こんな時期でも「恋心」は止められない!?
こんな状況下でも「恋する欲求」があるのが人間。ただ、さまざまな不安がつきまとって、恋に素直に踏み込めないケースもあるようだ。
本当に好きなのか、そんな気がするだけなのか……独身リサコさんの場合
リモートワークで出社が週に2回となっているリサコさん(39歳)。昨秋から婚活に精を出していたのだが、この状態では婚活もままならず棚上げしていた。
「会社もシフト制になっているので、ひとつの部署で出社してくるのは1日2、3人。私は先輩のKさんとほぼ同じ日に出社しています。6歳年上のKさんとは、今までそれほど親しくなかったんですが、何度も顔を合わせているうちに、お互いのプライベートなことも話すようになりました」
そして彼から、つきあってほしいと言われたのが2週間ほど前のことだった。今、このときにそれを言うのかとびっくりしたという。
「まあ、でも考えてみればプライベートなことはまた別の話ですからね。彼はバツイチなんですが、子どももいないし、やさしくていい人なんですよ。ちょっと叱咤したくなるくらい気弱なところもあるけど、人の気持ちに敏感だしつきあっていくにはいいなと思いました」
出社した日の帰り、そのままデートへ。映画館もやってないし、街から楽しいことは消えている。どうしようかと相談していると彼が言った。
「テイクアウトでおいしいものを買って、リサちゃんの家に行こう」
最初のデートが私の自宅なのかと彼女は黙り込んでしまったという。
「店がやっていないのでそういう選択肢も確かにあるけど、それを言っちゃうのかとちょっとがっかりするところもありました。結局、居酒屋で定刻8時までいてそれぞれ帰ったんですが、彼の気持ちも私の気持ちも見えなくなってしまったんです」
彼は自宅が遠い。ひょっとしたら泊まっていくつもりだったのか、そしてそれが便利そうだから私とつきあいたいと思ったのではないか。そんな疑惑にとらわれてしまったのだ。もちろん、彼がそんな狡い男ではないとわかっているのに。
「そして私自身の気持ちも、寂しいから彼でもいいやと思ったのか、好きだからつきあいたいと思ったのか、よくわからなくなったんですよね。外で楽しいデートがしづらい状態でこのままつきあっていけば、ふたりだけの世界で妙な雰囲気になってすぐにでも結婚してしまいそうな気もするんです。今は平常なときではないので、流されてしまいやすい。どうしたものか、と考えています」
恋していなくても恋をしているつもりになったり、恋しているのにこれは恋ではないと考えてしまったりする人もいるだろう。今は自分の気持ちが見えづらい日常が続いていると考えたほうがよさそうだ。
不倫だけど大好きだから……結婚12年、ケイコさんの場合
この時期、不倫の恋に足を踏み入れてしまったのはケイコさん(42歳)だ。彼女には12年連れそう夫、10歳のひとり息子もいる。相手は年下の同僚で、やはり既婚者である。「私、前から彼に好意をもっていたんです。でもお互いに結婚しているしいけないことだと自分の気持ちを抑えていました。でもこういう状況になって出社人数が少ない社内で、朝から晩まで一緒にいたら急速に親しくなってしまって。うちは部署によって出社日数が違うんですが、私がいる部署は在宅で仕事がしづらいので週に3、4日は出社。そもそも部署の人数じたいが少ないし、隣の部署はほぼ完全に在宅だから、そばにいたら親しくなっちゃいますよ」
以前なら人が活発に行き交っていたフロアが、今は閑散として寂しい。気持ちも不安定になりがち。円満だった夫婦関係も、この状況でちょっとぎすぎすしていたケイコさん、しかも年下彼が好きだったのだ。彼と親しくなるのに時間はかからなかった。
「いろんな不安エネルギーが恋愛エネルギーに変換されちゃったみたいです。彼とは週に1度はデートしていますね。行き先はラブホテル」
夫には出社日数を1日多く話してある。夫はもともと在宅で仕事をしているフリーランスなので、妻の出社日数を疑ってはいない。
「でも先日、年下彼が急に『もしどちらかがコロナウイルスに感染したら、発症前の行動を報告しなくちゃいけないんだよね』と言い出して。怖いね、関係がバレるねと話しました。でもふたりとも別れる気にはなれない。好きな人と会えないくらいなら生きててもしかたがない、彼と一緒にいられるなら今の状況が続いても我慢できる、いや、むしろこのままでいたいなんて思ってしまって」
すっかり恋の沼にはまりこんでしまったケイコさん、今は会社と家庭にバレないように注意するだけ、今後のことは考えたくないという。
恋が始まるのに、昨今の状況は決してふさわしいわけではない。だがどんな状況でも始まってしまうのが「恋」なのかもしれない。