子育て

日本人男性の家事・育児時間は1日たったの41分! 育休取得率、家事・育児の意識変化は?

2021年3月10日時点のOECDのオープンデータをもとに、男女1日あたりの有償労働、無償労働時間の比較を軸として、育児休業取得率や家事参画への意識を可視化してみました。男性、女性の家事・育児参画の現状とこれからについて紹介します。

長島 ともこ

執筆者:長島 ともこ

子育て・PTA情報ガイド

はじめに

子供が通う園への送迎、家族のごはんづくりなど、男性(パパ)の育児・家事参加が進みつつある日本。働き方や生き方が多様化する中、それぞれの家庭はこれからどのように家事や育児のスタイルを作っていけばよいのでしょうか。夫婦の家事・育児時間の現状や育児休業取得率、家事・育児に対する価値観の変化について調べ、子供のいる暮らしをより豊かにするコツをまとめました。

 

(1)日本の男性の家事・育児時間はまだまだ少なかった!

まず注目したいのは、日本の男性の家事・育児参加について、現状を国際的に比較してみた結果です。
 
有償時間と無償時間_国際比較

表1:主要先進国の男女別・1日あたりの無償労働時間と有償労働時間


OECD(経済協力開発機構)加盟国34カ国の中で、2021年3月10日時点の日本を含む主要先進国の男女別・1日あたりの無償労働時間と有償労働時間のデータ(15~64歳)を可視化したデータが表1です。

ここでいう「無償労働時間」とは、家事、育児、介護、育児、買い物、ボランティア活動などの時間の合計、「有償労働時間」とは、仕事、通勤・通学、授業・学校での活動などの時間の合計をさします。

日本の女性の1日あたりの女性の無償労働時間は、224分。主要先進国の中で平均的な長さであるのに対し、男性の無償労働時間は41分と主要先進国中最下位

「イクメン(子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性)」という言葉が定着し、抱っこひもで子供を抱っこして園の送迎をするパパ、家族に料理をふるまうパパの姿を普通に見かける昨今ですが、日本の男性の家事・育児時間は、主要先進国と比較するとまだまだ少ないことがわかります。

また、日本の男性の有償労働時間は452時間で、主要先進国の中でダントツの一位。女性の有償労働時間は272時間で、1位のスウェーデンに次いで2位の長さです。

以上をふまえると、日本は諸外国と比較すると、
男性も女性も有償労働時間が長く、特に男性の有償労働時間は、際立って長い
家事・育児などの無償労働が、女性に偏っている傾向が極端に強い
という特徴があります。

共働き世帯数が1,200万を超え、今もなお増え続けています。仕事、家事・育児に奔走する妻を見て、夫として、家事・育児参画の必要性を感じている男性もいることでしょう。

しかし、世界一長い有償労働時間が、その意欲を低下させている面も否めません。その結果、「休日は寝てばかり」「夫は何もしてくれない」など、不満をくすぶらせている妻が少なくないのが現状です。

 

(2)男性の育休取得率の増加と家事・育児参画への意識の変化

もちろん、上述した内容はあくまで平均すると男性が家事・育児参加の時間が少ないというだけで、すべての男性が家事・育児に参加していないというわけではありません。実際に日本の男性が家事・育児に参加している傾向が如実に表れているデータも存在します。

それが、以下の厚生労働省が発表した女性と男性の育児休業取得率の推移(表2)です。
 
女性と男性の育児休業取得率の推移

表2:女性と男性の育児休業取得率の推移


育児休業取得率は、女性は8割台で推移していますが、男性は、低水準ではあるものの2007年頃から年々上昇傾向にあり、令和元年度には7.48%に。1%にも満たなかった20年前と比べると、大きな前進といえます。

さらには、NHKが2018年に行った第10回「日本人の意識」調査(16歳以上の国民5,400人対象)の結果によれば、「夫婦はお互いに助け合うべきものだから、夫が台所の手伝いや子どものおもりをするのは当然だ」という記述に対し、「賛成」と答えた国民の割合は、調査開始の1973年以来増加の一途をたどり、2018年には約9割の国民が「賛成」と答えています。

長時間労働が未だはびこり続ける状況ではありますが、「男性は仕事、女性は家庭」といったこれまでの日本の古い価値観は、確実に変わり始めていることがわかります。

 

(3)家事・育児シェアがうまくいっている夫婦の特徴3つ

これまでの内容をふまえ、家事・育児とポジティブに向き合い、良好なパートナーシップを築いている夫婦の特徴について、3つのポイントがあると考えています。

1. 家事・育児分担や子供の育て方について、夫婦で考えをシェアしている
子育て・家事の相談タイミングと育児期満足度の関係

表3:育児期満足度と配偶者とのコミュニケーションの関係


表3は、0~3歳の末子がいる20~40代の女性を対象に、「家事・育児分担」「子供の育て方」について配偶者と確認・相談したタイミングについての調査結果です。育児期満足度が高い女性は、「家事・育児分担」「子どもの育て方」など、出産後のプランについて夫と相談する割合が高いことがわかります。出産後はもちろん、妊娠から出産の間も夫婦で考えをシェアすることが、育児期の満足度を高め、良好なパートナーシップにつながるといえます。


2. 従業員の多様なライフスタイルを受け入れる風土が職場にある
育児休暇や時短勤務制度のみならず、従業員の多様なライフスタイルを受け入れる職場も少しずつ増えてきています。このような職場に勤めていると、「子どもの突然の発熱などのトラブル時も柔軟に対応できる」など育児を“負い目”に感じることなく働き続けることができ、良好な夫婦関係、家族関係をもたらすケースが多いようです。また、新型コロナウィルス感染症予防のためのテレワーク推奨が、男性の家事・育児参画のきっかけとなるケースも見受けられます。


3. 夫の父親が家事・育児に積極的に参画していた、あるいは全く参画していなかった
男性も女性も、自分の父親、母親の生き方が、自身の家事・育児のスタイルに影響を及ぼすことが多いでしょう。

これはあくまでも筆者の主観ですが、男性(夫)の父親が家事・育児に積極的に参画していると、その姿を見て育った男性は「家事・育児はやって当たり前」という価値観が根づきやすいような気がします。

逆に、家事・育児を全くせず、母親に苦労ばかりかけている父親の姿を見て育った男性は、「自分はこうなりたくない」と気持ちから、家事・育児をポジティブにとらえようする傾向が見受けられます。

ちなみに、筆者の夫(会社員)は前者のタイプ。夫は、休日は家族のごはんづくりや買い物、子供たちとスポーツ。平日の朝は洗濯をすませてから仕事に向かいます。夫婦で分担を決めたわけではありませんが、夫は小さい頃から、台所で料理をする父親の姿を見て育ち、父親と良く遊び「気づいたら自分もそうなっていた」とのこと。その言葉に妙に腹落ちしました。

 

(4)家事・育児シェアを夫婦で無理なく実現するためのアドバイス

男性の長時間労働の改善や育休制度のさらなる充実など、社会の仕組みが変わらないと、家事・育児参画への意識も変わらないのは確かです。しかし、その前にできることもあります。

まずは、夫婦でお互いの今の働き方、家事・育児との向き合い方を振り返り、子供の成長と共に、これからどのように働き、家事・育児とどのように向き合っていきたいのか、めざす家族像について話し合ってみましょう。

◼️パートナーに対し、家事・育児参画してほしいと思っている方へ
パートナーが“苦手でない”家事・育児を選んでもらい、関わってもらうことから始めましょう。

ただし、「掃除機でリビングの掃除を頼んだけど、すみっこにゴミがたまっている」「食器の片付けを頼んだけど、食器を置く位置が間違っている」など、こちらの期待に応えてくれないときに、ダメ出ししたり手出ししたりするのはNG。やる気が失せてしまいます。

関わってもらうからには全面的に任せ、「私がちゃんと伝えなかったのがいけないんだけど、このお皿はこっちの棚なんだ」など、必要に応じ、対等な目線で声をかけましょう。

「パートナーには家事も育児も期待できないから、自分でやったほうがラク」と思う人も少なくないようですが、状況の改善にはつながりません。トイレットペーパーの補充、シャンプー&リンスの補充など、すぐに取りかかれる“名もなき家事”の参画をすすめるのもいいでしょう。


◼️家事・育児に参画したいけれど実現できていない方へ
長時間労働が足かせになっている場合は、働き方の改善や新しい制度の提案などを職場にもちかける姿勢も大切なのではないのでしょうか。先行きの見えない時代だからこそ、当事者意識を持ち、少しでもアクションを起こしてみることが、何らかの変化につながる可能性もあります。

最近は、料理初心者の男性向けのオンライン講座、男性の家事応援講座などが、自治体やさまざまな団体主催で行われています。家事・育児参画したいけれどスキルに自信がない場合は、これらに参加し世界を広げるのもいいでしょう。

子どもが通う学校に「おやじの会」(父親を中心とした任意団体)がある場合、地域に「パパ会」(地域のパパによるコミュニティ)がある場合は、参加して“パパ友”を作ることで、周りのパパの家事・育児参画の様子がわかり、現状の改善につながるかもしれません。

核家族化や共働きの増加などにより、働き方や生き方が多様化する日本。家事・育児参画の現状を知った上で、それぞれの夫婦がそれぞれのパートナーとともに“わが家流”の家事や育児のスタイルを作っていくことが、幸せな家族の暮らしにつながっていくのではないでしょうか。




 
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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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