亀山早苗の恋愛コラム

コロナ禍で考えた「私が生きている意味」、そして気づいた怒りの正体

「夫に対するイライラが止まらない」。そんなふうに言う女性たちは少なくない。夫へのイライラは、もしかしたら自分へのイライラなのかも、と気づいた女性が話を聞かせてくれた。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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コロナ禍で考えた「私が生きている意味」とは……

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「夫に対するイライラが止まらない」。そんなふうに言う女性たちは少なくない。夫へのイライラは、もしかしたら自分へのイライラなのかも、と気づいた女性が話を聞かせてくれた。

 

自分と違うやり方にイラつく

「このコロナ禍で夫が家にいることが多くなりました。夫は特に強権発動するようなタイプではないんですが、でも夫がいることじたい、意味なく圧を感じるわけです(笑)。新婚当時は一緒にいたくて、会社休んで一緒にいてなんて言ってたのに」

苦笑しながらそう言うのは、チアキさん(43歳)。2歳年上の男性と結婚して14年、小学校6年生の長女と3年生の長男がいる。

「自分では大恋愛だと思って結婚した相手なんです。それが14年のうちに徐々に愛情がすり減っていった。今年に入ってから、ずっとそんなことを考えていたところにコロナ禍で、夫が家にいる時間が増えた。積極的に家事をやる人なんですが、それがことごとく私のやり方と違う」

たとえば洗濯物の干し方、皿の洗い方、皿をしまう場所など、チアキさんが14年間、積み重ねてきたものを、夫が否定しているような気持ちになったそうだ。家事のやり方など、人それぞれ。結果的に洗濯物はきれいに乾けばいいし、皿もきれいになっていればいいだけ。それなのに、チアキさんは自分のやり方に固執して、夫に文句を言い続けた。

「あるとき夫が、『きみが何をイライラしているのかわからない。自分がいつでもいちばん正しいと思い込んでいるんじゃない?』と言ったんです。そのときはなんだかすごくむかつきましたけど、考えてみたら確かにそうかもしれない、と」

本当は結婚しても出産しても働きたかった。だが、チアキさんも夫も地方出身で頼れる親戚もいない。下の子には先天的な病気があり、小学校に入るまでは入退院を繰り返していた。そんな状態では仕事を続けられなかったのだ。

「それでも夫は、どちらかが仕事を辞めるしかないねと言ったんです。私に辞めろと言ったわけではない。ただ、先々のことを考えれば夫のほうが生涯収入は高い。それで私が辞めたんです」

長男は小学校に入るとめきめき丈夫になった。いちばん大事な子どもが健康になったことで満足していたはずだったのに、数年たつと、「本当は働いていたかった」と未練がましく思うようになったのだという。

 

自分の居場所が見つからない気持ちに

「パートで働こうと思うと言ったとき、夫が『無理しないようにね』と言ったんです。そのひと言がひっかかって……。夫は家事や子どもの生活に支障がなければ働いてもいいよと思っているのだろう、と。私は結局、家族のために自分を犠牲にするしかなかった母親世代と同じ生き方しかできないのかとも思いました」

周りを見れば、仕事と家庭を両立させて、家族仲良く楽しい生活を送っているように見える女性たちばかり。パートで働いても、ここが自分の居場所だとは思えなかった。愚痴をこぼすと、夫も子どもたちも「働かなくてもいいじゃん」と言う。

「誰も私のことを理解してくれないと被害妄想に陥っていきました。そんな気持ちの中、コロナ禍でパートは雇い止めになってしまい、夫は家にいる……。なんだか追いつめられていきましたね」

今年8月の女性の自殺が前年同月比で40%も増加したという報道があった。経済的にも精神的にも追い込まれている人が、もともと多くいたのだと思う。女性の貧困、シングルマザーの困窮も話題になっていた。精神的にも、女性たちの生きづらさが浮上しているときに、コロナ禍に見舞われた。それまで「ごく普通の家庭」だと思っていた人たちにも、家族のひずみ、歪みなどが見えてきたのかもしれない。

「あんなに好きだった夫を、当時のような気持ちで愛せない。自分がプライドをもってやってきた家事を、夫が違うやり方でこなしていることに、私が否定されたような気持ちになった。仕事もなくなり、家だって私がいなくても夫と子どもだけでやっていける。じゃあ、私のいる意味は何なの、と考え込んでしまったんです」

本を読んだり自分の気持ちをノートに書いたりして考えた。今まで深く考えたことのないテーマだったという。

「気恥ずかしい思いはあったんですが、あるとき、夫に全部ぶちまけてみたんです。そうしたら夫は、『こういう事態になって、それはオレも考える』って。残業代も減り、家計を握るチアキに大変な思いをさせてると感じているし、夏の家族旅行もできなかった。会社にとって、家族にとってオレはどういう存在なんだろうって思ってた、と。そういう話をしてくれてありがとう、なんて感謝されちゃいました」

自分の存在意義、などという大きくて深い話は、夫婦の間ではなかなかできない。もちろん答えは出ない。だが、チアキさんは夫と、「互いに大事な存在。子どもたちのために、お互いのためにがんばろう」と話し合ったそうだ。

「少なくとも、14年間やってきた夫婦関係は間違いではなかった。そう思えた瞬間でした。もしかしたら、それを幸せと言ってもいいのかな、と。私は状況や夫にイライラしていたわけではなく、自分自身にイラついていたんでしょうね」

自分の生き方を信じるのはむずかしい。だが、人はやはりひとりで生きているわけではない。それに気づいたチアキさん、「照れくさいけど夫への恋愛感情も復活した」と笑った。
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