亀山早苗の恋愛コラム

私がヘンなの? 子をもつのは「人間として当然」と夫は言うけれど

結婚したら自然に任せて子どもができ、子どもをもつのが当然だとも思っている人がいる一方で、パートナーがいることと子どもをもつことは別だと考える人もいる。よしあしの問題ではなく、どんな人生を歩みたいか、何を重視したいかということだろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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子どもがほしい夫とほしくない私、長年のバトルからついに別居

子供が欲しくない妻

結婚したら自然に任せて子どもができるものであり、子どもをもつのが当然だとも思っている人がいる。一方で、パートナーがいることと子どもをもつことは別だと考える人もいる。よしあしの問題ではなく、どんな人生を歩みたいか、何を重視したいかということだろう。

 

子どもはほしくないと言ったのに

女性が「子どもは好きではない」とか「子どもをもつつもりがない」と言うのは、今の時代であっても勇気がいる。世間は、女性は子どもが好きで当然、女なら誰でも母親になりたがっている、女性は好きな人の子を産みたいものだと思い込んでいるからだ。

「私も夫とつきあっていって、だんだん結婚という雰囲気が出てきたとき迷いました。私は子どもをほしいと思っていなかったし、育てることもできないと思っていたので。夫のほうはデート中に子どもを見ると、自然と顔がほころんで『かわいいよなあ、子どもって』と言うタイプ。早めに彼には本心を伝えたほうがいいとは思っていました」

そう言うのはマキコさん(40歳)だ。29歳で知り合った3歳年上の男性と3年間の交際を経て結婚した。彼女が子どもはほしくないと伝えたのはつきあって2年ほどたったころ。彼が結婚の話を持ち出したので、ちょうどいいと思ったそうだ。

「私は子どもを望んでないから、あなたが子どもをほしいなら私と結婚しないほうがいいと思うと言いました。彼はけっこうショックだったみたい。急に黙り込んでしまって。その後、『子どもがほしくない理由はなに? 仕事をしていきたいから? めんどうだから?』と矢継ぎ早に聞いてきました。私が育った家庭は、両親が不仲で……。子どもの身としては、長い時間一緒にいるから母親の味方になるし、母親からの刷り込みもいろいろある。だから悪いのは父だと思っていたんです。でも大きくなってみると、父も母もどっちもどっち。ふたりとも子どもにきちんと向き合おうとはしていなかった」

マキコさんはひとりっ子だったので、会話のない両親にはさまれて食事をとるのが苦痛だった。母は彼女に学校であったことなどを話すよう求めてくるが、話したところで父も母もろくに聞いていないのはわかっていた。

のちのち、彼女は両親がそれぞれ外に恋人を作っていたと知る。自分がいなければ父も母も好きなように人生を歩めたのではないかと考え、消えてなくなりたいと思っていた時期も長かった。

「それでも高校、大学、社会へと進むうち、大事な友だちができたり好きな人ができたりして、生まれたことを呪うような思いは薄れていきました。ただ、自分が子どもをもつのだけはどうしても受け入れられなかった」

はたからみれば、高学歴で容姿にも恵まれたマキコさんだが、内面はいつも孤独の塊を抱えていた。

 

彼にはわかってほしかった

そんな話をすると、彼は「わかった。じゃあ、子どもがいなくてもいい。オレはマキコと一緒にいたい」と言ってくれた。彼女も彼と過ごす時間が楽しいと思えたし、穏やかな彼が好きだったので結婚を決めた。

「最初はふたりで楽しくやっていたんです。結婚して1年後には拾ってきた子猫を飼うことになって、ふたりとも子猫に夢中になりました。そうしたら彼が『ねえ、やっぱり子どもがほしいと思わない?』と言い出した。私は子どもをほしくないと言ったし、彼はそれに同意したはずなのに。すると彼、『いつかマキコの気持ちが変わると思っていたんだ。こんなに子猫に愛情を注げるんだから、自分の子だったらもっとかわいいよ』と。猫と人の子を一緒にするのもどうかと思ったし、猫は私のDNAを受け継いでいないし」

彼女は苦笑しながらそう言った。自分の子をほしいと思わない女性を、彼はヘンだと思っているのだろうかという思いがよぎる。

「彼に聞いてみたら、やはり『最初は子どもがほしいと思わなくても、結婚したらほしいと思うようになるはず。だから結婚してしまおうと思った』と認めました。そして結婚生活を続けても子どもをほしがらない私は、どこかがヘンだと」

彼女がそうなったのは育った家庭だけのせいではない。理由はわからないが、子どもが苦手だし、人の命を委ねられる怖れを受け止められなかったのだ。それはもって生まれた性格ゆえなのかどうか不明だが。

そのときは彼もそれ以上何も言わなかったが、彼女が36歳になったとき、再度、子どもをもとうと言った。彼はあきらめていなかったのだ。

「ふたりで同じ方向を向きたいと彼は言っていました。子どもをもつことが同じ方向へ歩むことになるのかどうか私には判断できなかった。そもそも、どうしてそれほど子どもがほしいのかも理解できなくて。彼は『それが人として当然だから』って」

そこから少しずつふたりの関係は崩れていったとマキコさんは言う。ほんの少しずつ、手のひらいっぱいの砂が音もなく落ちていくように。気づいたら砂はなかった。

「2年前から別居しています。私は離婚したほうがいいと思うんだけど、彼はまだ希望を探したいと言っているんです。彼にとっては、私と出会わないほうがよかったのかもしれませんね。そのほうが望むような人生を送れたんじゃないかと思う」

どちらが正しいとか間違っているとかの問題ではないだけに、聞いていてこちらも苦しくなるような話である。人は変わることもあれば変わらないこともある。どちらかが譲ればすむ話でもないからこそ、なんともせつない現状になっている。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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