのか”を知ることは、今後の人生設計を考えるうえでも、さまざまな人生の作戦を立てるうえでも非常に役立ちます。転職を考える時のひとつの基準にもなりますし、貯蓄計画も立てやすくなりますよ。
――コロナ禍で家計の中身も変わってきています。
畠中さん:食費は減らしやすい項目なので、節約のターゲットになりがちですが、問題はその中身です。食費を節約するとなると、どうしてもご飯やパン、パスタ、麺類などが続きがちですが、そうなると糖質が増えて糖尿病のリスクが上がるなど、健康を害する可能性も。食費の節約はやりすぎに注意しながら、自分の家計にとって減らしやすい項目を見つけて取り組みましょう。
また、今あるお金を減らさずに家計を防衛するためには、制度をうまく活用してその恩恵を受けることです。特に今は制度がいろいろと変わってきているので、知っているのと知らないのでは大きな差が出てきます。
――例えばどういったものがありますか?
畠中さん:特に政府が力を入れている少子化対策に関する制度はいろいろと拡充されています。例えば、これから子どもを持ちたいと考えている人たちにとって朗報といえるのが、2021年1月から特定不妊治療の助成が拡充されたこと。
これまでの特定不妊治療では、助成回数は生涯で6回、1回目のみ30万円で2回目以降は15万円だったのが、子どもひとりにつき最大6回、毎回30万円の助成金が出るようになりました。所得制限もなくなったので、これから不妊治療に取り組むカップルにとっては大きなニュースだと思います。さらに、婚姻していない事実婚のカップルも対象になりました。
――子どもを持ちたい夫婦やカップルにとっては心強いですね。
畠中さん:さらに、子育て世帯にとって大きなトピックといえるのが、2020年4月から年収約590万円未満の世帯を対象に、全国で私立高校授業料が実質無償化されました。すでに東京都では、私立高校授業料が実質無償化(東京都の場合は年収910万円未満の世帯)されていましたが、それが全国一律に。お子さんを持つ家庭にとって、高校選びの選択肢がグンと広がったのではないでしょうか。
同じく、2020年4月から始まった高等教育の修学支援新制度でも、年収380万円程度未満の世帯を対象に、授業料の減免や返済不要の給付型奨学金の支給が実施されています。少子化に関する制度はここ数年間でかなり拡充されているので、子育て世代にとっては、随分恵まれた環境になってきています。こうしたことを知っておくことで、ライフプランや貯蓄計画も違ってきますよね。
少子化対策だけでなく、コロナ対策でいろいろと支援制度が追加されたり、これまでの制度が拡充されています。自分に該当するものがないか、自治体のホームページなどで調べてみましょう。
ウィズコロナの時代には、マネーリテラシー以上に“情報リテラシーを高めること”が、自分の身を守るカギになります。
★第2回『FP畠中雅子さんが指南! ウィズコロナ時代・家計を守るために大事なチカラとは?』に続きます
教えてくれたのは……
畠中雅子さん
教育資金アドバイスを行う「子どもにかけるお金を考える会」、高齢者施設への住み替え資金アドバイスを行う「高齢期のお金を考える会」、ひきこもりのお子さんの親亡き後の生活設計を考える「働けない子どものお金を考える会」を主宰している。著書・監修書は、「ラクに楽しくお金を貯めている私の『貯金簿』」(ぱる出版)ほか、70冊を超える。
取材・文/西尾英子
【参考】
高等教育の修学支援新制度(文部科学省)
私立高校授業料実質無償化(文部科学省)
不妊に悩む方への特定治療支援事業(厚生労働省)