「話し合い」を拒否する夫
ふたりともフルタイムで働いていて、なおかつ子どももいるとなれば、どういう役割分担で家庭をきちんと「運営」していくか、話し合わなければいけない。ところが「話し合いなんてしたくない」と夫に拒まれた女性がいる。
夫は「拒否」する理由とは
30歳で同い年の男性と結婚、すぐに妊娠して31歳で長女を、33歳で次女を出産したフミカさん(43歳)。結婚13年たった今では、夫とは「ただの同居人だと思うようにしている」と言う。
大学卒業後に就職した会社で、ずっとフルタイムで働いてきた。何があっても仕事は辞めたくなかったし、夫にもそのことは伝えていた。夫は自身の仕事に情熱をもてなかったようで、楽しそうに仕事をする妻に少し嫉妬する気持ちがあったようだ。
「上の子を保育園に入れるのを夫は反対していました。でも私は仕事を辞めたくない。ある日、きちんと話をしよう、私の気持ちを説明しようと思ったら、夫が『あー、もういい、その話は。きみの好きなようにすればいい』と言い出したんです。いやこれは、私だけの問題じゃないし、ちゃんと話そうよと言ったら、『話し合いは嫌だ』って。はっきり拒絶されてびっくりしました。彼は仕事を進める上でも話し合わないのかしらと不思議に思いましたね」
あとから考えれば、彼はおそらく、「妻に説得されるのが嫌だった」「妻に議論で負けるのが嫌だった」ということなのかもしれない。だがそのときは、足並みを揃えようとしない夫に、フミカさんは悲しい思いを抱いたという。
結局、そのときは残業をしないようにし、どうにもならないときは実母に頼んだ。
「私はその状況をいいとは思っていなかったので、下の子も生まれて、また職場復帰するとき、夫に『ねえ、来週からのことなんだけど』と気楽に話しかけてみたんです。会話がまったくない夫婦だったわけではないので、日常会話のように話せば乗ってくれるかなと思って。そうしたら今後の生活のことだと察した夫は、『話し合いたくない』って。しかたがないので、ホワイトボードを買ってきて、そこに今日、夫がやるべき家事を毎日書いておきました。そうしておけばやってくれるんですよ。とにかく話し合いが嫌だったみたいです(笑)」
話し合いを拒否する夫は、精神的に妻に見捨てられることが多い。
そして「同居人」へ
フミカさんは夫を下に見ているわけではない。対等に、足並み揃えて一緒に歩きたかっただけだ。だが夫がそれを拒絶した。夫は、妻が対等であることを拒んだと言っても過言ではない。自分が上から物を言うのはいいが、妻からそうされそうになるととたんに怒ったり拒絶したりいじけたりするものなのだ。「最近は、夫は完全に同居人だと思うようにしています。だから何かあっても怒りはわかない。年に一度、家族旅行をするのですが、そのときは娘たちがしたいこと、行きたいところを優先させています。それなら問題ないんです。ただ、行った先で、今はよく体験プログラムみたいなものがあるでしょ。先日も旅先で、陶芸体験があったので、私はこれをやりたいと言ったんですよ。そうしたら娘たちもやりたいって。そういうとき夫は決して一緒にやろうとしないんです。たぶん、家族の中でいちばんうまく作れなかったら示しがつかないなんて内心、思っているんじゃないでしょうか。そうやって素を見せないから、どんどん気持ちが離れていく。今、私にとって夫はただの同居人です」
この先、子どもたちが独立していったら、離婚も視野に入ってくるだろうと彼女は冷静に言った。常に冷静で、どんなに忙しいときも優先順位を考えて生活も仕事もがんばってきた妻を、夫は「自分には手の届かない女性」として畏怖し、届かないとわかっているからこそ苛立ちがあるのかもしれない。