弁護士費用と住宅購入、私の収入で可能でしょうか? 

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、2年前にご主人が過労死をされた44歳の会社員女性。現在、過労死認定を受けるために弁護士に依頼しているが、同時に実家を出て、マンション購入も検討中。現在の収入を考えて、購入後の生活にリスクがないか不安を抱いているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)

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弁護士費用と住宅購入の費用を準備できますか

弁護士費用や予期せぬ出費があり、将来に不安が


■相談者
ドラさん(仮名)
女性/契約社員/44歳
東京都/実家
 
■家族構成
両親(70代)
 
■相談内容
2年前に旦那が過労死し、子どもはおりません。賃貸のマンションは引っ越し、現在は実家に戻り両親と住んでいます。両親との衝突もあり、引っ越しを検討していますが、過労死の認定がまだされず弁護士費用やゆくゆくは裁判も視野に入れ予期せぬ出費があり、将来に不安があります。加入していた保険は解約し、現在は無保険です。再度結婚する気はありませんが、独りになり通勤に不便な実家にもずっと住む気はなく、自分の住処のマンションを購入したいですが、正社員前提の契約社員で勤めて1カ月経過した程度で、住宅ローンが通る可能性が低いです。年を取ってから保険に入らなければという不安、どれくらいの保険料が適切なのか、仮に中古マンションを購入した場合に、私だけの収入でやっていけるのか等不安しかありません。
 
旦那が支払い加入していた保険は、手厚いサポート内容でしたが高額のため解約しました。私独りで手取り20万円前後の収入で、世帯主としてマンションを購入した場合のやりくり、老後においてどういった生活を送るべきなのか(保険の加入金額、内容、固定資産税や管理費、修繕費を含めた)適切なマンションの価格に悩みがあります。過労死が認められ会社からの保障があるのかないのかによっては生活に大きな違いがありますが、現在は予期せぬ出費しか予定になく、場合によっては何百万と言われても無念を晴らすためには、旦那が残した財産を使える限りは使って国と会社と戦いたいです。
 
今まで旦那がいた時は派遣で働いていましたが、現在の会社は定年60歳まで働くことは可能な環境です。3年以上働くと賞与も退職金も出ると聞いていますが、詳細な金額は不明なためアテにしていません(企業年金には現在加入。毎月5500円会社が積み立てている)。今までも弁護士費用、書類の取り寄せなど200万円以上の出費があります。生きていく目的が旦那の無念を晴らすこととなっていますが、こんな私はどんな生活が適切なのかアドバイスを頂きたいです。マンションの購入は、労基署からの回答が得られるであろう、2カ月後あたりを検討しています。
 
支出に関しては、ざっくりとしていて、未定な部分が多く予定より多い出費がある可能性があります。特殊な環境ではありますが、よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ
相談者「ドラ」さんの家計収支データ

相談者「ドラ」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)労災認定について現在の状況
相談者コメント「昨年、労災認定に向けて労基署へ書類提出をしましたが、認定されず。現在は、1つ上のステップの労働局へ提出中。ただし、簡単には認定されないため長いと10年かかる人もいると弁護士から言われました。また、労働局でもダメだと、国に対して訴えられる機会はもう1つステップがあり、これでもダメだと、民事での訴訟、対会社となります。想定される給付額につきましては、ケースバイケースのため、給付額は明確にはできません」
 
(2)裁判について
相談者コメント「裁判の可能性は、(1)労災認定されない場合、不服申立をして、最終的には裁判も辞さない、(2)労災認定された後、夫の元勤務先に対して損害賠償請求をし、その示談交渉が不成立であれば、裁判にて損害賠償請求を行う、の両方あります。国に対しては、労災という申請しかできないため現在進行中ですが不服の申し立ても、何度でもできる訳ではなく3回までと聞いています。この3回で、認定されるのか、されないのかが1つの結果となります。3回全て申請したが、結果が認定されなくても会社を訴える予定です。私個人は、泣き寝入りをする気持ちはありません」
 
(3)弁護士費用、裁判費用について
相談者コメント「一生懸命働いて、睡眠時間を割いて休日まで働いて、それを評価するどころか何事もなかったように片付けようとしている会社の体制に対して怒りを覚えておりますし、戦いたい、という強い気持ちです。なので、実際にいくらかかるのかわかりませんが1000万円かかっても戦えるのであれば戦いたいな、という希望です。お金がないから無念を晴らせないというなら、私は生きている価値がない、と思っています。なので、1000万円前後の住宅を購入しても、1000万円は使えるのかなと考えています」
 
(4)趣味娯楽費について
月3万円を計上しているが、実際は現在コロナの影響もあり、友人と会ったりする機会が減り、現在はそこまではかかっていない。また、コロナが落ち着いたら交際費は発生すると考えている。
 
(5)マンション購入について
希望は都内の某沿線の駅近で1LDKもしくは1DK程度の広さ30~40平方メートルを希望。とくに、利便性を重視している。
 
(6)ご実家と相続について
実家については長男に任せ、自分は関わりたくないと考えている。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 大事なのは自分の気持ちを最優先としたマネープラン
アドバイス2 物件価格は1500万円が上限の目安
アドバイス3 多方面から意見や助言を求めてもいい
 

アドバイス1 大事なのは自分の気持ちを最優先としたマネープラン

ご主人の過労死というとても辛い経験をされたこと。また現在、その無念を晴らすために、過労死の労災認定を得る努力を長くされていること。ご相談をいただき、多少でもお力になれればと思います。
 
ご相談内容を要約すれば、ご実家を出てマンションを購入する際、将来を見据えた無理のない資金計画をどう考えるか、となるかと思います。一般的なケースであれば、年齢や収入、家族構成(家族のライフイベント)、用意できる住宅資金で、ある程度割り出すことができます。しかし、ドラさんの場合は、とくに大事な要素である住宅資金が読めません。
 
その要因は、ドラさんも指摘されている、不確定な弁護士費用です。それは過労死認定の先行きがわからないからですが、同時にそれは、ドラさんの気持ち次第で大きく変わるものでもあります。ご本人が「1000万円かかっても戦えるのであれば戦いたい」と言われている以上、それを使い切る可能性もあるでしょう。
 
マネープランのセオリーから言えば、資金はバランスです。その意味で、住宅購入や老後が控えている今、弁護士費用に1000万円を費やすことは資産や収入から見て、バランスを欠いています。しかし、ご主人の無念を晴らすことができないなら、生きている価値がないと言われている以上、そのことを否定はしません。また今後、考えが変わるかもしれません。そうなれば、またそのときマネープランを変えればいいことです。今は、ドラさんの気持ちを尊重したいと思います。
 
したがって、現在の預金のうち、1000万円は弁護士(裁判)費用として手をつけないとします。その上で今後のキャッシュフローを試算してみましょう。
 

アドバイス2 物件価格は1500万円が上限の目安

住宅ローンの借入額は返済可能額から割り出します。仮に、借入金を1000万円、返済期間は現在45歳ですから15年とします。金利は変動の方が低いですが、金利上昇リスクを避けるために全期間固定、金利1.5%で設定すると、毎月の返済は約6万2000円。加えて、希望されているのはマンションですから、管理費や修繕積立金が毎月発生しますし、固定資産税もかかります。これら維持費を加算すると、毎月の住宅コストは月8万~9万円でしょうか。
 
購入可能な物件価格は、返済可能な借入額に用意できる頭金を加算します。手持ち資金2000万円に弁護士費用1000万円を差し引いて残り1000万円。このうち頭金に500万円なら物件価格は1500万円。実際は、購入時の諸費用(登記手数料等)がかかります。これを100万円とすれば、手元に残る資金は400万円となります。
 
これだけ見れば、もっと頭金を出したり、借入額が多くても問題ないとも思えます。しかし、老後資金も十分考慮しなくてはいけません。では、老後資金はどの程度準備できるのでしょうか。
 
そこで、購入後の収支を考えます。収入については、3年以上の勤務でボーナス、退職金が支給されるとのことですが、昇給も含め、ドラさんも言われているとおり、ここでの試算では考慮しないものとします。生活費は、ご実家への4万円がなくなり、新たに住宅コストと水道光熱費等が発生します。それと、保険ですが死亡保障は不要です。確保するなら医療保障ですが、それも必要最小限で構いません。医療共済など(保険料2000円程度)で十分と考えます。
 
ともあれ、トータルで6万円の生活費アップとすれば毎月は7万円の黒字。それを全額貯蓄に回せば、60歳までの16年間で1344万円、今の貯蓄に上積みできます。これに企業年金の積立分が元本だけで100万円ほどになりますから、それを合算して1450万円ほど。これに先ほどの400万円を加算した1850万円が老後資金となるわけです。
 
60歳以降も働かれるかどうかは不明ですが、ここでは65歳まで家計収支が赤字にならない程度の収入を得るとします。遺族厚生年金(実際は中高齢寡婦加算が上乗せされた額)はこの間も支給されますし、住宅ローンは完済していますので、他の生活費が今と変わらないなら、確保したいのは月7万円ほどの収入となります。実際にその収入を得ることができたなら、65歳の時点で、老後資金1850万円は手つかずのまま残ります。
 
老後資金は公的年金の不足額を補うものです。月割りで平均3万円の不足なら、30年間で1080万円。5万円不足なら1800万円。これを老後資金から捻出します。老後資金1850万円について、予備費を考慮すれば、不足額を3万~4万円には抑えたいところ。生活費が月15万円なら、ここでは計算はできませんが、年金収入として手取りで12万円近くは必要となります。もちろん、65歳以降も働く、あるいは生活費を抑えることで、収支の調整は可能ですが、いくつかの不確定要素を考慮すると、もしも「1000万円は弁護士費用」とするなら、物件価格1500万円からさらに引き上げることは、かなりリスクが高いと言わざるを得ません。
 

アドバイス3 多方面から意見や助言を求めてもいい

さて、実際の住宅購入時期ですが、ご実家から早く出たいというご希望がありますので、労災認定の結果が出るまで何年も待てないことになります。遅くとも年内というお気持ちでしょう。
ただし、都心の不動産価格は現在、高止まり傾向にあります。都内の駅近であれば1DK、1LDKでも1500万円が予算となると、かなり築年数の古い中古物件となるでしょう。それでも、なかなか見つからない可能性があります。物件については、ある程度、妥協が必要かもしれません。
 
それでも、弁護士費用は最初に触れたように、不確定です。1000万円もかからないのであれば、その分、余裕資金として手元に残ります。また、労災認定が受けられ遺族補償が得られる。あるいは、ご主人の元勤務先から損害賠償を得られる。そうなれば、その後のマネープランは大きく変わります。

金額にもよりますが、家計に余裕が生まれれば、老後資金との兼ね合いもありますが、中古物件でもリフォームにまとまった資金を掛けることで、住環境のアップもできるはずです。
 
もうひとつ。すでに実行されているかもしれませんが、もしも気持ちが行き詰まったり、精神的にきびしくなったら、労災認定が専門のNPO法人や違う弁護士事務所など、多方面から意見や助言を求めてもいいかと思います。
 
最後に、今後の申請もしくは裁判の結果が何であれ、ドラさんの気持ちが100%晴れることはないのかもしれません。それでも、今後の人生を豊かに生きる権利も可能性もあります。ぜひ前向きに歩んで欲しいと考えます。
 

相談者「ドラ」さんから寄せられた感想

このサイトを拝読しまして、FPの深野康彦さんがとても的確なアドバイスをされていてその深野さんからのアドバイス。矢張り具体的で且つ参考になり「なるほど」と手を叩きたくなるような内容で、字数に制限はあるかとは思いますが、大変満足しております。ご意見頂いた、買うなら1500万円が限界というアドバイス。まさにその通りと改めて思いました。また、保険についても企業年金で掛けているのが疾病に関する保険で最悪そこから下りるようになっています。そのため、これ以上無駄に自腹で加入しなくてもいいのかな、と再確認できました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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