亀山早苗の恋愛コラム

夫の不倫現場を見てしまった妻が、それでも離婚しなかった理由

夫の不倫現場を見てしまった妻が、それでも離婚しなかった理とは……。人それぞれ我慢の限界も違うし、別れを決意する基準も違うのだろう。夫婦仲というきわめて個人的な問題においては、「世間の基準」などどうでもいいのかもしれない。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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夫の不倫現場を見てしまった、それでも……

夫の不倫現場を見てしまった妻

夫の不倫現場を見てしまった妻

夫の1度の浮気で離婚する人もいれば、繰り返されても離婚しない女性もいる。人それぞれ我慢の限界も違うし、別れを決意する基準も違うのだろう。夫婦仲というきわめて個人的な問題においては、「世間の基準」などどうでもいいのかもしれない。
 

帰宅したら夫が女性と……!

「人間ってショックが強すぎると、その場から動けなくなるんですね」

ミフユさん(39歳)は、8年前のできごとを振り返る。5年つきあっていた3歳年下の彼との間に子どもができたのをきっかけに婚姻届を出したのが30歳のとき。それから間もなく、彼女は女の子を産んだ。

「夫は喜んではいましたが、あまり労ってはくれなかった。娘に嫉妬しているような言動も多くて、夫が子ども返りしているような気がしました」

産休と育休をとったミフユさん。あるとき実家の母親が体調を崩したと父親から連絡があり、生後半年の子を連れて里帰りした。

「里帰りといっても2時間ほどで帰れるんですが、夫はその日、会社に行くときに『久しぶりだから泊まってくればいいよ。移動で疲れるから』と珍しく気遣ってくれました。とはいえ、実は私、母とは折り合いがよくないんですよ、夫には詳しく言ってないけど。それでも具合が悪いと聞けばしかたがない、帰りました。だけど母は思ったより元気で、私の顔を見るなり『大げさね、来なくてもよかったのに』と。どうして来てくれてありがとうと言えないんだろうと」

父は自宅裏で工場を経営している。ミフユさんが工場に顔を出すと満面の笑みで迎えてくれた。それでもやはり母とずっと一緒にいるのが苦痛で、彼女は夕方過ぎには家を出た。

「夜8時くらいだったかな、自宅に戻りました。まだ夫は帰ってないだろうと思いながら鍵を開けると玄関に女性ものの靴がある。娘は熟睡していたので、そのままそうっとリビングに入ろうとしたら声が聞こえるんです」

明らかに男女の喘ぎ声だった。ミフユさんはリビングの入り口で棒立ちになってしまったという。
 

それでも別れなかった理由

ソファで絡み合っている夫と見知らぬ女。ミフユさんは動けない。そして夫と目が合った。

「夫は少し酔っているようでした。女性のほうはキャッと叫んで、そのままあたふたしているので、『洋服を着たら?』と言って子どもを寝かしつけに行きました。10分ほどたって戻ってきたら女性はもういませんでした。夫はソファで寝ていましたね。神経太いなあと思いました。もしかしたら寝たふりだったのかもしれないけど」

テーブルの上には買ってきた総菜やワイングラスなどが並んでいた。ということは、彼女とはすでにつきあいが長いのだろうとミフユさんは推測した。

「私が子どもにばかり関心が向いているのを、夫はたぶん寂しく思っていたんでしょう。それは私も感じていたけど、だからといって自宅で浮気というのはあんまりですよね」

翌朝6時に起きると、夫はすでに出かけたあとだった。リビングはきれいに片づいている。さすがに夫も、妻とは顔を合わせたくなかったのだろう。その日は泥酔して帰宅、さらに翌日の土曜日は昼過ぎまで眠っていたという。

「私からは何も言いませんでした。どうやらそれがすごく怖かったみたい。あとからそう言っていました。ただ、私は怒ったり騒いだりするのがめんどうだったんですよね。育児で疲れているし、かといって私には出ていくところもない。あまりのことに私も気持ちが整理できなかったから、もう少し時間がほしいとも思っていました」

土曜日はミフユさんが夕食を作ったが、夫はいつになくかいがいしく娘に離乳食を食べさせていた。いつもは言わなければ娘をお風呂に入れてくれないのに、その日は「パパとお風呂にはいりまちゅかー」なんて見え透いたことを言いながら連れていったそうだ。

「しばらく様子を見ようと思いました。ただ、あのソファだけはそのまま使いたくなかったので、翌週、新しいのに交換しました。夫には『ソファ、変えたから』のひと言。それも怖かったようです」

ようやくそのことについて話したのは約1ヶ月後。夫のほうからおずおずと「あの日はごめん。でも酔っていて覚えてないんだ」と言ってきた。

「覚えてないわけないでしょって叫んで、夫をビンタしてしまいました。自分でも意外だった。それほど怒りがたまっていたんだと思います」

ビンタひとつで許せるはずもなかったが、生活は続いた。そして折りに触れて、夫はぽつりぽつりと彼女がどういう女性なのかを話すようになった。

「もういいかげん、私のほうがイヤになってしまって。あるとき、もういいよと言いました。これからのあなたを私は見てるからって」

夫にしてみたら、ミフユさんの言葉はぐさぐさ突き刺さるものばかりだったに違いない。

その後、もうひとり娘が産まれて賑やかになった一家だが、ミフユさんは今も、あのリビングの光景を忘れられずにいる。

「夫はもう記憶が薄れているかもしれませんが、私は昨日のことのように思い出せます。それでも離婚しなかったのは、夫が好きだというよりは、家庭に責任をもちたかったからかなあ。私は両親が不仲で機能不全みたいな家庭で育ちましたけど、自分の子にはそんな思いをさせたくなかった。妻の留守に女性を引っ張り込んでしまうような夫が、これからどうなるのか見届けたかったし。離婚はいつでもできるから。この先はわかりませんが、今のところはあのとき別れなくてよかったとは思っています」

夫に対しては「大きな貸しがあるようなもの」というミフユさん、今では夫もすっかり家事が上手になっているそうだ。

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