30代、寝取るのが趣味の女友だちにモヤモヤする……
男性の前と女友だちの前とで、態度を変える女性は嫌われがち。だが実際には、女友だちとしては「羨ましい」という本音があるのかもしれない。
羨ましいわけではない
「羨ましくなんてないです」
きっぱり否定したのは、ヒロカさん(34歳)だ。彼女の友人に、エリさんという同い年の女性がいる。大学時代からのつきあいだが、エリさんの恋愛観がヒロカさんにはどうにも理解ができない。そしてふたりとも「結婚」を意識するようになったここ数年、ヒロカさんはエリさんにモヤモヤしっぱなしなのだという。
「確かにエリは男がいると態度が変わる。それは前からなので、もうそういうオンナだとあきらめています。女同士だと、かなり強く男女平等を訴えるタイプなのに、男がいると急に上目遣いになってあざとく媚びますからね(笑)。ただ、モヤモヤするのはそこじゃないんです」
ずっとそういう態度を貫いてきたエリさんなのに、このところは誰かが興味をもった男性に限り、横からさらっていくようなことが続いているのだという。
学生時代、サークルで一緒だった友人たち4人で婚活パーティや合コンに繰り出すことが増えてきた。
「私とエリが同い年、あとはひとつ年下の後輩がふたり。1年半くらい前かな、後輩がもちかけてきた合コンに行ったんですが、その子と男性グループのひとりがいい感じになったらしいんですよ。よかったじゃないと言っていたら、1週間後、エリが『あの子が狙った彼と今日はデートなんだ』って連絡してきた。いや、後輩が気にしていた男にアプローチするのはまずいでしょと思ったんですが、『そんなの早い者勝ちでしょ』と。前はいち早く誰かに積極的にいくことはあったけど、他の女性が気にしている男性にすり寄っていくことはなかった。彼女自身も焦っているのかなと思ったんですよね」
その後、後輩が彼にアプローチしたときにはエリさんはすでに彼とつきあっていた。後輩は何も知らずに落ち込んでいたという。
だからといってエリさんが彼と長続きしたわけではない。1ヶ月もするとまた別の合コンへと足を運んでいた。
「何がしたいのって私もさすがに怒りましたが、『つきあってはみたけどうまくいかなかったんだもん』と悪びれもせず言ってのけた。20代は恋愛には真摯に向き合っていたように見えたけど、30代になって考え方が変わったのか、とりあえず誰とでもつきあうと間口を広げたのか、ちょっとわかりませんでした」
多くの男性を見るのは悪いことではない。好きになる人とうまくいく人が一致しないケースもよくあることだから。
別の後輩の婚約者に言い寄って
その後も、エリさんは知り合った男性を、他の誰かが「あの人いいよね」と言うと、さっさと粉をかけるようなまねを続けていた。「意味ないからやめたほうがいいと何度も言ったんですけどね。エリって美人なんですよ。だから自分の美が男性に通じるかどうか試したかったのかもしれない」
ヒロカさんはエリさんのことがわかっているから、自分が好きになった人は言わないし、つきあうようになっても言わないことにしていた。
「ただ、去年の秋、とうとう私も被害にあってしまったんです。スポーツジムで知り合った人とふたりで会うようになったんですが、彼と勤務先が近かった。それで連絡をとりあって、『今日は会社近くで夕飯でも』ということになって。食事をしてもう一軒行こうかと繁華街を歩いていたら、本当に偶然、エリに会ってしまったんです。彼は『僕はヒロカさんの恋人です。いや、まだ候補かな』なんて冗談交じりに言った。するとエリの目がきらっと光って……」
彼に注意を促そうと思った。誘惑されても断ってね、と。だが友人を信じていないオンナだと思われたくはない。言うべきかどうか、ヒロカさんは迷って、結局、言わなかった。いくらなんでもエリさんがそこまでするとは思えなかった。
「ところがエリは、翌日、彼の会社にまで来たそうです。ばったり会ったときに彼に会社名を聞いていたからイヤな予感がしたんですけどね。その日はお茶だけして帰っていったと彼から連絡がありました。そのとき、気をつけてねってやっぱり言っちゃったんですよね」
それ以来、彼とはなかなか会えなくなった。忙しいと理由をつけては逃げるようになったのだ。やはりエリさんが何かしたのだろうとヒロカさんは考えていた。
しばらくたって、ヒロカさんは一度だけ会ってと彼に頼んで会った。彼を責めるつもりはない、エリが何を言ったのか知りたいと彼に迫った。
「彼が渋々口を開いたところによると、エリは『ヒロカは私があなたに接近するから気をつけてねと言うと思うけど、あの子こそ私の恋人をとったのよ』とさめざめと泣いたそうです。それで彼、すっかり騙されちゃった。そういうことか、と私は彼への気持ちが一気に冷めました」
その数ヶ月後、彼から連絡があった。やはりエリさんとつきあい始めて、本気になったところで手ひどくフラれたという。
「あの子は寝取るのが趣味なだけなのよ、見抜けなかったあなたがバカなのって言ってやりました」
その後、何もなかったかのようにエリさんから連絡が来た。
「ごめんね、でもあの男、たいしたもんじゃなかった、ヒロカがつきあわなくてよかったよって。私、怒ってるんだけど、彼女は私が怒ってるなんて思ってないんですよね。それでまた飲みに行こうよなんて誘われて。どこか彼女がかわいそうな気がして、たまにつきあっているんですが、周りから見ると、『どうしてあんなことされてつきあっていられるの』と言われてしまう。モヤモヤしながらつきあう私がいけないんですが、バッサリ斬れないんですよね」
同い年、周りの同世代はどんどん結婚していく中、エリさんに感じる親近感もあるし、自分が見捨てたら彼女はどうなるのだろうという不安もある。
女同士の腐れ縁なんでしょうか、とヒロカさんは苦笑した。