アラフィフの婚活
女性の平均寿命は87歳。50歳だとあと37年もある。もちろん、健康寿命となれば話は別だが、このままずっとひとりで生きていくことを考えると絶望的な気分になり、婚活を始める女性も少なくない。
年齢差別は感じないけれど
50歳まであと1年となったのを機に、婚活に取り組み始めたのはエイコさん(49歳)。あと3ヶ月で誕生日が来てしまうが、「一発逆転を信じてがんばっている」そうだ。
そもそもエイコさんが婚活を始めたのは、天涯孤独になってしまったから。
「私、ひとりっ子なんです。私が30歳のとき父が病気で亡くなり、その数年後、母が倒れて……。それ以来、母はさまざまな病気を抱えて、60代後半からは介護も必要になりました。会社つとめをしながら私もがんばってきたんですが、とうとう私も倒れたために45歳のとき、75歳の母を施設に入れました」
そして2年前、母も亡くなり、親戚づきあいもなくなっていた彼女はひとりぼっちに。そこで初めて、強烈な孤独感を味わうようになったという。
「会社と家の往復しかしていないような生活が続いていたので、趣味も友だちもなくて。やっと母の遺品を整理して、さてこれからどうしようと思ったとき、やはり誰かにいてほしいと感じたんです」
更年期による症状も出るようになっていた。めまいや頭痛などうっとうしい体の変化に気が滅入っていく。婚活して元気になろうと決めた。
「熟年のための結婚相談所に登録して、月に1度はパーティにも出ました。お互いに年齢がいっているから、男性から年齢差別みたいな発言はないんですが、男っていくつになっても女性に求めるものがお花畑すぎると感じることは多々あります(笑)」
男性が求めるのは、やさしくて料理上手で話を聞いてくれる女性がメイン。そもそも、とある婚活パーティの場合、最初に書く自己紹介文で、男性は収入、女性は得意料理を記入する欄があったのを筆者は体験済みである。女性の収入は不要、男性の得意料理は不要なのだ。
エイコさんも、「私も経験あります、そういうの」と笑った。
「実際、男性たちは優しい女性を求めている。でもそれは母親的な何でも許す愛情であって、ともに歩んでいこうという女性の気持ちとは乖離していますよね」
お互いに孤独はさびしい、つらい。だからこそ手を取り合って一緒に進んでいきたいと願っているのだが、男性側は一方的に擁護してくれる存在を求めているような気がしてならないと彼女は言う。
後半生を充実させるむずかしさ
それでもエイコさんはめげずに婚活を続けている。「結婚してくださいと何回か言われましたが、最初のデートでそれを言うのはおかしいでしょ、ということばかり。いくら婚活だからってそんなに簡単に決めていいわけがありません。アラフィフだと60代後半の男性を紹介されるケースもあるんですが、そんなに年上は求めていないんですよねえ。むずかしいですね」
男性たちはお金で苦労はさせないとドヤ顔で言うらしいが、そもそも彼女がお金に困っているわけではない。食べさせてくれる相手を見つけたいわけではないのだ。
「まじめな顔で、親からの資産は3億あります。月々、不動産収入も50万円以上ありますから、あなたに苦労はさせません、あなたも会社を辞めていいですよと言った同世代の男性がいるんです。若くて元気なのに、あなたはどうして自分で働かないの、と聞いてみたんです。『汗かいて働いて、月に僕の不動産収入より少ないわけでしょ。バカバカしいと思いませんか』って。うーん、親の資産を継いだのはラッキーなだけであって、普通に働いている人を馬鹿にしているのが我慢できませんでしたね」
アラフィフになれば、結婚の目的は子どもではない。ただ、手を携えていけるパートナーがほしいだけなのだが、それが見つからない。
「私は定年まで仕事を続けるつもりですから、それほどお金持ちでなくてもいい。芝居や映画を観に行ったり、一緒に散歩したりする相手がほしいんです」
身近なところで見つかるのがいちばんいいのだが、時間と手間を惜しむため相談所に登録したのがまちがいだったのかもしれないと彼女は言う。
「50歳までがんばってみて、見つからなかったら方針を変えつもりです。趣味の教室などに行きつつ、同性の友人を増やしたり地域のコミュニケーションを図ったほうが心強いかもしれませんね」
“結婚”に縛られなくてもいいのだ。何かあったときに助け合える存在があれば。エイコさんもどうやらその方向にシフトチェンジしていきそうである。