亀山早苗の恋愛コラム

「夫の不倫」は妻の責任なのか? 相手の両親に責められ慰謝料まで…

有名人のケースではあるが、夫の不倫が発覚すると妻が出てきて釈明するケースが多々ある。一般の社会においても、そういったことはあり得るのだろうか。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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妻はどこまで夫に対して責任をとるべきなのか

妻の責任

有名人のケースではあるが、夫の不倫が発覚すると妻が出てきて釈明するケースが多々ある。スポンサーや仕事関係者への謝罪という側面があるのだろうが、夫の不始末に対して妻が表に出てくることに釈然としない思いを抱いている人も多いようだ。一般の社会においても、そういったことはあり得るのだろうか。

 

夫の浮気が発覚して

2年前、夫の浮気が発覚、相手は独身女性でその両親と揉めたことがあるというのはチナツさん(44歳)だ。2歳年上の男性と結婚して15年、中学生と小学生の子どもがいる。

「夫は3年にわたって不倫をしていたんです。相手は会社にアルバイトで来ている14歳年下の女性。当時、夫が44歳、彼女は30歳でした。彼女が27歳のときからつきあっていたわけです。どうやら下の子が小学校に上がった直後くらいからの関係だったみたい」

関係がわかったのは夜中に頻繁に彼女から連絡がくるようになったことからだ。夫はそのたびにぎょっとしたような顔をする。

「夫はいい年してけっこう軽いところがある(笑)。私はすぐにネガティブに重くものごとを考える傾向があるから、その軽さに助けられたこともたくさんあります。ただ、まさか不倫まで軽くしちゃうとは思っていませんでした。家族思いだったから……」

家族思いであることと浮気をすることとは、どうやら夫の中では別の話だったようだ。

決定的だったのは2年前、下の子の誕生日に家族でお祝いをしているときに夫に電話がかかってきたことだった。夫は電話を受けるとあわてふためいたように「ちょっと出てくる」と出かけていった。そして子どもたちが寝るまで帰ってこなかったのだ。

「夜中に帰ってきた夫に、ずっとおかしいよ、そろそろ本当のことを話したほうがいいんじゃないのと声をかけたんです。すると夫は怯えながら、実はつきあっている人がいて別れ話をしたら彼女が死ぬと騒いで……と話し始めました。そのときは彼女が精神的に不安定になっていることのほうが怖くて、夫を責めるよりどうしたらいいかと話し合いました」

彼女が実家住まいだったので、親御さんの協力を得たほうがいいということになった。だが夫が出ていけば彼女の神経を逆なですることになる。そこでチナツさんが彼女の両親に連絡をとることにした。そこから妻は完全に夫の不倫に巻き込まれていく。

 

相手の両親に責められて

本来、被害者は妻であるチナツさんのはず。ところが相手の両親は「離婚協議中だと聞いている」「夫婦関係は破綻していると娘は思っていた」と言いつのる。

「夫に聞くと、彼女の関心を惹くために『夫婦関係はうまくいっていない』というようなことは言った、と。だけど離婚するつもりがあるとか離婚協議中だとは言ってないというんですね。おそらく彼女も両親の手前、結婚できる相手だとアピールしたかったのでしょう。あるいはそう思い込んでいたのかもしれません。いずれにしても悪いのは夫。ただ、相手の両親から『だんなさんが女性に走ったのは、あなたにも責任があるんじゃないですか』と言われました。それを否定してもしかたがないし、そのときは私も夫の不始末は妻の責任だと感じました」

それは夫婦は一心同体ということなのだろうか、あるいは夫を子どものように思っているからなのだろうか。

「家族としての情ですかね。家族だからこその連帯責任みたいな感覚はあります。突き放すわけにもいかないというか」

結局、相手の両親と話し合い、チナツさんは彼女に慰謝料を請求しない、夫は彼女とは別れるということでお互いに納得したという。

「最初はあちらが慰謝料を請求すると言い張っていたんですが、法律的には妻のほうが立場が強いですよ、と説得しました。法的な争いはしたくなかったので。あちらのお父様は社会的地位もある方だったので、最終的には穏便にすませましょう、と。半年以上かかりましたよ。最後、ようやく夫も一緒にご両親に謝罪。自分でも粘り強くがんばったなと思います」

彼女はアルバイトを辞めたが、やめるとき同僚に彼との関係をしゃべったようで、夫はその後、上司にこってり説教されたという。

「ヘタすれば左遷だったと落ち込んでいました。社内で若い女性に手をつけるなんて最低だよと私も思いきり言ってやりました。その後、夫は『チナツに大変な思いをさせて申し訳なかった』と謝ってはくれましたが、浮気そのものについてはあまりきちんと話し合っていません。まあ、今は日常生活をスムーズに送りたいので、険悪になるのを避けているところはあります」

とはいってもチナツさん、どこか浮かない顔だ。気持ちがすっきりはしていないのだろう。

「一般的には出過ぎたまねをする妻になるんでしょうね、私がしたことは。でもあの状況では夫が出ていくよりはよかったと思います。うちの場合はね。夫に対する気持ちは、今は封印している感じです」

すべては棚上げ。これからの経過を見て、そして子どもたちの成長を見ながら夫婦がどうあるべきか、どうなっていくのか、チナツさんは考えていくつもりだと言った。
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