産後うつとは……気持ちだけでは解決できない産後の精神症状
産後うつは誰でもなる可能性があります。赤ちゃんに愛情が感じられないとしても、母親失格などと自分を責めないでください
「自分は長く辛い不妊治療をしてまで子供を欲しいと思っていたのに、子供を可愛いと思えない……。母として失格だと自分を責めてしまいます。自分が望んで積極的に治療を受けて授かった経緯もあるので、周りに甘えることもできません」といったお話を伺ったときには、個人の力や思いだけでは防ぐことができない産後うつの難しさを感じました。
待望の妊娠でも産後うつに深く悩まされてしまうということは、気持ちとは全く別の、ホルモンの状態や周りに甘えられない環境など、様々な背景が関係して起こるということです。産後うつについて正しく知り、決して自分を責めたりせず、上手く乗り越えていきましょう。
産後うつの主な症状……疲労感・不眠・イライラ・愛情を持てない
産後は出産による身体的なダメージや疲れを抱えた状態で、慣れない赤ちゃんのお世話に追われることになります。心身ともにそれまで健康な人でも大変に感じる時期だと思いますが、産後うつの主な精神的な症状としては、以下のようなものが挙げられます。- 疲労感、不眠
- 不安、緊張、パニック
- イライラする
- 希望を持てない
- 集中力や記憶力が弱くなる
- 気分が変化しやすい
- せかせかする
- 興味に欠ける
- 自分を責める
- 自分を情けなく思う
- 食欲がなくなる
- 子供や夫に愛情を感じなかったり、 持てない
産後うつの養生法……産後1ヶ月~1年に重要な生活のポイント
産後慌ただしく生活する中で、「自分はうつかもしれない」と本人が気付くことは難しいと言われています。特に、慣れない育児の中で頼れる人が周りにいない場合などは、疲労も重なるので、疲れているだけだと思い込んでしまったり、気持ちの不調を感じることに対して周りの理解が得られず「母親失格」と言われてしまったという相談もありました。大切なのは専門機関に相談することですが、実際に追い込まれてしまっている状態ではハードルが高いとも言えるでしょう。
漢方医学では、女性は出産によって多量の「気(生命エネルギー)」と「血(血液を含む体の栄養素全般)」を消費するため、「気虚(エネルギーの低下)」と「血虚(栄養の不足)」が現れると考えられています。気血が消耗する産後に精神疾患が発生することは漢方医学では当たり前のことと捉えているため、産後1年はしっかりと養生に取り組むことが大切だと考えられています。特に産後1ヶ月は、できるだけ横になることで「気」を養い、栄養価の高い食事により「血」を増やし、母乳の分泌を促す・目を休める(スマホやPC、テレビから離れる)ことなどが勧められています。
また、産後3ヶ月にかけてメンタルの不調が出やすい時期になるので、少しの時間でも休息が取れるように家族の理解が必要です。家族のサポートだけでは足りない場合は、公的な機関やシッターサービスなども含めてサポートを検討しましょう。
産後うつからの回復には、適切なケアと周りの理解が重要
産後うつの症状や、経過は様々ですが- 専門家の適切なケアを受けること
- 周りに理解をしてくれる方がいること
産後うつの症状は、「気持ちが弱い」とか「我慢が足りない」などという心の持ちようではありません。実際に体の中で起きているホルモンバランスの大きな変化や、栄養不良など体の不調が関わっていることが多いです。
「もっと頑張ろう」と追い込むことは、回復を遠ざけてしまうことがあります。身近に理解のある方がいない場合には、産後間もないママが自ら声をあげることは難しいかもしれません。しかし、ご自身のためにも、生まれてきたお子様・ご家族のためにも「産後うつかもしれない」と感じた際には
- 産後の健診先
- 地域の保健センター、保健精神福祉センター、子育て支援センター
- 精神内科、心療内科