亀山早苗の恋愛コラム

これはもう愛じゃない、たぶん執着…。結婚後の失恋を引きずる43歳

妻であろうと母であろうと、恋に落ちてしまうことはある。そしてその恋を失ったとき、独身時代よりずっと深く執着してしまうと話す女性は少なくない。結婚後の恋は、独身時代の恋より深さが違うからだろうか、あるいは他に理由があるのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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家庭があっても恋に執着してしまうのはなぜ?

失恋

妻であろうと母であろうと、恋に落ちてしまうことはある。そしてその恋を失ったとき、独身時代よりずっと深く執着してしまうと話す女性は少なくない。結婚後の恋は、独身時代の恋より深さが違うからだろうか、あるいは他に理由があるのだろうか。

 

彼から突然、別れを告げられて

4年つきあった彼と別れて3ヶ月になるというフミカさん(43歳)。結婚して14年、中学1年の長男と小学校4年の次男がいる。

「夫とはもともと大学時代の同級生で、ずっと友だち関係だったんです。ふたりとも30歳という区切りが見えてきたころ、なんとなく意識しあって急接近、つきあってすぐに結婚しました。周りの友人たちが、『え、つきあってたの?』と驚いたくらい。友だち関係が10年以上、交際期間は数ヶ月という感じなんです」

わかりあっているだけに大きなトラブルが起こったためしはない。ふたりで働き、そのつど話し合いながらふたりで子どもを育ててきた。

「私はとにかく夫をこの世でいちばん信頼しています」

それなのに彼女は恋に落ちた。確かに久々に、いや、もしかしたら人生で初めて体の奥からわき起こった情熱だったという。

「好きで好きでたまらない。そんな思いは初めてでした。彼は5歳年上。仕事関係で知り合って、その仕事が終わったときに、もう会えないと思ったらさびしくて。その気持ちを彼にLINEで伝えたら『僕も同じです。明日からどうやって生きていこうかと思うくらい』と返事がきて。お互いに気持ちを確かめ合えたと思いました」

そこから関係が始まった。ふたりとも家庭があるから、会いたくても会えないことも多かった。それでも恋心は冷めない。むしろ燃え上がるばかりだった。

「それなのに彼から突然、別れを言われたんです。はっきりした理由はわかりません。『あなたのせいではない、今も大好きだよ。だけど家庭の事情で……』ということでした。私はいつまでも待ってると言ったのですが、それには答えが返ってこなかった」

ベッドを並べている夫婦の寝室で、彼女は毎晩、声を押し殺して泣いた。一時期は食事を作ることさえできず、夫が作ってくれたものも食べられなかった。夫も子どもたちも心配して病院へ行くようしつこく言われたという。

「妻が、母が失恋して眠れない食べられないんですよ。それを家族は心配してくれる。申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。でも私から彼をとったら生きている意味がない。家族への愛情が減ったわけではないんです。彼への思いが抜けないんです」

フミカさんはせつせつと訴える。

 

毎日、彼にメッセージを送ってしまう

彼女は別れたことを納得していない。だから毎日、彼にメッセージを送っている。朝昼晩の3回。ほとんど挨拶程度の短いものだ。彼からは返事がくる。やはり挨拶程度。

「いつになったらこれをやめられるんだろう。そう思いながら送らずにはいられないんです。彼のほうは私が混乱したり、会社に乗り込んできたりしないよう、適当につきあっているのかもしれません。私だって彼の意図は感じています。だけど返事が来るということは、まだ私への気持ちが残っているんじゃないかと思ってしまう。いえ、そう思いたい」

独身時代、短期間だが恋人らしき存在がいたことがある。彼女は彼のことが大好きだったが、あっさりとフラれた。だが彼女はまったく彼を恨まなかったし追いたいとも思わなかった。夫は浮気などしないと信じているが、たとえしたとしても悲しいと思うが嫉妬はないのではないかと想像しているそうだ。

「だけど彼は別。彼の奥さんに私は猛烈に嫉妬していたし、今だってきっと奥さんが彼を縛りつけているんじゃないかと思っています。私から彼を奪わないでほしい」

今も彼女は、突然、ボロボロ泣いたり落ち込んでうずくまったりすることがある。職場でも休憩時間や昼休みにぼうっとしていて、同僚からからかわれたりもした。

「早く立ち直らなくてはと思うあまり、私、彼に会いに行ってしまったんです。彼の好きなものをつめてお弁当を作って会社に持っていきました。会社の前から連絡したけど、彼は来てくれなかった。翌日、彼から『昨日は代休をとっていたんだ、ごめんね』って。だけど本当は会社にいたのではないかと私は思っています」

それが彼の“答え”なのだとわかっていても、まだ彼女はあきらめる気になれないのだという。

「これはもう愛じゃないと自分でも思うんです。きっと執着。だけどどうしてこんなに執着しているのか、彼がいないとこれほど不安定になるのはなぜなのか。わからないんです。だからつらくて……」

孤独でたまらない、さびしくてたまらないと彼女は涙をためた。時間がたてば胸を締めつけられるような生々しい痛みも薄らいでくるかもしれない。だがそのときがいつ来るのか、このまま彼との挨拶程度の関わりを続けていいのか、彼女は毎日悩んでいるという。

恋を失うと、それを得なかったころには戻れない。だが、おそらくそれも含めて「恋」なのではないだろうか。
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