菅政権の誕生で大手3社に一層の値下げ圧力
そして2020年、最も消費者の関心を集めた出来事といえば、9月に菅義偉氏が内閣総理大臣に就任したことでしょう。菅氏は以前より、携帯電話市場が大手3社の寡占状態にあるとして強く批判、「携帯電話料金は4割値下げできる余地がある」と発言するなど料金の引き下げに非常に熱心なことで知られていますが、その菅氏が国のトップとなったことで、携帯電話料金引き下げが政権公約となったのです。その命を受けた武田良太総務大臣が積極的に料金引き下げに動いたことで、料金を巡る携帯電話会社と政府との攻防は大きな話題となりました。中でも注目されたのは、武田大臣がメインブランドである「NTTドコモ」「au」「ソフトバンク」での料金引き下げに強いこだわりを見せたことではないでしょうか。 というのも武田大臣の動きを受ける形で、10月にKDDIやソフトバンクが「UQ mobile」や「ワイモバイル」といったサブブランドで安価なプランを提供。武田大臣が一度はそれを評価していたのですが、11月に入ると突然手のひらを反し、「メインブランドでの料金引き下げがなされていないことが問題だ」という旨の発言をするようになったのです。 その理由は、ブランドを移行するのに番号ポータビリティや新規契約、料金プランによっては解約などにかかるさまざまな手数料がかかることを問題視したが故と見られています。確かに契約者が多いメインブランドでの料金引き下げは、消費者にとってメリットが大きいのですが、楽天モバイルやMVNOなどの新興勢力にユーザーが流れにくくなり、菅氏が懸念を示していた3社による市場寡占が一層進むことも懸念されます。
NTTの後ろ盾を得たNTTドコモ、力を見せつけた「ahamo」
その懸念が現実のものとなったのがNTTドコモを巡る動向です。去る9月29日、日本電信電話(NTT)がNTTドコモを完全子会社化することを発表して大きな衝撃を与えました。 NTTによると、NTTドコモの業績が近年芳しくないことから子会社化することで企業体力を高めるとともに、NTTコミュニケーションズなどグループ会社の力を用いて競争力を強化することが狙いだとしています。その力が早速発揮されたのが、NTTドコモが12月3日に発表した新料金プラン「ahamo(アハモ)」です。ahamoは契約やサポートをオンラインに限定することで、複雑な割引を適用しなくても月額2980円、なおかつ20GBの高速データ通信と1回当たり5分間の無料通話が使えるという破格のコストパフォーマンスを実現。発表直後からたちまち大きな評判を呼びました。 それを受ける形でソフトバンクも、12月22日に急遽ahamo対抗の「Softbank on LINE」を発表。KDDIも2021年1月には対抗策を打ち出すと見られており、3社によるオンライン主体で低価格のサービス競争が急加速することになるでしょう。
ですが従来、この領域は楽天モバイルやMVNOが手掛けてきたものでもあり、大手3社が入り込むことでそれら新興勢力は危機的状況にさらされ、撤退する企業が出てくるかもしれません。NTTの後ろ盾を得たNTTドコモを軸に、2021年は大手3社による料金競争が加速する一方、3社による寡占も加速することになりそうです。
【参考記事】
・ドコモの格安プラン「ahamo」のメリットとデメリットを整理、注意点は?
・5Gとは? 4G対応のスマホでも使えるの? 3つの特徴を徹底解説!