夫のネガティブな言葉に妻は……

モラ夫

人は毎日、「具合悪そうだね」と言われると、本当に具合が悪くなっていくのだという。否定的な言葉は人の心を傷つけるだけでなく、活力さえも奪っていくのだ。たとえそれがどんな些細なことであっても。これは夫婦関係にも言えることではないだろうか。

 

なぜか徐々に夫の性格がねじ曲がっていっている

結婚して15年、中学生と小学生の子どもがいるリエさん(44歳)。ひとつ年上の夫とは、就職した企業で知り合った。結婚してリエさんは退職、専業主婦を経て6年前からパートとして働いている。

「夫はもともと冗談が大好きで、明るい性格なんです。ところが最近、それが嫌みや皮肉に聞こえてしまう。私がそう受け止めているだけではなく、言ってはいけないことを言うようになっているんですよね」

たとえばある日、夫は代休。リエさんが子どもたちを送り出し、トーストを食べようとしていると起きてきた夫も食べると言った。

「私はチーズトーストを作ろうと思っていたんですが、夫はチーズが嫌い。だから夫のパンをまずトースターに入れて焼き始めたんです。その後、自分のチーズトーストを入れようとしたらもうトースターが熱々になっていて。指が触れて思わず『あちっ』とチーズだけ落としたんですよね。そうしたら夫は、『オレのトーストが邪魔だから落としたのかと思った』って。そういうときって、私が熱いと言っているんだから、普通は『大丈夫?』と言いませんか? 私だったら言う。だから『ずいぶんひねくれてるし、そもそも私がやけどしたかどうかなんてまったく考えてないんだね』と言ってやりました。そうしたら黙っちゃったけど」

そういうことが非常に増えているのだとリエさんは言う。そのたびに、「私はどうしてこの人と一緒にいるんだろう」と考えるようになっている。

「夫が健康診断で少し血圧が高いと聞いたので、なるべく薄味にしようと出汁をきちんととったりしているんですよ。もっと濃いほうが好きだとわかっているけど、できるだけ薄味に慣れてねと料理を出すと、黙って口に運んですぐに立ち上がって醤油をもってくる。子どもたちだって、それほど薄味だとは感じてないんですよ。その後、夫に、体のためを思っているんだからねと言いましたが、言葉は返ってきませんでした」

黙ったまま妻の料理を否定する夫。それなら何とか言えばいいのに、とリエさんはモヤモヤしたものを抱えてしまう。

 

些細なことだとわかっているけど

似たようなことを言うのはハルナさん(43歳)。5歳年上の男性と友だちの紹介で結婚して10年、ひとり息子がいる。

「ウチの夫も嫌みが多いですね。本人は冗談のつもりでいるからタチが悪いんです」

ある土曜日の午後、久しぶりに女友だちに会う約束をした。出かける前に髪を巻いていったのだが、その翌日、夫が「昨日は珍しくキレイだったのに、今日は元に戻ったな」とひと言。

そして夫の実家に出かけるときに、色合いが落ち着いた服を着ていこうとしたら「友だちに会うときはおしゃれして、オレの実家には、そんな暗い服で行くのか」と。

「夫の実家に派手な色の服は着ていかないほうがいいんじゃないかと私は思っただけなのに。なんだか言い方がいちいち腹立たしいんです」

極めつけは夫が風邪をひいて寝込んだときのこと。とにかく寝ていたい、食べたくないというから、夫が起きてきたら食べられるものを作ろうと考えていた。

すると夜中に起きてきた夫は、「オレが死んでもハルナは気づかないな。普通、長時間寝ていたら心配しないか?」と言い出した。食べなくてもいいから寝ていたいと言ったのは夫なのに。

「まるで私が非常に冷たい人間みたいな言い方をするんですよね。怒鳴りつけてやろうかと思ったけど、相手は病人。自分を抑えて、何か食べられそう?と聞いたら、いらないと言ってまた寝てしまいました。翌朝には治ったみたいで、けろっとして『やっとお腹がすいたよ』と元気に言っていたけど、自分のひと言が妻をどんな思いにさせているのか、まったくわかってないんですよね」

こういうことが続くと、妻はどんどん夫への愛情を失っていく。妻を否定し、傷つけるひと言を吐いているのに、あたかも冗談をわからない妻がいけないというような夫の言動は、まさにパワハラ、モラハラとしか言いようがないのだが、「些細」であるがために妻も反論しづらいのかもしれない。

だがどこかできちんと声を上げないと、夫は一生気づかない。そして苦しんでいる妻の気持ちもわからないのだ。
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