子育て

コロナ禍で煮詰まる育児、虐待予防で意識したいこと

厚生労働省の発表による最新の虐待件数は過去最多になりましたが、コロナ禍に置かれた2020年度はさらに増加することが懸念されます。新型コロナウイルスの先行きがまだまだ見通せない中、家庭内での虐待を防ぐためにできることとは?

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

コロナ禍で煮詰まる育児、虐待のエスカレートを防ぐには

虐待は徐々にエスカレートしやすい。だからこそ起こってからではなく、起こる前の予防策がカギに

虐待は徐々にエスカレートしやすい。だからこそ起こってからではなく、起こる前の予防策がカギに

厚生労働省の発表による最新の虐待件数は過去最多になりましたが、コロナ禍に置かれた2020年度はさらに増加することが懸念されます。

虐待は徐々にエスカレートしやすく、だからこそニュースになるような事件が起こってからではなく、起こる前の予防策がカギになります。新型コロナウイルスの先行きがまだまだ見通せない中、家庭内での虐待を防ぐためにできることを考えていきたいと思います。
 

 過去最多の虐待件数、見過ごされがちな「心理的虐待」

厚生労働省の発表によると、2019年度に子どもが親などの保護者から虐待を受けたとして児童相談所が対応した件数は全国で19万3780件だったそうです。2018年度と比較して3万件以上増加し、過去最多となりました。

虐待のタイプ別には、
  1. 心理的虐待:109,118件(56.3%)
  2. 身体的虐待:49,240件(25.4%)
  3. ネグレクト:33,345件(17.2%)
  4. 性的虐待:2,077件(1.1%)

この順で多く、子どもに暴言を吐いたり、子どもの目の前で家族に暴力を振るったりする「心理的虐待」が全体の半数以上を占めていることが分かります。

コロナ禍の1年となった2020年度のデータはまだ出ていませんが、さらに虐待件数が増加している可能性は否めません。とくにもっとも多い“心理的虐待”は在宅時間が長くなった昨今、増えやすい状況にあるように思います。

テレビのニュースで見聞きする痛ましい虐待事件はその最たるものであり、その背後にはこれだけ多くの虐待が起こっているのが現状です。しかもこの数字は、児童相談所が対応したケースであり、実際には報告されていない虐待が数多く存在するであろうことが容易に予想されます。
 

 虐待はエスカレートしやすい、だからこそ早めの予防策が大切

虐待事件のニュースは、多くの人に「なんてひどい親だ」「ありえない」と強い憤りを起こしますが、その一方で、「自分もやりかねない」「他人事とは思えない」と怖さを感じている方も多いように思います。とくにこの1年は、コロナ禍のため、家で過ごす時間が増え、「家庭内が密で煮詰まってしまう」という話を聞くことが増えました。
 
家族とは一番近い存在ながら、通常なら日中は学校や会社で過ごしているので、ほどよい距離感が保たれているものです。しかしコロナ禍でそれが崩れ、限られた範囲で日々を完結することが増えてきています。人間だれしも、狭い空間で様々な音が飛び交っている環境ではストレスを感じやすいものです。私たちの生活に大きな影響を与え続けている新型コロナウイルスですが、虐待においても同様なことが言えるように思います。

まだ先々が明るい状況ではない今、意識的に虐待予防をしていくことが非常に大事だと思います。虐待というのは、徐々にエスカレートしていくものなので、テレビのニュースで見る痛ましい事件でさえも、はじめからひどい体罰を加えているわけではありません。だんだんとエスカレートしていった結果なのです。
 

親の「直感」だけに頼らない、現代は正しい子育てを「学ぶ」時代

虐待を防ぐには早い段階での予防的なアプローチが大きな役割を担っていると考えています。
 
その1つとして、「子育てを学ぶこと」は非常に有効な対策です。「いやいや、昔から人間は子どもを育ててきたのだから、子育てはノウハウではない。本能で分かっているのだ」とおっしゃる方もいるかもしれません。でも今の時代、確かな情報が積み重なってきており「子育てについて学ぶ」ということが可能になってきています。
 
「母親の直感」というのは、私もあると感じています。ただ、直感だけで1人の子どもを育てあげられるかといったら、やはり難しいとも感じています。1歳の子と5歳の子の育児では、関わり方や親子の距離など様々な面で違うものですが、それを親が直感的に行うよりも、確かな子育ての知識で接した方が一貫性が保ちやすくなります。
 

一般的に虐待は「子どもが言うことを聞かない」というきっかけが多いものです。そこに「強い力を加えて言うことを聞かせよう」とすることで虐待がはじまるのです。子どもが言うことを聞かないときに強い力で圧するのは、いわば直感的な対処法です。しかしそういう場合でも、きちんとした知識を持っていれば、力に頼らずに済むのです。
親の直感に頼るだけでなく、子どもをしっかりと導く知識を学ぶことが大切

親の直感に頼るだけでなく、子どもをしっかりと導く知識を学ぶことが大切

昨今、幼少期の子育てのトレンドとして取り入れられている「叱らない子育て」は、多くの方が聞いたことのある言葉でしょう。ここ最近、この叱らない子育てに疑問を持つママたちからの質問を立て続けに受けるようになったのですが、おそらく私が様々なところで「叱らない子育てへの懸念」を語っているからでしょう。
 
もし、その言葉のまま「子どもを叱らずに育てれば、心を傷つけなくて済む」とか、「子どもはのびのび育てるべきだ」と解釈して、ただただ叱らずに育ててしまうと、のちのち「子どもが言うことを聞かない」という悩みに至る確率は非常に高くなります。叱ればOKで、叱らないのがダメというのではなく、子育ての流行りに乗ってしまい、うわべだけで実践してしまうのはリスクが大きすぎるということです。
 
私は決して叱らない子育てを否定しているわけではありません。ただ子育ては正しい知識をもって行わないと、先述のような虐待のきっかけを生んでしまいかねないのです。

子どもをしっかりと導く知識を身につけることは、虐待予防の一助になってくれます。子育ては育児書や講座などで正しい知識をきちんと理解することにより回避できる問題はたくさんあります。

しばらく続くと思われるコロナ禍での生活、「子どもをしっかりと導く知識」を学んで虐待のリスクを下げるというのは堅実な方法ですので、ぜひ一考してみてほしいと思います。

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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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