感染症の診療も多い小児科、医師がうつらないのはなぜ?

小児科医がやっている感染予防対策とは?

小児科医がやっている感染予防対策とは?

小児科は常に感染症の診察に関わることが多い科です。小児科医である私自身、ICD(感染制御医)の資格も持っておりますので、感染症についてはいろいろと対応しないといけないこともあります。

今回は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防対策としても実践している感染症対策についてご紹介したいと思います。個人的に少し実践していることも書いておりますが、あくまで参考です。
 

小児科医が感染予防のために実践している10のこと

1. 手洗いを徹底する
ウイルスが付着した手で多くの場所を触ると、その部分にウイルスが付着してしまいます。新型コロナウイルスは、銅の表面で4時間、ボール紙の表面で24時間、プラスチック、ステンレスの表面で24時間残ると報告されています(あくまで実験結果ですが、アメリカ疾病対策センター(CDC)、カルフォニア大学ロサンゼルス校、プリンストン大学の共同研究により、ウイルスが物質の上で残る時間について報告されています)。

これらの物に付いたウイルスの除去にはアルコール消毒が有効ですが、ウイルスのついた手で口、鼻を触らなければ感染しないわけです。帰宅時、食事前には必ず、指先、指の間、手首までしっかりと石鹸で洗います。半袖なら、肘関節まで洗っています。手洗いを終えた後は、できれば蛇口も洗った手で触らないようにしたいものです。その意味では自動は安心ですが、家の場合は手洗い時に蛇口の水栓も一緒に洗ってしまいます。

私は帰宅時にすぐに手洗いをします。食事前には必ず手洗いをし、鼻をかんでも手洗いをします。
 
2. 帰宅後はすぐ入浴し、室内着に着替える
帰宅後はなるべくすぐに入浴し、室内着に着替えます。すぐには入浴できず、先に食事などを済ます方も多いと思いますが、屋内へのウイルス侵入を減らすためには、室内着を用意して、帰宅後にすぐ着替えるのが有効です。感染症だけでなく、花粉症対策などにも役立ちます。

私は帰宅後には手洗いをしてから、室内着に着替えています。外出時には面倒でももう一度着替えます。病院内では診察衣(スクラブと呼ばれる術着のようなもの)に着替えております。

3. うがいをする
うがいの感染症予防効果には賛否両論ありますが、気道からの感染症の場合、ウイルスは口や鼻の粘膜に感染します。そのため、鼻、口の中のウイルス量を減らすことは無駄ではないと考えます。さらに、粘膜は乾燥すると防御機能が低下しますので、粘膜を乾燥させないためにもうがいをするようにしています。

私は帰宅時には手洗いをしてから、イソジンガーグルで毎日、うがいをしています。
 
4.  診察中(感染リスクがある場合)はマスクを着用する
感染リスクがある場所では、しっかりとマスクをつけています。ずらしたりせず「しっかりとマスクを通して」呼吸することが大切です。マスクの外側がウイルスなどに汚染された可能性があるときは速やかに交換します。マスクをしていると口や鼻をうっかり手で触ることがなくなりますので、飛沫感染だけでなく接触感染の予防にも役立つと思います。

マスクは自分から人への感染予防に有効と考えられていますが、自分自身の感染予防効果を考える場合も含め、正しく装着しないと効果は薄れてしまいます。鼻を出したり、顎にひっかけるようなつけ方をしないよう注意が必要です。

私はこの新型コロナウイルス感染症の流行前から、診察時にはマスクをするようにしておりました。個人的見解ですが、マスクを習慣にする前は年に数回風邪を引いていたのですが、診察中のマスク着用を徹底してからは、たくさんの感染症のお子さんを診ていても、風邪などをひくのは年に1回あるかないかになりました。マスク以外の効果もあるかもしれませんが、着用も完全に無駄ではないかもしれないと考えています。
 
5. 人混みを避ける
新型コロナウイルスは人から人に感染します。2メートル以内(大目に見ても1メートル以内)は飛沫感染する可能性があります。マスクやフェイスシールドなどの遮蔽物がなければ、人との距離を遠ざけるほど感染リスクを減らすことができます。密室で人との距離が近くなる空間はやはり避けたほうが良いでしょう。

私は人混みも密室もあまり好きでありませんので、新型コロナ以前も、人の多い場所やカラオケ、パチンコ、接待を伴う飲食店、ライブハウス、ジムなどには全く行ったことがないか、ほとんど行ったことがありません。これも感染対策のひとつとして役立っているかもしれません。

6. 食事に気をつける
新型コロナウイルス感染症に対する特効薬はありませんので、もしかかってしまった場合は自分の免疫で回復しなくてはなりません。免疫不全の状態があれば、ウイルスは体内でどんどん増殖してしまいます。免疫力をあげるためには、特定の食べ物や単純な方法だけ取り入れればよいというものではありません。免疫を維持にするためには免疫に関わる細胞が必要であり、これらの細胞は日々作られていますので、その細胞になる栄養をしっかり摂ることが大切です。バランスのよい食事をすることで、免疫が適切に働くことになります。

つい好きな食材を選んでしまうので、私は不足しがちな野菜をなるべく摂るようにして、タンパク質も意識しています。ただ、アルコールは飲んでしまっていますので、少しマイナスかもしれません。
 
7. 自分に必要な睡眠時間を確保する
私はなるべく睡眠を取るようにしています。睡眠不足になってしまったときも、短時間の昼寝休憩で疲れが取れることがあります。

睡眠の質についての計測は難しいですが、睡眠時間としては6~7時間程度取るのが望ましいでしょう。カリフォルニア大学サンフランシスコ校のAric A. Prather先生らは、18~55歳の成人164人を対象に、風邪のウイルスであるライノウイルスを感染させ、1週間の睡眠時間を調査し、鼻粘膜のサンプルなどから風邪をひく割合と睡眠量の関係を検討しました。1日の睡眠時間が6時間未満であった人は、最低7時間の睡眠を取った人と比べて風邪をひく可能性が4.2倍高く、睡眠時間が5時間未満では、風邪をひく可能性は4.5倍になりました(SLEEP 2015;38:1353–1359)。必要な睡眠時間には個人差がありますが、自分に必要な睡眠時間を確保し、効率よく睡眠を取ることが重要です。寝れる状況であれば、眠気を我慢しない方がよいでしょう。

8. 適度な運動をする
強度の強い運動は免疫を低下させてしまうため、適度な運動が望ましいです。マラソンなどの強度の強い運動をした人は、運動をしなかった人に比べて運動後の風邪に代表される上気道感染にかかる率が2~6倍増加したという報告もあります。コロナウイルスは上気道から感染しますので、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でもいえることかもしれません。自分にとって負荷の高すぎない、適度な運動を心がけましょう。

私はいつも一駅分歩き、週に1回は屋外のスクールに通い趣味のテニスをしています。緊急事態宣言中はスクールが休みになり、運動不足のためか2kgほど太ってしまったのですが、やはり規則的に運動することは大切だと感じています。

9. 環境の温度・湿度を管理する
コロナウイルスやインフルエンザは主に冬場に流行します。気温が低くて、湿度が低いときに流行するウイルスに対しては、温度と湿度を上げることでウイルスによる感染する力が下がってきます。特にインフルエンザは、温度7~8℃、湿度20~25%の場合、6時間後のウイルスの生存率は63%、湿度49~51%での生存率は42%、湿度81~82%での生存率は35%に低下、温度20.5~24℃にして、湿度20~25%の6時間後生存率は66%で、湿度を49~51%での生存率は3~5%でした。このようにウイルスによっては温度、湿度によって感染力が変わります。適切な温度・湿度の管理も有効です。
 
私の場合は温度20~25℃、湿度50%は割と過ごしやすい環境ですので、家ではエアコンなどを上手く使い、快適な環境になるようにしています。

10. 正確な情報を知る
そして今回のように未知のウイルスに対しても大切なことは、正しい情報を知ることです。相手を知らないことには、適切な対策を立てることはできません。孫子の兵法にも、「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」とあります。最初は情報が少なくても、徐々にさまざまなことが明らかになってきます。特に公的機関から発表される情報は正確にまとめられたものが多いです。

当然のことながら、私も海外の報告や論文、学会での報告などで勉強するようにしています。そうした知識が皆さんのお役に立てるとよいと思っております。
 
このように、医師が行っている感染症対策も、特別なものではありません。私自身も10のことすべてを完璧にできているわけではありませんので、ぜひ皆さんも無理のない範囲で、これらを感染対策に役立てていただければと思います。
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