森喜朗会長の女性蔑視発言が炎上

会議

「女はわきまえろ」という趣旨の発言に、国内外から多くの批判が集まっています。

東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の発言が問題になっています。

日本オリンピック委員会(JOC)はスポーツ庁がまとめた競技団体の運営指針に沿って、全理事のうち女性の割合を40%以上にすることを目標としています。それを受けて森会長は、オンラインの評議員会で「女性理事を選ぶというのは、日本は文科省がうるさくいうんですよね」と前置きをした上で「女性がたくさん入っている会議は時間かかる」と述べたとのこと。
 
時間がかかる理由を「女性っていうのは競争意識が強い」からとし、その上で、「私どもの組織委員会に女性は7人くらいか。7人くらいおりますが、みなさん、わきまえておられて」と話した元首相の一連の発言は、国内外から女性蔑視との批判が相次いでいます。
 
これらの発言が出た評議員会では、森氏の発言の後に笑いが起ったといいます。なお、評議員63名の中に女性は1人(令和2年9月16日現在 ※JOC公式サイトより)。
 
さすがは、男女格差を表すジェンダーギャップ指数が153カ国中121位。先進国でダントツ最下位の国、という感じです。

なお、この指数は、経済・政治・教育・健康の4つの分野それぞれの順位も出ていますが、日本の政治分野は、153カ国中144位です。衆議院議員の女性割合は、わずか9.9%(2020年)。
 
そんな中、東京都の小池百合子知事は「話が長いのは人による」とコメントしました。
 
いや、そこじゃないから。
 

問題は「わきまえろ」という圧力

デジタル大辞泉によると「わきまえる」とは「物事の道理をよく知っている。心得ている」ことだとされています。

森氏は、会議が(彼が想定したよりも)長くならないよう、意見を言わないこと、あるいは短く切り上げることが「わきまえる」ことだと言っているのでしょう。内容によらず。
 
そして、そうした彼の意向を男性は忖度(そんたく)するが、女性はそうではない。けしからん、と言っているわけです。組織委員会の女性7人は「わきまえている」けれど、と。
 
「わきまえなさい」という言葉は、上の立場の者が、下の立場にいる者に対して発する言葉です。少なくとも、自分のほうが「物事の道理をよく知っている。心得ている」と思っていなければ出てこない言葉でしょう。
 
小池氏の「人による」という発言は、「話が長いのは女性だけではない」と、ジェンダーで語ることへの異議申立てにはなっているものの、会議が長くならないよう「わきまえるべきだ」と、組織のトップが圧力をかけたことについてはスルーしています。なお、小池氏は、森喜朗氏の派閥(清和会)出身です。
 

森氏は場所を「わきまえて」いたか?

御年83歳。森氏に悪気はなかったのでしょう。これまでの失言と同じように、無邪気にぽろりとこぼした発言が大問題になり、戸惑っている様子が後日の謝罪会見のやりとりからもわかります。
 
「逆ギレ会見」や「居直り会見」と言われていますが、不機嫌さをあらわにする様子は、謝罪会見という場を「わきまえた」態度ではないように思います。むしろ、記者に対して「立場をわきまえて質問しろ」という怒りが透けて見えるようにも感じます。
 
しかし、女性たちのみならず、多くの男性もが、氏の「わきまえる」という発言に違和感を表明したのは、そのような忖度はもううんざり、という思いがあるからではないでしょうか。
 

ハラスメントは自身の持つ権力への無自覚から起こる

森氏は記者から「会長としての発言ではないので、責任が問われないという趣旨の発言をしていた」と指摘され、「責任を問われないとは言っていませんよ。場所をわきまえて、ちゃんと話したつもり」と答えています。自分はわかっていた、心得ていた上での発言だ、という弁明です。
 
しかし、パワハラにせよ、セクハラにせよ、多くのハラスメントは「立場をわきまえていない」から起こります。
 
森氏は「私は組織委員会の議員会に出たわけではない。JOCの評議員会に出てあいさつをした。正式なあれじゃないから、あとからお礼のつもりで話をした」と述べていましたが、組織委員会の議員会での発言ではないので会長としてのものではないという認識こそが、不用意な発言を引き出したと考えられます。
 
これは「勤務時間外だから、セクハラではない」という加害者の正当化と同じものです。そこには、相手がどう受け取るかという想像力が欠けています。
 
元首相であり、ご自身がおっしゃるように「一生懸命献身的にお手伝いして7年間やってきた」森氏の発言は重いのです。また、「女性は」とひとくくりにした発言は、ジェンダーハラスメントと言えます。
 

「わきまえない女たち」が時代を変えてきた

当たり前ですが、長い会議がすべて無意味なわけではありません。「女の意見などたいしたことはない」「女は競争意識で発言しているだけだ」という思い込みがあれば、真剣に耳を傾けようとは思わず、長く感じるかもしれませんが、異なる立場の人の意見には、多くの気づきがあるものです。
 
JOCが理事の女性割合を40%以上にすることを目標としているのは、男女どちらも4割を切らないということが、男女平等の基準だと考えられているからです。
 
なお、新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、迅速で適切な対応により感染対策に成功したと評価されている台湾もニュージーランドもドイツもフィンランドも、リーダーが女性であることが注目されています。そうした国々では女性の国会議員比率も3割を超えています。
 
会議の時間が長かったのかどうかはわかりませんが、「わきまえておられる」人たちによる「しゃんしゃん会議」ではなかったことでしょう。
 
かつて政治は「男性のもの」とされてきました。「わきまえない女たち」によって、時代は変わってきたし、これからも変わっていくのです。

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