年収から見る「平均貯蓄額」の実態!
総務省統計局が2020年5月に発表した2019年の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」から、平均貯蓄額について、さまざまな観点から紹介しています。
『みんなの平均貯蓄額は?1755万円【2020年5月発表・最新家計調査】』
二人以上世帯の平均貯蓄額は1755万円(貯蓄保有世帯の中央値は1033万円)、そのうち勤労者世帯(無職の高齢者世帯、自営業者、自由業者を除く)の平均貯蓄額は1376万円(中央値801万円)でした。
年代別では、40歳未満で691万円、70歳以上では2253万円と大きな開きがありました。しかし、負債を差し引いた純粋な貯蓄額では、平均でもマイナス341万円、40歳未満では1497万円ものマイナス、60歳以上でも709万円と老後資金としてはかなり厳しい現実が浮かび上がる結果になりました。
平均貯蓄額や平均負債額は、もちろん前年と異なりますが、60歳以上でも負債が残り、純粋な貯蓄額は709万円という状況に変わりはありませんでした。
では、年収別ではどうなっているのでしょうか。
年収が高くても「純貯蓄額」の低い世帯が出てくる!
表の左にある第1階級~第5階級は年収区分と呼ばれ、年収の低い世帯から高い世帯へと順番に5等分されたものです。
二人以上の世帯のうち、勤労者世帯の貯蓄現在高は、年収が高くなればなるほど多くなるという結果で、第1階級で834万円、年収が最も高い第5階級では2370万円という結果です。一方、負債も第1階級では388万円ですが、年収が高い第5階級では1058万円と、年収が高くなるにつれ、負債も大きくなっています。
確かに、年収別で貯蓄と負債を見ると、年収が高ければ、貯蓄も多いが負債も多いということになります。しかし、貯蓄から負債を差し引いた純粋な貯蓄額を見ると、第1階級で446万円なのに対して、第2階級で55万円、第3階級で331万円と逆転現象が起きています。これは前回調査でも同じでした。
負債の多くは住宅ローンです。年収が増えると住宅取得をし、結果、負債が増えるというのは必然です。ただここ最近の住宅ローン金利の低下によって、実力以上に借入額を増やしてしまうこともあり、十分な計画が重要になってきます。
「年収が高いから貯蓄意欲が高い」とは限らない!
お金が貯まらない、貯められない、という世帯のなかには、収入が少なく、貯蓄に回せるお金がない、というケースが多く見られます。確かに、働き始めて間もないころは、生活費のやりくりだけで精一杯かもしれませんが、5年、10年たっても貯蓄が増えないとしたら、それはお金に対する意識に問題があるのかもしれません。年収によって消費行動が変わりますから、年収が高くなった分、まるまる貯蓄が増えるという単純なものではないでしょう。また、住宅購入にあたっては、購入物件も違ってきますので、年収が高ければ負債が多い、というのも当然かもしれません。
しかし、貯蓄に対する意欲ともいえる「貯蓄倍率(年収に対する貯蓄の割合)」は、年収が低い第1階級が2.37倍と最も高く、年収が低いからお金が貯められない、年収が高いから貯蓄意欲が高いとはならないわけです。これは今回の調査が特別なことではなく、前回も同様の結果でした。
この年収別のデータは、年代区分で掛け合わせていないため、すべての年収階級での平均年齢は50代前後になっています。定年までのあと十数年でどれだけ貯蓄を増やすことができるのかで、老後生活に大きな影響を与えます。
最も年収が高い第5階級であっても、純粋な貯蓄残高は1312万円にとどまります。現状の貯蓄額では、退職金を合わせたとしても、不安が残るかもしれません。
一見、老後は安泰のように思えても、消費行動を現役時代のまま変えられないとしたら、現状の貯蓄ペースで本当に大丈夫なのか、節約すべきことはないのか、といった点も重要になってくるでしょう。現在の貯蓄額が少ないのは、子どもの教育費負担が重い、住宅ローンの返済が厳しいということもあるでしょう。
「平均貯蓄額1755万円!」に踊らされることなく、これらのデータを参考に、自分の資産状況を把握し、貯蓄プラン、ローンの返済プランを考え直すきっかけにしてみてください。新型コロナウイルス感染症の影響は数年続くとみられています。じわじわと家計への影響も拡大していく可能性があります。ぎりぎりのマネープランではなく、イザというときに、耐えられる家計管理が重要な時代になったと言えるでしょう。
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