夫の浮気発覚!? あなたならどうする?
1度でも夫の浮気がわかったらすぐに離婚という選択をする女性もいれば、本気でなければ許すという女性もいる。最後に戻ってくるのは自分のところ、それでいいとする人もいるだろう。ところが、「私が夫を棄てる日のために、今は行動を起こさない」という選択をする女性もいるようだ。
子どもができてから夫はマンションを借りて
ジュンコさん(45歳)が結婚したのは、28歳のとき。8歳年上の職場の先輩と恋に落ちた。彼はバツイチだったが子どもはいなかった。結婚してすぐに妊娠、29歳で長女を、31歳で長男をもうけた。ちょうどそのころ夫の父が亡くなり、東京郊外の夫の実家で義母とともに暮らすことを決める。
「夫の母がいい人なんですよ。まあ、それでも姑ですから同居してうまくいくかなと思ったんだけど、私も子育てが大変だし、夫は仕事三昧でひとりで煮詰まってしまうので、義母の勧めに乗って一緒に暮らし始めたんです」
義母とはほとんど衝突がなかった。ジュンコさんの気持ちをいつも慮ってくれ、「私からは手を出さないから、何かあったら手伝ってってはっきり言ってね」というタイプ。ジュンコさんは自分の母親とはうまくいかなかったので、尊重してくれる義母にはすっかり心を許した。
「本当にすばらしい女性。ところが夫は、小さな子がふたりいる家がうるさかったのか、あるいは職場まで遠かったのか、会社の近くにワンルームマンションを借りたいと言い出したんです。帰れないときはカプセルホテルにでも泊まればと言ったんですが、それじゃ落ち着かない、と。いったん言い出したらきかないタイプだし、義母とも相談して週末は絶対に帰ること、平日も時間があれば帰宅することを条件にしました」
最初は週に1、2回泊まるだけだった夫だが、そのうち平日は帰ってこなくなった。1時間半以上かかる通勤がつらいのはジュンコさんにも想像ができたし、ぎりぎりながら生活費もきちんと渡してくれていたので、それはそれでしかたがないと受け止めた。
「金曜の夜か土曜の早朝には帰ってきて、子どもたちともじゅうぶんに触れあっていましたから、単身赴任だと思えばいいか、と。なにより義母がいたので、私は寂しくなかったんです」
近所にスポーツジムができたときは義母と一緒に入会した。連れだってジムに行くので、本当の母娘と周りに思われたこともある。
バランスがとれていたのだ、すべて。ところが5年前、義母が急死したときから何かが変わっていった。
姑にも裏切られていた?
そのころジュンコさんは週に3回ほどパートに出ていた。ある日、パート先に電話がかかってきたのだ。義母がスポーツジムで突然倒れ、救急車で病院に搬送されたということだった。駆けつけたとき、義母はすでに亡くなっていた。持病もなかったのに虚血性心疾患で突然死だった。「あまりのショックに、その後のことはよく覚えてないくらい。私の支えは義母でしたから、どうしたらいいかわからないほど混乱しました」
四十九日がすみ、ジュンコさんは初めてゆっくりと義母の部屋に入った。遺品の整理をするにはまだ気持ちが追いついていかなかったが、義母を感じて心を落ち着かせたかったのだ。
「そこで見つけてしまったんです、義母の日記を。読んだらいけないとは思ったんですが、それでも読まずにはいられなかった。そして知りました。夫が元妻とよりを戻していたことを」
義母の日記には「ジュンコさんには申し訳ない」という言葉が何度も出てきた。夫がワンルームマンションを借りたいと言ったときには、すでに元妻と関係をもっていたのかどうかまではわからないが、夫と元妻との関係は相当長かったようだ。
「前の奥さんとどうして別れたのかと夫に聞いたことがあるんですが、『生活していくうえでの性格の不一致』とだけ言って詳細はわかりませんでした。義母の日記を読んだ限りでは、どうやら嫁姑の関係は悪かったみたいです。だけど息子がいつの間にか元妻と関係をもってしまったことを、義母も止めることはできなかったんでしょう」
義母は夫に浮気されている哀れな嫁として自分を見ていたのだろうか。そう思うと、義母にも裏切られたような気持ちになった。
「頭に血が上って、夫に電話をかけたかったんですが、その日、夫は出張だと聞いていました。それに夫と話したら自分が何を言い出すか怖くて……。離婚という二文字は浮かびましたが、あまり現実的ではなかった。生活を変えたくはなかったんですよね」
それでも次の週末、夫が戻ってきたときは平静ではいられなかった。夫は義母を失った悲しみと感じたらしい。
「夫が古い指輪を差し出したんです。『おふくろがいちばん大事にしていた指輪。何かあったらジュンコにやってくれって言われてたんだ』と。見覚えがありました。義母がごくまれにはめていたので。繊細な装飾のきれいな指輪です。義母が実母からもらったものらしい。それを聞いて、私は義母に裏切られたと思っていた気持ちがすうっとなくなりました。義母は私を苦しめたくなかった。そのために自分が全部背負ってつらい思いをしていたのではないかと感じたんです」
夫には妹がいる。海外暮らしが長いのでほとんど帰国しないのだが、義母は実の娘に大事な指輪を遺さず、ジュンコさんに渡したのだ。
ただ、そうなると母親と妻を苦しめている夫への恨みは増大した。しかしジュンコさんは、夫に、元妻との関係を知っているとは今も言っていない。
「義母の日記は証拠品として私がもっています。義母が亡くなってから、夫は平日もよく帰ってくるようになりました。夫と元妻が今も続いているかどうかわからない。それでも私は夫をもう赤の他人だと思っています」
いつか本格的に夫が戻ってきたら、改めて自分からきちんと夫を棄てる。もし夫が定年後も元妻と続くならきっちり慰謝料をとって離婚する。そう決めたのだという。
「義母への思いと夫への気持ちは別。義母が亡くなって3年たって、ようやくそういう心境になりました。夫にこれほどまでにバカにされてきたんですから、義母も許してくれるんじゃないかと思うんです」
ジュンコさんは今も義母の部屋をそのままにしてある。きちんと掃除をし、ときおり義母の部屋で数時間を過ごして偲ぶ。彼女の心の中で、今も義母は生きているようだ。