亀山早苗の恋愛コラム

夫を置いて母子旅行するのは身勝手か? ママ友たちに陰口を叩かれて

夫婦のありよう、家族のありようはさまざま。自分と違う価値観をもっているからと他人を悪く言うのは、お門違いというものだ。ところが、「出る杭は打たれる」のは、いつでもどこでもあり得るようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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夫を置いて母子旅行はダメ? ママ友たちの嫌味が…

ママ友の嫉妬

夫婦のありよう、家族のありようはさまざま。自分と違う価値観をもっているからと他人を悪く言うのは、お門違いというものだ。ところが、「出る杭は打たれる」のは、いつでもどこでもあり得るようだ。

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母子旅行を楽しんできたら

コロナ禍で、この夏はどこにも行けなかったという人は多いだろう。マユミさん(45歳)もそのひとり。毎年夏は家族旅行をするのだが、今年は近場の遊園地さえ行けなかった。

「そこで今月の初めに、子どもたちと3人で3泊旅行をしてきたんです」

1日だけ学校を休ませるため、担任の先生にも相談の上だった。

「当初は夫も行けるかもと言っていたんですが、仕事が忙しくてとてもじゃないけど行けないということに。まあ、私は夫がいてもいなくてもかまわないので(笑)、母子3人、気楽な旅になりました」

マユミさんは結婚して16年、同い年の夫との間に14歳と12歳の娘たちがいる。特に上の子は少し父親をうっとうしく思う年代、だからこそ女3人の旅行を楽しみにしていたという。

「旅立つ前夜、夫だけが『みんながいないとさみしいなあ』と言っていましたが、私と娘たちはニコニコでした」

そして3人での旅行は、確かに楽しかったという。娘たちの成長も直に感じられた。

「上の子が歴史好きなので京都へ行ったんです。いろいろなところで私と下の娘に解説してくれて。目が輝いているんですよね。やっぱり好きなことがあるってすごいなあと感動しました」

布や裁縫が好きな下の娘も、端布屋さんで大興奮しており、女3人は最後にあわてて留守を守る父へのお土産をあたふたと駅で買って新幹線に乗り込んだという。

「家に戻ると、夫は帰ってきていて、そこから娘たちがお土産話で盛り上がって……。どこか夫を避けていた長女が、やけに夫と歴史の話で盛り上がっていたのが新鮮だしうれしかった。たまには夫を置いての旅行もいいものだなと思いました」

マユミさん一家には、むしろ刺激となったのかもしれない。夫も数日ぶりに会った娘たちの話を楽しそうに聞いていた。

 

ママ友たちに促されて

その後、マユミさんは近所のママ友たちにいろいろ旅行のことを聞かれた。

「なかには、『どうやってだんなさんに許してもらったの?』と言う人がいてびっくりしました。子どもたちと旅行をするのに、“夫の許可”がいるの?と私が聞き返してしまって。子どもたちとの旅行は楽しいよと言ったら、仲のいいママ友まで、『いやあ、私はだんなさんが稼いでくれているときに旅行は無理』と言われました。『あなたは働いているから、そんな勝手なことができるのよ、いいわねえ』なんてイヤミまで。働いているといってもフルタイムじゃないですしね、私」

夫に食べさせてもらって養ってもらっている身の上で、子どもたちと旅行するなんて勝手だ、と世の中の妻たちは本気で思っているのだろうか。それとも単なるイヤミなのか。マユミさんは悩んでしまった。

「それから数日後かなあ、夫が苦笑いしながら帰ってきたんですよ。どうしたのと聞いたら、『お宅が離婚するという噂があるんだけど……』と近所の奥さんに言われたそうです」

マユミさんが住んでいるのは、とある地方の小さな市だ。夫ともどもこの地の出身なのだが、ふたりとも大学から東京で暮らしていた。結婚して子どもが生まれて、ふたりは7年前、上の子が小学校に上がるタイミングでこの地に戻ってきた。

「東京暮らしが長かったから、隣近所のことまでよく知っている故郷はちょっと窮屈なんですよね。今回の旅行のことで、よけい生活しづらいなあと痛感しました。まあ、他人が何と言おうと別にかまわないんですが、『やっぱりお宅は違うわね』と言われるのがなんとなくモヤモヤしますね」

夫抜きの母子旅行は、そんなに珍しいことなのだろうか。そしてそんなにいけないことなのだろうか。

「養ってもらっているという言い方もひっかかりましたね。たとえ専業主婦だって、自分の役目は果たして分業しているわけで、お互いを尊重して、そういう役割分担をしているだけのことでしょ。ママ友にそれとなく言ってみたら、『でもやっぱりすべてに夫の許可がいるわね、うちは』と言われました。夫の許可、ねえ。大人なのだから、そのあたりはお互いに敬意を払っていれば、許す許さないという問題ではないと私は思うんですけどね」

いろいろな考え方があるだろう。同じだけ稼がなければ、言いたいことも言えないとなると男女の賃金差が激しいこの国では、女性に発言権がなくなってしまう。正社員なら夫の許可はいらないのか、夫より稼いでいたら夫を従わせるのか。すべて「稼ぎ」が人生の中心になるのか。おかしなことだらけだとマユミさんは思っている。

「うちはうち。そう思うしかありません」

少し困ったような表情で、彼女は無理に笑顔を作ってみせた。


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