亀山早苗の恋愛コラム

結婚したら「君は僕の家の人間」。夫の帰省強要を拒んだ初めての正月

この年末年始は夫婦どちらの実家にも帰らなかった人たちが多いようだ。だが、なかには相変わらず夫の実家で「親類縁者に囲まれて“嫁”役割を強要」された人もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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コロナにかこつけ、結婚後初めて心穏やかな正月を送った私

帰省拒否

この年末年始は夫婦どちらの実家にも帰らなかった人たちが多いようだ。だが、なかには相変わらず夫の実家で「親類縁者に囲まれて“嫁”役割を強要」された人もいる。

 

毎年、姑に皮肉を言われ続けて

結婚して10年、仕事をおさめると夫の実家へ家族で出かける恒例行事を続けてきたチエさん(42歳)。そのたびに義母に嫌な思いをさせられてきたという。

「そもそも夫は3人きょうだい、私はひとりっ子なんですよ。だから結婚してすぐのお正月も私は実家に戻りたかった。うちは親戚も少ないし両親が寂しい思いをしていると思ったから。でも夫に『帰れるのは盆と正月だけなんだし、きみはもう僕の家の人間なんだよ』と言われて……。嫌な感じがしたんですよね。でも両親に言ったら、『うちは近いんだし、正月じゃなくてもいつでも来られるでしょ』と説得されました」

夫の実家は西日本、チエさんの実家は自宅から1時間半ほどの首都圏で、確かにいつでも行こうと思えば行ける。だが仕事を続けていた彼女は、そう簡単に休めるわけでもなかった。

「それでもしかたがないから、夫の実家に行ったんです。そうしたらいきなりエプロンを渡されて『台所を手伝って』と。休む間もなく3日3晩こき使われました。誇張じゃなく、本当につらかった。皿洗いも水でやらされて」

翌年は出産があったため行かずにすんだが、それ以降、毎年、夫の実家行きは苦痛だった。年末が近くなると、「今年は行かなくていいでしょ」「いや、行かないとダメだよ」と夫との攻防戦が繰り広げられた。

「父が入院したときがあって、それでも夫は実家に帰るという。私は『あなたはふだんやさしいのに、実家行きだけは頑なだね。親が入院している私の気持ちなんてまったく想像できないのね』と言ってしまいました。すると夫は『きみには実家なんて、もうないんだよ。○○家の人間なんだから』と。なんだかとても悲しかった。娘にはそんな思いをさせたくないと真剣に思いました」

チエさんは、子どもをひとりしか産めなかった。ふたりめも授かったのだが流産してしまい、その後はできなかったのだ。

「30代のころは夫の実家に行くたびに、『ひとりしか産まないなんて、どういう神経してるんだろうね』と義母が親戚に言い、親戚が『東京の人はそういう考え方なんだろ』と突き放すように言うのが毎回お約束みたいになっていましたね。流産した悲しみなんて想像もできなかったんでしょう。一昨年の暮れもそんな話題が出たので、『私、もう40歳になったので産みません。そもそもふたりめは流産して大変だったんです。何も知らないのに言わないでください』ととうとうブチ切れてしまった」

さすがに場はしんとしたが、義母はまったく悪いことを言ったとは思っていないようだった。

 

夫とギスギスした1年

夫はそのことについて「なにもあんなふうに言わなくても」とチエさんを責めた。ふだんの生活について、夫に大きな不満があったわけではないが、それ以降、夫との関係が少しぎくしゃくしていった。

「コロナでの緊急事態宣言下で、ふたりとも自宅にいることが多くなり、案外、日常生活でもギクシャクすることは多いんだなと思うようなできごとが重なって。たいしたことじゃないんですが、一緒に犬の散歩に行ったら夫が道端にゴミを捨てていたり、近所の人への挨拶がきちんとできていないとわかったり。娘をひとりにしないというのが我が家の鉄則だったので、夫婦で散歩なんてしたことがなかったんですよね」

秋以降、夫は普通に出社するようになった。そして今回は実家に帰るとは言わないだろうと思っていたら、「考えたけどやっぱり帰る」と言い出した。

「私は万が一のことを考えて両親にもほとんど会っていないんですけどね。夫にもリモートで話をすればいいと言ったんですが、帰るの一点張り。私は行かない、娘も行かせないとはっきり言いました。行くならひとりで行ってほしい、と」

夫は行かないなら離婚だとまで言い出した。チエさんは「それでもいい」と返した。そして夫は仏頂面のまま昨年暮れにひとりで帰省した。義母から電話がかかってきたが、チエさんはでなかったという。

「娘とふたり、とてものんびり楽しく過ごしました。家の近くの河川敷でバドミントンをしたり散歩したり。家ではふたりで料理を作って、それを食べながらゲームしたりして。夜は映画を観たりもしました。いつも忙しくて娘とゆっくり話す時間がなかったので、彼女の将来の夢とかもいろいろ聞けて。一切、ああしろこうしろと言わずに過ごしたんです。娘も楽しかったと言ってくれました」

夫は元旦の夜遅くに帰ってきたが、それからほとんど言葉を発していない状態。よほどひとりで帰省したことが腹立たしかったのだろう。

「捨て台詞のように言った、離婚するという言葉。自分が吐いたその言葉を夫がどうするつもりなのか、私は待っているんですが……。本当に離婚してもいいと半分は思っているんです。もう私は夫の実家に対しても、夫本人に対してもあまり未練がないと、夫のいない7日間でわかってしまったから」

夫の存在感は、夫本人が思っているより家庭内でずっと軽いのかもしれない。お互いに「相手の気持ちはいつでも変わる」と思っていないと、信頼感のある夫婦関係を築くことはできないのではないだろうか。
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