今後、お金の考えができないことが最大の悩みです

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、会社員として働く41歳の独身男性の方。順調に貯蓄を増やしていく中、今後、どういう考え方で資金づくりをすべきかがわからないとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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どういう考え方で資金づくりをしたらいい?

どういう考え方で資金づくりをしたらいい?


■相談者
北のバス運転手さん(仮名)
男性/会社員/41歳
北海道/賃貸住宅
 
■家族構成
一人暮らし
 
■相談内容
毎回連載を習慣のように読ませていただき第三者の目線からアドバイスいただきたいと思い相談させていただきました。独身で結婚歴無し、今後結婚の予定も無く生活しております。
 
前職で額面年収が300万円未満の生活を10年近く続けておりお金を使うことがほぼできなかった癖もあり、転職後3年が経ちましたが(額面年収約400万円)生活水準は変わっておりません。家計簿ソフトで毎月の収支は確認しております。
 
今後マンション購入など大きな買い物をする予定も無く、余ったお金を全て貯蓄に回しているという状況です。
 
過去に株・FXで損をしたことがあり投資という性質の物には全く手を出そうとは考えておらず、毎日バスの運転手をしております。仕事柄拘束時間が長く、お金を使う時間も場所も特にありません。抱えているローンは全くありません。遊びという遊びも特にしていないです。
 
あと少しでとりあえずの目標1000万円(夫婦で2000万円必要なら独身ならその半分)に届きそうですが、その後のお金の考え方ができないことが今の最大の悩みです。今のままの生活なら、資金的には老後も枯渇しないとも思うのですが、あくまで自分の考えに過ぎません。
 
アドバイスいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ
相談者「北のバス運転手」さんの家計収支データ

相談者「北のバス運転手」さんの家計収支データ



■家計収支データ補足
(1)生活費が抑えられている理由
日々の支出を日常的に抑えている自覚はあるが我慢や無理はしていない。スーパー(行くのが遅いので割引タイムになっている)で惣菜を買い、米は自宅で炊いている。また、新しい物を買うより、手元にある物を長く大事に使うことに喜びを感じる性分も、生活費が抑えられている要因だと考えている。どうしても必要な物は買うが、何となく欲しい物は基本買わない。また、前職が営業職だったこともあり、交友関係は広かったが、人付き合いに疲れたのか今はほとんど関係、付き合いはない。
 
(2)ボーナスの使いみち
旅行(年に1回)5万円、生活用品・衣類などの買物5万円、クルマの車検費用4万円(年割り)、残り貯蓄
 
(3)保険の保障内容について
団体定期保険(基本死亡保障100万円、災害死亡100万円、入院1000円)=保険料1000円 
 
(4)定年と退職金について
定年65歳、再雇用で70歳まで勤務可。70歳までは働きたいと考えている。
退職金600万~800万円。
 
(5)趣味、日々の楽しみ方
車で近距離にある日帰り温泉施設でゆっくりするのが休日の主な過ごし方。
そこで外食などをする。基本インドア派なので自宅でYouTubeなど見ていることが多い。結果あまりお金を使わない。また、今は仕事にやりがいや楽しみを感じている。
 
(6)ご実家と相続について
両親は健在。札幌市に戸建てを所有しているが、どちらかが他界したら売り払って小さなマンションを購入するか老人ホームに入るのが両親の希望。小さなマンションを購入した場合、勤務に影響がなければそこに住めと両親からは言われている。どちらにしても、弟がいるので、資産は折半になる。
 
(7)老後の生活について
理想は、健康であればクルマいじりが好きなので、田舎でガレージ付きの一戸建てを可能なら60歳頃に買いたい。その場合、どの程度の予算で購入可能かも教えてほしい。ちなみに自宅を購入すると家賃補助(月6000円)がカットされるとのこと。ただ、体力的にそれがきびしいなら、都市部(札幌など)に住みたいと考えている。
 
(8)結婚について
相談者コメント「まったくしたくない、と言えば嘘になります。ただお互いを尊重しあえる相手を見つけられる気がしませんので日々現実を送っている結果独りで過ごしている、そんな感じです」
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 住宅購入を10年「前倒し」してみる
アドバイス2 物件価格1800万円を現金で購入
アドバイス3 貯蓄の一部はiDeCo利用で節税を
 

アドバイス1 住宅購入を10年「前倒し」してみる

北のバス運転手さんが悩まれているのは「その後のお金の考え方ができない」とのことですが、それはつまりは貯蓄のモチベーションが見つからないということだと思います。
 
これまでコツコツと着実に貯蓄を積み上げられ、目標とする1000万円も見えてきました。その目的はたぶん、漠然とでしょうが「老後に備えて」ということだったと思います。夫婦で2000万円必要なら独身は1000万円、とは実際にはいかないのですが(独身の方が一人あたりの生活費が割高傾向になるため)、ともあれ大台も間近というのは立派です。無駄のない家計管理の賜物です。では、この先はどうすべきか……。
 
老後に向けて描く生活について「田舎でガレージ付きの一戸建てを可能なら60歳頃に買いたい」とのこと。60歳といえば20年近く先の話ですから、まだまだ不確定な要素も多く、明確な目的にはなりにくいかもしれません。しかし、考えてみれば老後もそのくらい先の話です。これを次の貯蓄の目標として考えてみてはどうでしょうか。
 
さらに、これは提案なのですが、購入時期を60歳頃といわず、50歳頃とされてはどうでしょう。「クルマいじりをする体力がその頃にないなら、生活に便利な都心に住みたい」とあります。ならば10年前倒しで、その目標を達成すれば、より長く、かつ元気なうちに、望まれている生活を送ることができます。加えて、ゴールが時期として近い方がより現実味があり、モチベーションにもなりやすいはずです。
 

アドバイス2 物件価格1800万円を現金で購入

では、実際に試算をしてその可能性を考えてみましょう。
 
現在の貯蓄ペースは月9万円とボーナスから55万円ですから、年間163万円。これを10年間継続すれば1630万円。今ある貯蓄と合わせて、手持ち資金は2480万円となります。このとき51歳ですが、住宅購入に際してローンを組むことも可能です。しかし、50代からのまとまった額の負債は、できれば抱えたくありません。超低金利ですが、支払利息も発生します。
 
したがって、現金で購入します。物件価格の目安は1800万円。想定されている「田舎」がどの辺りか、またその地域の物件価格も不明ですが、一人暮らしの中古物件であれば、現実的な金額ではないでしょうか。
 
実際に1800万円の物件を購入しても、諸費用(登記費用、売買手数料、引っ越し費用など)が別途発生しますので、総費用は2000万円近くかかるでしょう。結果、手持資金の残りが500万円とします。これまで貯めてきたものが一気に減る心細さは感じるかもしれません。しかし、勤務先は定年65歳で、70歳まで勤務が可能。あと20年、収入が得られる。これは大きなプラス材料です。
 
生活費として家賃の支出がなくなると同時に、家賃補助6000円がなくなりますので、負担減は3万3000円。一方新たな支出として、固定資産税と、新生活で水道光熱費や趣味にかける費用もアップするかもしれません。それらを考慮して実際の負担減を1万円とすれば、貯蓄ペースは月10万円となります。年間貯蓄額は175万円。51歳から65歳まで14年間で、2450万円。手持資金500万円に退職金を700万円とすれば、計3650万円。この時点で公的年金の支給開始となります。今の生活費から考えて、年金だけでほぼ生活費をカバーできるか、不足分は多くても月額3万円程度でしょう。老後資金としては十分だと考えます。
 

アドバイス3 貯蓄の一部はiDeCo利用で節税を

もちろん、親御さんや実家の相続のこともあり、実際に10年後に住宅購入するかどうかはわかりません。ご結婚の可能性もゼロではないはず。ただ、どちらにしても、今の貯蓄ペースを今後もほぼ維持されると思いますし、維持できれば、購入が十分可能ということで、気持ちの持ち方も変わるはずです。
 
また、具体的に移り住む場所や、住宅についていろいろ調べる時間も十分にあります。それにより、より自身に合った購入プランに近づくと思いますし、それもまた楽しい時間なのではないでしょうか。
 
加えて、先の試算は現金購入でしたが、老後資金の準備という点ではまだ余裕があります。したがって、もしも、購入したい住宅が1800万円を超える場合、あくまで手元に500万円は残すと決めて、不足部分はローンを組んでもいいでしょう。ただし、返済期間は10年以内にしてください。例えば金利1.5%、借入額300万円、返済期間10年だと、毎月の返済は2万7000円ほど。現在の家賃から考えて、さらに住宅購入後の補修・リフォームも考えると、ローン負担はこのくらいが上限でしょうか。
 
最後に家計管理について。あらためて言うまでもありませんが、保険も含め、無駄が一切ありません。逆に、食費はこれで足りているのか、心配になるほどです。無理はされてないと思いますが、食費はあまり削らず、健康増進に努めてください。
 
それと、貯蓄のうち、一部をiDeCo(個人型確定拠出年金)の積立に回してはどうでしょう。運用のイメージがありますが、元本保証の商品での積立も可能です。その大きな利点は、掛金が全額所得控除の対象になるということ。結果、所得税、住民税が確実に軽減されます。iDeCo口座を開設等のコストはかかります(金融機関によって金額は異なります)が、それを支払っても十分メリットがあります。
 
掛金の上限は、勤務先の企業年金等の有無によって異なりますが、それがなければ拠出限度額は月額で2万3000円。また、老後資金づくりに特化した制度のため、掛金の引き出しは60歳以降になります。それでも、貯蓄ペースも高く、資金的に余裕がありますから、そこは気にしなくてもいいでしょう。
 

相談者「北のバス運転手」さんから寄せられた感想

ありがとうございます、じっくりと読ませて頂きました。先生から支出に無駄が無いと仰って頂き、お金を使うことについては問題はないがお金の動かし方を勉強するように言われた気がします、確かにそう思います。具体的な金額を教えて頂き、且つこれからの生き方を指南していただいたのでモチベーションが上がりました。手元に500万円置いておけば良い、という一つの目安を前提にし50歳を迎える10年後を目処に理想の場所を見つけられるよう日々過ごそうと思います。食費についてですが世間はもっと使っているんだな、というのが率直な感想です。私としてはまぁまぁ使っているつもりだったのですがこれからは少し良いものを選んでみます。iDeCoは知っていたのですが自分には必要無い、と捨て置いていました。深野先生がメリットあると言い切られているのですぐ調べます。今回の相談ですが他の方は家計のやりくりをどう凌いでいくか、という内容が多いので相手にされないと思っておりましたので、お返事が来たときは驚きました、お付き合い頂き本当にありがとうございました。お金に関するデリケートな相談は知人にはできないのでとてもスッキリした気分です。重ねて御礼申し上げます。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん

 
 

 

マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など



取材・文/清水京武

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