ドラマや映画の性描写、隣に子どもが……
ドラマで紡がれる男女の物語……決して激しい描写ではないが、たとえばキスシーンなどが出てくると、ドラマに埋没している大人はじっと見ているが、気づくと隣に子どもがいて……ということもあるようだ。
「他の家庭はどうしているのか気になります」という40代女性の言葉を、他の女性たちにぶつけてみると……。
case1. 恋愛ものは録画して夜中にひとりで鑑賞
「恋愛ドラマは子どもがいるときは観ないようにしていますね」そう言うのは、カナさん(42歳)だ。以前、10歳になる長女がキスシーンをじっと見つめていたことがあり、それ以来、恋愛ドラマは録画して深夜にひとりで見ることにしているという。
「キスシーンくらいいいかなと思うんですが、やはりきちんとした恋愛および性教育をしてからのほうがいいとも思って。うちは中学生になったら、すべてきちんと教えようと夫と話しているので、それまではごまかしながらいくしかないと思っています」
学校でも性教育はされているようだが、子どもがきちんと理解しているとは思えない。むしろ、恋愛とか人を好きになる感情がわかってくる中学生になってから、そこについてくる「性」を教えたいとカナさんは言う。
「私たちのころはいつの間にか早熟な子に教えてもらったりしていましたが、今の時代はそうはいかない。恋愛以前に、嫌なことをされたら嫌と言えるように教えないと、どんな性暴力に巻き込まれるかわからないし。むずかしい時代ですね」
カナさんの友人に帰国子女のヨウコさんという女性がいるのだが、ヨウコさんは子どもたちに小さいころから性や恋愛について、隠すことなく話しているという。
「本当に実践的に教えているんですよね。息子が中学生になるとき、すでに避妊具をもたせていると言っていました。私にはそこまで思い切ったことはできないけど、彼女の意見もいろいろ参考にはしています」
ドラマくらいで親がどぎまぎしてはいけないんでしょうね、とカナさんは苦笑した。
case2. 子どもの前で軽くキスすることも
「うちはむしろオープンにしていますね」そう言うのはチナツさん(44歳)。12歳の息子と10歳の娘がいるが、子どものころから夫が下ネタを言っては笑わせてきたという。
「性的なことを恥ずかしいと思わず、かといってむずかしくしすぎず。それがむずかしいんですが。うちはキスシーンを見て、娘が『パパが興奮するね』と笑っています。夫は『本当に好きな人だからできることなんだぞ』と決めぜりふ。私と夫も子どもたちの前で、チュッと軽くキスすることがあります。子どもたちははやしたててるけど、彼らが大人になったときに本当に好きな人とすることなんだ、というのを覚えていてくれたらいいかな、と」
同時に子ども用の人体図鑑などを与え、自分の体への意識を高めているという。そのうち、セックスそのものについても聞かれる日があるかもしれないが、逃げずに教えたほうがいいと夫婦で話し合っている。
「望まない妊娠についていろいろ取りざたされていますからね、セックスは大好きな人とすればすばらしいことだけど、妊娠がつきもの。子どもを育てられない環境、年齢で愛しているからセックスするなら、きちんと避妊をしなければいけない。それだけはちゃんと理解してもらいたい。そう思っています」
昔のように、放っておけば自然とわかるというものではなくなっている。子どもたちを取り巻く性的な問題もいろいろ勃発している時代なのだ。
「そのうち、あなたたちはお父さんとお母さんが愛し合っているから生まれてきたのだと教えたいですね。そのためにも夫婦が仲良くしていないといけない。いろいろ考えるとむずかしいですけど、愛とセックスについては構えるのではなくて私たち夫婦が自然と教えていければいいなと思っているんです」
性的なことにおいては、加害者にも被害者にもならないようにしてあげたい。それが今の時代の親の望みなのではないだろうか。
「親が照れていたら子どもは、性的なことを肯定的に受け止められない。だからこそ照れずにまじめに、でもおおらかに伝えていきたいですね」
自分の体と愛と性。大人になってもそこで戸惑ったり躓いたりする人は少なくない。それでも教わったことと体得したことをふまえて、人は大人になっていくのではないだろうか。