「胸腺萎縮」とは……虐待を受けた子どもに見られる胸腺の異常

胸腺とは・役割

胸腺は、免疫細胞を育てる大切な役割を持つ臓器ですが、ストレスや栄養状態により縮んでしまうことがあります

子どもの虐待事件などで報じられることがある「胸腺萎縮」。そもそも小児の胸腺萎縮は解剖して初めて判明することがほとんどで、虐待などが疑われて司法解剖が行われた際に、認められるものです。通常、胸腺萎縮は加齢とともに進んでいきますが、強いストレスがかかり続けると、年齢よりも萎縮してしまうことがあります。法医学においては、子どもの胸腺萎縮は虐待を受けていたことによる栄養状態やストレスが疑われると考えられます。
 

胸腺とは何か……胸腺の役割と胸腺がある場所

胸腺は胸骨裏面の胸部にある臓器で、免疫に関わる働きがあります。少し専門的になりますが、抗体などを産生するBリンパ球に対する司令を行ったり、病原体に対して攻撃するTリンパ球が成熟したりする場所です。思春期頃に最もリンパ球が最も多く含まれていて、その後は年齢とともに小さくなっていき、脂肪に置き換わっていきます。ピーク時の胸腺の重さは30~40gです。胸腺ではT細胞の成熟において、自分の細胞と自分とは違う細胞の教育も行われており、免疫にとって重要な組織です。
 

胸腺萎縮・胸腺が縮む原因……加齢・さまざまなストレス

胸腺が加齢によって萎縮していくのは先に述べた通りですが、最終的には脂肪組織になり、胸腺の機能はなくなっていきます。性ホルモンの増加が起きる思春期頃から萎縮していきます。さらに精神的、物理的化学的、様々な要因のストレス状態によっても萎縮します。これもストレスによるホルモンの影響を受けるためであると考えられています。急性のストレスによる萎縮の場合は、その原因が除かれると自然に回復すると言われていますが、強いストレスであったり、慢性的なストレスの場合は、回復が難しいことがあります。年齢とともに脂肪組織に変わっていくため、大人になってからの胸腺萎縮を避けることはなかなか難しいと言えます。
 

胸腺萎縮で起こる症状……免疫低下などの影響

胸腺萎縮により、すぐに何らかの症状が出てくるわけではありません。しかし胸腺の機能が低下することによって、免疫が低下し、自己を攻撃する疾患が増えてくると考えられています。
 

胸腺萎縮の検査法・対処法・治療法

胸腺萎縮は冒頭に述べた通り解剖により初めて発見されることが多いですが、画像診断でも確認することができます。超音波検査、CT、MRIによって胸腺の状態を見ることができます。

胸腺萎縮は一度起こってしまうと回復させることが困難です。加齢による胸腺萎縮の場合は、性ホルモンの除去や成長ホルモン、サイトカイン、ケラチン成長因子等の投与によって、一時的に胸腺の機能を回復することができると言われています。とはいえ、継続的に行える方法ではなく、胸腺を維持するのは難しいと言えます。胸腺の機能低下を少しでも減らすには、ストレスを減らすことが大事となってきます。
 

胸腺萎縮は治療困難……根本的な原因となる虐待問題などの解決が大切

虐待を受けた結果として子どもの胸腺が萎縮してしまった場合、一度萎縮した胸腺を元に戻すことは困難です。胸腺萎縮が判明してからの回復や治療が難しいことを考えると、やはり虐待という問題自体を減らすことが重要です。子どもの人格を一人の人間として正しく尊重できるよう、大人が怒りをコントロールできなくてはなりません。

子どもの行動に対して「しつけ」をする場合も、怒るのではなく、叱ることです。「怒る」は、自分の感情を相手にぶつけているだけです。「叱る」は、相手が正しく行動できるように諭し教えることです。相手の立場になれるかどうかですので、その意味でも子どもを一人の人格として、子どもの立場で考えられるかはとても大切です。もし子どもに対しても感情のコントロールが苦手といった自覚がある方は、「怒りをコントロールする方法」などもあわせてご覧いただき、適切に子どもに接することができるよう心掛けてください。
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