マウスシールド、フェイスシールドはマスクの代わりになる?
マスク代わりにフェイスシールドやマウスシールドが使われるケースも……感染予防効果はあるのでしょうか?
フェイスシールド着用による飛沫抑制効果はわずか20%・予防効果はほぼゼロ
マスクのような布で口元だけを覆うよりも、プラスチックなどのしっかりした素材で顔全体を覆った方が飛沫を防げそうだと考える方もいるかもしれませんが、飛沫は直線方向に少量飛ぶわけではありません。自分が出す飛沫を周りに飛ばさない効果、周りの飛沫を受けない効果についての調査があります。スーパーコンピューター「富岳」により確認された、マスクやフェイスシールドなどの飛沫拡散の抑制効果の調査結果は以下の通りです。 意外かもしれませんが、ごく一般的な不織布マスクでも、マスクをつけない状態に比べて吐き出す飛沫量を20%、吸い込む飛沫量を30%ほどまで抑えられるのに対し、フェイスシールドやマウスシールドではほぼ何もつけていない状態に近いことがわかります。
口から出る飛沫の拡散状態については、以下のビジュアルがわかりやすいかと思います。
不織布マスクでは、手作りマスクに比べると、マスクを通しての飛沫が少ないことがわかります。
大きな飛沫に関してはフェイスシールドは防いでいますので、感染拡大を少し防ぐ効果はありますが、小さな飛沫に関しては隙間から拡散していきます。
下記の実験では、咳をしたときと同等量の飛沫を人為的に作り、粒径の違いによって捕集される飛沫の割合を異なる種類の防護具ごとに計算しています。結果として分かったのは、医療用マスク、3層の布製マスク、2層ネックゲートルに比べ、フェイスシールドの捕集効率は極めて低いということです。
様々なマスクによる飛沫防止率:National Institute for Occupational Safety and Health(NIOSH)
感染者がフェイスシールドをすれば飛沫の拡散は少なくなりますが、下の図のようにフェイスシールドで何もしていない人から飛んでくる飛沫を感染防御しようとしても、効果はほぼ期待できないといえます。つまり、自分の感染予防になりにくいといえます。
マウスシールド・フェイスシールドはマスクの代わりにはならない
飛んでくる飛沫の飛散を防ぐためには、やはりマスクが効果的といえるでしょう。つばなどの大きな粒子を直接、相手に届かないようにする点では、マウスシールド、フェイスシールドも無意味ではないかもしれません。また、ウイルス感染は目の粘膜から侵入することがあり、眼は鼻につながっていますので、感染者や濃厚接触者に近くで接する医療者などが目からの感染を防ぐ意味では、フェイスシールドは有効と考えられ、使用されています。マウスシールド・フェイスシールドの使用法・注意点
マウスシールドの効果は、つばの飛散を少し抑制する程度、相手のつばが直接口に侵入しない程度にとどまります。フェイスシールドも直接的なつばなどの大きな飛沫に限定するなら、飛沫自体は防ぐことができます。マウスシールドよりはフェイスシールドで、マスクの弱点である目をガードするにはフェイスシールドが有効といえますので、感染予防の観点からは、マスクとフェイスシールドをともに使うと良いでしょう。 また、上の図のように、フェイスシールドは角度が大事で、なるべく顔に近づけるよう垂直に装着することが大切です。手話通訳など、実際に会話をしないものの、口の形や表情で言葉を伝える場合には、フェイスシールドは1つの感染予防の方法になります。いずれにしても、状況に応じた使用が望ましいでしょう。拭えないコロナウィルスへの不安……人との接触を防ぐことが第一
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大で不安になっている方は多いと思います。自分は無症状・軽症なだけで実は感染しているかもしれない、人にうつしてしまうかもしれない、急に自分も重症化するのではないかといったさまざまな不安がこの感染拡大においてみられます。一方で、すべての人が肺炎になって重症化するわけではありません。まずは重症化しやすいことがわかっている高齢者・基礎疾患などのある人たちへの感染拡大、重症化をいかに防ぐかです。2009年に流行したインフルエンザでもワクチンによって死亡数は減少させることができましたし、新型コロナに対しても有効なワクチン開発が望まれます。
ワクチンが開発され、感染が落ち着くまでは、社会全体での正しい予防、感染拡大の抑制が大切です。COVID-19は人から人に感染する呼吸器感染症ですので、それぞれが正しい予防を行った上で、人と人との接触をなるべく減らすことが重要です。とはいえ、社会は人で構成されています。人の動きで経済が動き、それぞれの人の生活を支えていますので、経済を止める政策が難しい面もあるのでしょう。マスクをせずに人と接する状況を、社会全体で減らすことが今は重要といえます。
■参考
- コロナ飛沫感染に関する研究(PDF)(国立大学法人豊橋技術科学大学 Press Release 2020年10月15日より)
- National Institute for Occupational Safety and Health (英語)(NIOSH)