デザイン・機能面に、こまやかな工夫
あたたかいコーヒーをテイクアウトして、職場や家、そして公園などで楽しんでいる人も多いことでしょう。最近はチェーン系のコーヒーショップやファストフード店はもちろん、コンビニでも安くて美味しいコーヒーを持ち帰ることができるようになりました。
そこで気になるのがテイクアウト用の「紙コップ(紙カップ)」。持ったときに熱くならない断熱性の高いものや、期間限定でかわいいロゴやイラストをプリントしたデザインなど……、ショップによってさまざまな工夫が施されています。
コロナ禍で感染防止のために飲料の持ち帰りや、衛生のために使い捨てできる紙コップに注目が集まっています。
年々進化し続けている、お店ごとに特徴のあるテイクアウトのコーヒー用の紙コップを紹介します。
コーヒーチェーン店
まずは代表的なコーヒーチェーン店の紙コップです。スターバックスコーヒー 「スタバ」の愛称で親しまれているスターバックスコーヒーは、日本にも持ち帰りコーヒー文化を根付かせたショップと言えます。
そんなスタバのテイクアウト用のカップは昔ながらの厚紙製。本体の熱さを防ぐ紙製の「スリーブ」の普及もスタバから始まりました。スリーブには季節限定のデザインのものもあり、コレクターがいるほどの人気です。
※スターバックスコーヒーは2020年11月からこれまで透明プラスチックを使っていた冷たい飲みものも紙コップとストローを使わない蓋(リッド)で提供を開始。首都圏の旗艦店から全国に展開していく予定
タリーズコーヒー スタバと同じシアトルで誕生したタリーズコーヒーは、従来型の紙コップにスリーブを使うタイプです。楕円にオレンジと濃いグリーン使ったロゴマークがアメリカンな印象です。色鮮やかにクリスマスなどのイベントに合わせて展開されるコーヒーのパッケージはSNSなどで話題になります。
大人気のタリーズのテディベア「ベアフル」もシーズンごとにプレゼントキャンペーンなどを行っているので紙コップのデザインとともに要チェックです。
ドトールコーヒーショップ ドトールの紙コップは写真のように表面に凹凸がついています。これは断熱性を高め持ちやすくするための工夫です。
紙コップ本体が2重の構造になっていて中間の隙間の空気が魔法瓶のような理屈で熱を防ぎます。空気層を設けて断熱する仕組みは建築物と同じ。そのため「スリーブ」がなくても手で持った時の熱さが軽減されます。
ドトールが開発したこの断熱紙コップは、通称「ドトールタイプ」「ドトールスタイル」などと呼ばれ、コンビニやさまざまな飲食店のホットドリンクのテイクアウト用の主流になりつつあります。
コメダ珈琲店 コメダ珈琲店の紙コップも断熱紙コップですが、表面処理の方法がオリジナルです。他社の多くが紙に細かな凹凸の加工をしているのに対して、コメダの紙コップは縦方向に幅広のストライプ状の空気層があります。この断熱効果を狙った形状が手触りの良さにも貢献しています。
また、他の紙コップに比べて飲み口部の丸みが大きくつくられているので、蓋を外して飲むときには個人的にとても口当たりがよく飲みやすいと感じました。
サンマルクカフェ サンマルクカフェの紙コップは凹凸の付いたドトールタイプで断熱性能のあるものです。この紙カップで火傷をするほど熱くなることはないのでこの店にスリーブはありません。
でもサンマルクでは、持ち帰りの客にはスリーブの代わりに紙コップを2重にして手渡してくれるのです。これは皆にやさしい、質の高いホスピタリティだと思います。
●手で持ったときの熱さを和らげる「スリーブ」
紙カップ本体に断熱性能のない従来型のスタバやタリーズなどで使われている紙コップは熱湯を入れると熱くて持ちづらくなります。
そこで本体の大きさに合った「スリーブ」という紙製のカバーを被せて手を保護します。多くは断熱性の高い段ボール紙が使われています。スリーブを付けるとカップの表情も変化するしショップによって違うグラフィックデザインも楽しめますね。
コンビニ
続いては、コンビニコーヒーの紙コップです。比較してみると、各社のこまやかな工夫が見てとれます。セブン-イレブン「セブンカフェ」 セブンカフェは、セルフサービスにすることで100円で専門店の味が楽しめる、という革新的なスタイルで2013年に始まりました。
さらに画期的だったのはコンビニのコーヒーでも断熱コップを採用したことです。凹凸の形は若干違いますが、いわゆるドトールタイプの断熱紙コップです。
カップのグラフィックはロゴのみというシンプルさ。写真の他に赤いパッケージが美しい「グアテマラブレンドホット」があります。
ファミリーマート「ファミマカフェ」 ファミマカフェも凹凸をもつ断熱紙コップです。ですが客の好みで選べるようにコーヒーマシンの横のラックに紙スリーブが置いてあります。ドトールやセブンカフェなどの断熱紙コップでも「少し、熱いかな」と思うことはあるので、スリーブの提供はうれしいサービスですね。
またファミマカフェでは、リッド(ブラスチック製の蓋)についている飲み口の穴を2020年10月から大きくし、さらに飲みやすさも追求しています。
ローソン「MACHI café(マチカフェ)」 ローソンのコーヒーサービスは「MACHI café(マチカフェ)」という名前で展開されています。その名のとおり新しい店舗のイートインコーナーは、カフェのような雰囲気のインテリアもあります。
マチカフェ紙コップは厚めの印刷が施された非断熱タイプなので、スリーブを使う前提で設計されているように感じました。
ミニストップ「ミニストップカフェ」 ミニストップカフェもセブンやファミマと同じドトールタイプの断熱紙コップです。ホットコーヒーのコップは濃い茶色のレギュラー、白色のスモールの2種類で展開されていて、色でサイズが分かるデザインになっています。
ホットコーヒーの他にも「ホットカフェラテ」「フェアトレードホットコーヒー(一部店舗飲み)」など、テイクアウト商品が充実したミニストップならではの豊富なラインナップです。
●紙コップの蓋「リッド」
リッド各種。上列左からスターバックス(飲み口はマドラーで塞ぐことができる)、上中央:フレッシュネスバーガー(唇マークのシールを貼ってくれる)、上右:コメダ珈琲店。下段左からファミマ(現行のリッドで最も大きい穴)、下中央:セブン、下右:マクドナルド
「リッド」とは、ホットドリンクを入れる紙コップの用の樹脂製の蓋です。飲み口用にあけられた飲み口穴からコーヒーを飲むこともできる設計になっています。
お店によっていろいろな形状のものがありますが、スタバやフレッシュネスの最初から空いている飲み口の穴は縦横5mm×1cm程度のとても小さい穴です。
一方、プルアップ式の飲み口は大きくなる傾向にあるようです。上の写真の比較でも分かるように下段左端のファミマカフェの飲み口が特に大きいです。
リッドの目的は、飲み口以外にも「揺れやコップの変形などでこぼれないようにすること」もあります。リッドを外して飲む人も移動中は安全のために蓋をしておくことをオススメします。
ファストフードチェーン
最後に、おなじみマックをはじめとするファストフード店のコーヒーカップです。マクドナルド マクドナルドの紙コップも断熱コップですが、ドトールタイプのように紙を複層にして凹凸をつけるのではなく、厚紙の表面に発泡層のある皮膜紙を施して断熱しています。
これは「日清カップヌードル」などにも採用されている紙の断熱加工方法の一種です。断熱性も高く、滑りにくく触り心地もいい紙カップです。
モスバーガー モスバーガーもマクドナルドと同じ発泡素材系の断熱紙コップですが、マクドナルドの発泡素材よりもマットで毛羽立った感触のビロード風の仕上げです。
食器や野菜が描かれたイラストも自然志向の企業理念を可愛らしく表しています。
フレッシュネスバーガー フレッシュネスバーガーは日本で生まれたハンバーガーチェーンですが、内装やメニューのアメリカンな雰囲気が人気です。
テイクアウトの紙コップも、アメリカ・シアトル発祥のスタバやタリーズによく似た紙コップ。持ち帰りコーヒーは紙製のスリーブに入れて販売されています。
ケンタッキーフライドチキン ケンタッキーフライドチキンは単品からでもコーヒーのテイクアウトに対応しています。カップはドトールタイプの断熱紙コップです。
「挽きたてリッチコーヒー」や「挽きたてリッチカフェラテ」などの人気ドリンクを熱々で持ち帰ることができます。
ミスタードーナツ ミスドの紙コップは前出のモスバーガーとよく似た発泡素材系の断熱紙コップです。「ドーナッツがもっと美味しくなる」と謳われているミスドのコーヒーを、ドーナツと一緒に持ち帰ることができます。
コップ表面には人気のドーナツ「ポン・デ・リング」などが幾何学模様でアレンジされています。
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コーヒーショップからコンビニ、ファストフード店まで全14種を紹介しました。味はもちろん紙コップのデザインにも着目して、テイクアウトコーヒーを楽しんでみてはいかがでしょう。