不倫相手を社会的に抹殺したい……愛人の復讐
ドラマ『恋する母たち』(TBS系・毎週金曜22時)が興味深い。11月27日に放送された第6回では、蒲原まり(仲里依紗)の夫で弁護士である繁樹(玉置玲央)が、政治資金流用の指南役だったと週刊誌に出たことで大騒ぎとなる。その話をリークしたのは、繁樹の愛人で部下でもある山下のり子(森田望智)だった。彼女は自分の存在を妻・まりに告げ、夫婦と3者会談したこともある。結局、繁樹は家庭に戻ったのだが、それを恨んでの復讐だった。
自分には冷たくしておきながら、繁樹が気鋭の弁護士としてとりあげられたテレビ「情熱人生」で家族の仲のよさをひけらかしたことに我慢がならなかったと彼女は繁樹に電話をかけてくる。
「ぜーんぶしゃべっちゃいましたー。情熱人生見てたらムカついたんでー。私だけ置き去りにして妻と娘に囲まれてデレデレして!」
「第二弾でもっとズタボロにしてやりますから」
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愛人を怒らせると怖い。もともと生活の基盤が同一である妻と違い、いざとなったら愛人は男の味方には決してならない。だからこそ、つきあい方、別れ方が重要なのだが、男たちはそこを理解していないようだ。
実際にそんな例はいくらでもある。
家庭と社会生活、どちらも抹殺したい
「自分が結婚していれば家庭に知られるのもまずいから、ひどい目にあってもおとなしく引っ込むかもしれませんが、失うものがなければ復讐も派手にやりますよね」
含み笑いをしながらそう言うのは、エイコさん(36)だ。彼女は28歳で結婚、夫は悪い人ではないしまじめなのだが、性格的に合わないと思うことも多々あった。ある日、たまたま夫婦ゲンカをし、信頼できる会社の4歳先輩に相談。それをきっかけにふたりで会うようになり、深い関係となってしまった。つきあって半年ほどたち、彼に「本当はオレたちが結婚するべきだったんだ。それぞれ離婚して結婚しよう」と迫られる。
「彼には子どもがひとりいたので、そう簡単に離婚なんてできるはずがない。私はそう言いましたが、彼は『僕もエイコと一緒になったほうが幸せになれる。すぐに離婚する』って。夫に離婚を切り出したら激怒されたので、私は怖くなって友人の家に逃げ込み、そこから弁護士を立てて協議離婚に持ち込みました。その間も彼は『うちももうじきだから』と言い続けていたんです。私のほうは彼とつきあい始めて2年後には離婚が成立しました。彼はひとり暮らしになった私の家に頻繁に来るようになったけど、離婚のりの字も口にしなくなって」
どういうことなのと詰め寄ると、もうすぐだよとのらりくらり。エイコさんは「あと半年以内に決着をつけてくれなければ別れる」と通告する。だが彼は、彼女が自分に惚れていると甘く見ていたのだろう。半年たっても、「今、妻を説得しているから」と言い逃れに終始した。
私にもプライドがある
いつまでも不倫相手でいたくなかった。ずるずると関係を続けていてもいいことはない。彼女はそう思ったが、彼を前にすると強く言えないのも事実。「そんなとき、私、彼の妻のSNSを見つけたんですよ。彼自身は防衛本能なのかSNSはやっていないんですが。妻も最近、始めたばかりみたいでした。そこに『家族で旅行にきました』という写真を見つけて。その日は彼、実家の親が具合が悪いからちょっと田舎に帰ってくるって夏休みをとっていたんですよね。それから妻のSNSを見ていくと、たびたび家族で出かけているし、彼の顔は写ってないけど夫婦で外食したりしている写真もあって。『いつも素敵なご夫婦』なんていう友人らしき人のコメントもありました。それを見ているうちに気分が悪くなって吐いたんです。ひとりで吐きながら、絶対に許さないって思いました」
その後、徐々に彼からの連絡が間遠になっていった。逃げれば追うの心理が働き、彼女は彼に連絡をとろうとし続ける。彼からは「もうやめよう」とひと言だけメッセージが来た。これで彼女のかろうじて保ってきた理性がキレた。
「彼がうちに来てリラックスして寝ているときの写真や、彼が脱ぎ捨てたスーツの写真などを妻のSNSに送りつけたんです。ついでにそれを彼の上司にも見せました。離婚して一緒になろうと約束していたのに裏切られた、と。おしゃべりな同僚に話したら、あっという間に会社中に知れ渡っていました」
結果的に彼は地方の支社に飛ばされた。離婚もしたという。彼女は今もその会社に勤めている。
「もちろん私だって風当たりは強かったですよ。だけど私が辞めたら、彼の行く末がわからなくなる。私はずっと見届けたいんです。彼がどうなるのか……。私は今、新たに婚活しています。私の過去を知らない人と結婚するつもり」
彼女の口の端が少しゆがんだ。自分がしたことで決してすっきりしているわけではないのだろう。
「人に離婚させておいて、いざとなるとポイ捨てする彼をどうしても許せなかった。私にもプライドがありますから。でもね、私、本当に彼が好きだったんです。だからこそ許せなかった」
愛憎は表裏一体、愛が強ければ強いほど憎悪も増してしまうのかもしれない。