亀山早苗の恋愛コラム

不機嫌妻が怖い、帰宅恐怖症の夫たち

世の夫たちに話を聞くと、多くが「妻の不機嫌が怖い」と顔をしかめる。帰宅したとき、つい妻の顔色をうかがってしまい、そんな自分を悲しく思うと言った夫も。夫たちは、妻の不機嫌の原因が自分にあるとはまったく思っていないようだ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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妻の不機嫌が怖い……帰宅恐怖の夫たち

妻が怖い

世の夫たちに話を聞くと、多くが「妻の不機嫌が怖い」と顔をしかめる。帰宅したとき、つい妻の顔色をうかがってしまい、そんな自分を悲しく思うと言った夫も。夫たちは、妻の不機嫌の原因が自分にあるとはまったく思っていないようだ。

 

ちゃんと妻の言うことを聞いているのに

「どうして妻が不機嫌なのかわからないんです。もう今は、とにかく当たらず触らず。言われることは全部ハイハイと聞いて、言われた通りにやるだけですね。子どもが小さいので、妻に従うしかありません」

苦笑しながらそう言うのは、ノブヒロさん(38歳)。1歳年上の女性と結婚して8年、6歳と4歳の子がいる。妻は時短で働いているが、彼自身もできる限りの育児、家事はやっているつもりだという。

「時間の許す限り、保育園の送迎はしていますし、帰宅後、洗濯するのは僕の役目。妻はほとんど掃除をしないので週末は掃除に明け暮れています。それなのに妻は、あまり笑顔を見せない」

夫が家事をやるのは当たり前。まだまだ不足している。妻はそう思っているようだ。

「それでも僕だってつきあいで飲みに行かなくてはいけないこともあります。予定外だけど上司に声をかけられたりしてね。そういうときはもちろん妻に連絡しますよ。それなのに妻は何度も電話をしてくる。何か起こったかとこちらからかけてみると、『まだ終わらないの? 早く帰ってきなさい』と命令口調。そもそも、こっちだっていい年の大人なのに、どうして命令されなければいけないのか。僕がイラッとくる瞬間ですね」

言い返せば角が立つ。ゴメン、早めに帰るからとその場を取り繕うしかない。そんなときは帰ると、すでに家の中は真っ暗。だったら急かさなくてもいいじゃないかと思いながら洗面所に行くと、わざとなのかシーツやタオルが山と積み重なっている。なぜ今日、シーツを洗わなくていけないのか。嫌がらせとしか思えないが、もちろん翌日、そんなことは聞けない。

「ひとこと言ったら、百くらい返ってきますから。あげく、『あなたには私の大変さがわからない』と。一度、ああ、わからないよ、きみにオレの大変さがわからないのと同じだよと言ったら、速攻で子どもを連れて実家に帰ってしまったことがあって。自宅に戻ってくるまで、両方の親まで巻き込んで大騒動になったことあるんです。あれ以来、決して逆らわないようにしています」

つきあっているころ、妻は笑顔が素敵な女性だった。いつだったか思い出話のようにそんなことを言ったら、「今はどうせかわいくも素敵でもないわよ」と言われた。それ以来、褒め言葉も発しないようにしているそうだ。

「いっそ、浮気でも不倫でもしてくれと思います。それで妻の機嫌がよくなるのなら、僕はいっこうにかまわない」

絞り出すようにノブヒロさんはそう言った。

 

妻の沈黙に耐えられない

結婚して12年、ふたりの子どもと4人家族のダイスケさん(43歳)は、ときとして黙り込む妻の態度にストレスを感じているという。

「何か傷つけることを言ってしまったのかもしれませんが、理由がわからない。妻に『オレ、なんか悪いこと言った?』と聞くと、『別に』って。その別に、が怖いんですよ。言いたいことがあったら言ってよと結婚以来、何度も頼んでいるんですが妻は言わない。文句を言わずに、何もかも完璧にやろうとするから、こっちも息がつまりそうになることがあるんです」

3歳年下の妻は、もともとおっとりした女性だった。一緒にいると心が安まる。この人と家庭を築きたい。そう感じて結婚した。だが、その「おっとり」は、はっきり自分の意志を示さないことにも通じていく。芯はしっかりしているから、無言で自分の考えを貫こうとする。

「実は僕、料理人なんですよ。もちろん、妻の料理には口を挟まないけど、手順やキッチンのものの置き方が非効率だなと思うと、ついアドバイス的なことを言ってしまうことがあるんです。こうやったほうが便利だよ、って。柔らかく言ってますよ。すると妻は、まったく聞きもせずに『プロと素人は違うの』と決めつける。どうせ私は料理が下手だから、といじけたりもする」

独身時代はそんなこともかわいく見えた。だが自分を卑下する一方で、頑固にやり方を変えない妻に、ダイスケさんは疲れてきたという。妻のほうも、最近ではダイスケさんが何か言っても無視するようになってきた。

「話している途中で、ふっと黙り込んでしまうんですよ。その後はほとんど口をきかない。目の前に僕がいるのに、まるでいないかのようにふるまう。これ、かなり心が砕けますよ。ここにいるのに、見えないのかと言いそうになったことも何度もあります」

文句を言ったり感情的になったりするほうがよほど対処のしようがあると彼は言う。確かに、まるでいないかのようにふるまわれたら、どうすればいいのかわからなくなる。

上は娘で10歳になるのだが、最近、彼女も父親を冷たい目で見ることがあるそうだ。

「下の男の子とはうまくいってるんですが、女同士、男同士で家族が分かれつつあるんです。それは避けたいので、僕はなにげない会話から、そういう重要なメッセージを伝えようと思っているんだけど、妻は夫婦関係の話になると身を固くして、自分は文句を言われる筋合いはないと全身で訴えてくる。どうしたら妻の心が柔軟になるのか、頭を抱えています」

この関係が変わっていけるのか固定してしまうのか。結婚前からの10数年にわたるふたりの関係の中で、今がいちばんの正念場なのではないだろうか。

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