離婚した夫が出ていかない

離婚後も同居

別居から離婚というケースもあるが、同居したまま離婚が成立したものの夫が出ていかないというケースがある。しかも、その状態に女性のほうが慣れてきてしまったとか。不思議な元夫婦の関係とは。

 

まずは叩き出したかったのだけれど

度重なる夫の浮気に耐えかねて、アオイさん(38歳)は夫に離婚届を突きつけた。それが去年の春のことだ。

「結婚前から怪しい男だとは思っていたんですよ(笑)。彼の部屋の冷蔵庫に手作りのハンバーグが入っているのを見たこともあって。これ何よと言ったら、『突然おふくろが来て作っていった』と言うんですが、以前、おふくろはオレの部屋に来たことがないって言ってたから、ああ、これはウソだなと。そうやってすぐわかるウソをつくタイプなんです」

しつこく尋ねると、「ハンバーグを作ってきたと言って知り合いの女性がやってきたので、ハンバーグだけもらった。家には上げてない」と態度を変えた。

3年間のつきあいの中で、何度かそんなことがあったという。それでもアオイさんが3歳年下の彼と結婚に踏み切ったのは、

「平たく言うとできちゃった婚なんです。私は結婚しなくてもいいかと思っていたんですが、妊娠を知った彼は大泣きして、『オレ、いいパパになる』と宣言。友だちに囲まれてパーティーをしたときも大号泣していました。いいかげんで浮気するヤツだけど、なぜか友だちは多いんですよね」

その子は現在、8歳になる。夫は目に入れても痛くないほどかわいがっているが、この娘がなかなか辛辣なのだという。

「私は夫の悪口を吹き込んだりはしていないんですが、娘は夫が遅く帰ってくると、『パパ、また浮気してたの?』って。夫は娘には頭が上がらないんですよ」

たとえ浮気していたとしても、家族としてはそれなりにうまくいっていた。アオイさんも仕事をしており、娘は働くママが自慢だったという。

その状況が少し変わったのは、この春から。コロナ禍において夫の「卑怯なふるまい」が明らかになったからだ。

 

自宅に女性を引き入れて

それは緊急事態宣言が出ていたある日のことだった。

「夫は完全に在宅仕事でしたが、私は週に1度は出社だったんです。その日は近所に住む妹がうちの娘を遊びに来させてほしいと。妹の家にはうちの娘より1つ年下の子がいるんですが、遊び相手がいなくて退屈している、と。夫に言ったら、車で送り迎えするというので頼んで私は会社に行ったんです」

社内でしかできない仕事を片づけ、アオイさんが帰途についたのは午後3時頃。もっとかかるかと思ったら意外と早くすんだのだという。

「夫を呼び出して娘も拾ってもらって帰ろうかなと迷ったんですが、まあ、とりあえず帰宅してしまおうとなぜか思って。虫が知らせたんですかね」

帰宅して鍵を開けると、玄関に見たことのない女性の靴が揃えてあった。まさかと思いながらダイニングからリビングへと歩を進めると、リビングのソファでうごめくふたりの姿があった。

「立ち尽くして見てましたね、私。そうしたら身を起こした夫と目が合って。夫のあわてふためいた顔が今でも目に焼きついています」

女性が目を伏せて帰るとき、アオイさんはひと言投げかけた。

「これだけはルール違反だってこと、覚えておいてねと言ったんです。彼女は小声ですみませんと言って逃げるように去っていきました」

そこから当然、修羅場が始まる。

「とにかく、今回ばかりは人として許せないと私は言いました。外でこそこそ浮気しているなら知らん顔もできるけど、リビングのソファは娘も座る場所なんだよ、恥ずかしくないのって。夫は本当に小さくなっていましたね」

その晩、アオイさんはネットでソファを買い、今までのは粗大ゴミに出した。そして次の出勤日に役所に寄って離婚届をもらってきた。

「夫はその間、ごく普通にふるまっていました。私も娘の前ではいつものようにしていようと心がけていましたが、やはり様子がおかしかったんでしょうね。娘は『パパ、またママを怒らせたの?』なんて聞いていました」

夫は素直に離婚届にサインをし、アオイさんはそれをすぐに提出、受理された。ところがコロナ禍で、夫は「アパート探しをするのがいやだ」と言う。

「まあ、それもそうかなと思って、とりあえずいてもいいよと言ってしまったんですよ。それが間違いでした」

秋になっても夫は出ていかない。夫の分の洗濯は拒否、寝室も別にしたのだが、夫はちっとも堪えていないようだ。

「私のほうは今、週4日出社なんですが、夫は週1回出社ですんでいる。リモートでできる仕事なので。そうしたら夕飯は作ってあるし、私と娘の洗濯もしてある。『あのね、私たちは離婚したんだからね』と言いましたが、夫は『わかってるよ』と受け流す。今では娘まで、『離婚しても一緒にいるのっておもしろいね』と言い出す始末。夫に何か吹き込まれているんじゃないでしょうか」

苦々しいという思いはある。許せないとも思う。だが心の底から憎むことはできない。それがアオイさんの葛藤となっている。

「もう夫婦じゃないんだからねとよく言うんですが、夫は『それでもママとパパであることには変わりないよ』と。それはそうだけど……。いろいろ考えたんですが、今は世の中が平常ではない。勢いで離婚届は出しましたが、実質的な夫との関係はコロナが終息してからゆっくり考えることにしました」

確かに大事な決定は、もう少し世の中が平穏になってからのほうがよさそうだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。