「夫の定年後に離婚」を視野に入れて

熟年離婚

好きで一緒になったとはいえ、状況も変われば人の心も変わる。結婚生活から早く脱したいと思いながらも、夫の定年まで待つと決めた女性がいる。

 

浮気を疑われて

大学時代の同級生と25歳で結婚したユキさん(45歳)。19歳、16歳、14歳と3人の子どもがいる。現在、夫は単身赴任中だ。

「ずっと単身赴任してくれていればいいのにと思うことがあります(笑)」

いちばん下の子が成人したら離婚しようという話はしている。すれ違いはいちばん上の子が生まれてすぐに始まった。

「夫は私がバージンではなかったことにこだわっているんですよね。結婚後にそんなことを言われてもどうしようもないじゃないですか。夫こそ初めてだったから、私は性の楽しさを教えたつもりだったんですが」

つきあっているころは、夫は彼女との性にめろめろだったという。ところが出産後、急にバージンではなかっただろうと責められるようになった。

「意味がわからない。しかも、そういう女だったらいつ浮気してもおかしくないなんて言い出して」

もしかしたら夫は自分に自信がなかったのかもしれない。だから妻を責めて、自己防衛をしたのではないだろうか。

「ただ、そのころは私も別れる気はなかったんです。3人産まれて、私も仕事を続けられなくなって専業主婦になりました。完全にワンオペですが、子どもがかわいかったから必死で育ててきました。夫は自分より子どもに私の気持ちがいっているので、けっこう嫉妬していましたね。『子どもより先にオレのことを考えろ』と言われたこともあります。『あなたは大人でしょ、自分のことくらい自分でやってよ』とよく言い返していましたね。お互いに手は上げなかったけど、暴言をぶつけあっている時期が長かった」

夫は30代後半から、地方での仕事が多くなった。彼女は子どもたちの学校を理由に、すべて単身赴任で行ってもらったという。2、3年の単身赴任が、3回ほど続いてきた。

「顔を合わせないほうがいいんですよ。夫が単身赴任になってから大げんかは減りました。代わりに『いつ離婚するか』が問題になっていますが」

 

離婚はやむを得ないが損はしたくない

夫の言い分としては、いつ離婚してもいい、その代わり慰謝料は出さないというもの。ユキさんは苦笑する。

「自分で稼いだお金をさんざん家族に使われて、これ以上、びた一文出したくないのが本音みたいです。だけどそんな話は通りませんよね。私が専業主婦だから夫は働けたわけだし。だいたいお金を稼いでいるほうがエライと思っている時点で、うちの夫は終わってます(笑)」

だからユキさんは、離婚は定年後、退職金は半分私のものと言い張っている。夫は友人の弁護士などに相談しているが、弁護士さえ離婚は大変だからあきらめろと言っているそうだ。

「夫は私にその話をするんですよ。この人、本当に別れたいのか、別れる話を楽しんでいるだけなのかさっぱりわからないと感じています。いずれにしても私は、きちんと財産分与をしない限りは離婚には応じません。子どもたちも私の味方です」

夫の幼児性にはウンザリしているが、彼女には家庭を支えてきたのは自分だという自負がある。もちろん経済的な側面は夫が担っていたが、それは役割を分担しただけのことだ。この10年ほど、彼女は夫からのベッドの誘いをいっさい断っている。

「外で浮気してるんじゃないでしょうか。妻ならセックスさせて当然だと言われたので、私は拒否すると答えました。結局、私をひとりの人間として認めていないんですよね。お互いに好きで結婚したはずなのに、どうしてこうなったのかと思うと悲しいですけど」

夫との心の距離を縮めるのは、もうむずかしいかもしれないとユキさんは考えている。それでも、自分で自分を卑下することだけはするまいと決めた。

特に暴力や借金などひどいことをされたわけではないが、自分をひとりの人間として認めていないと感じさせられる夫をもつ妻は多いのではないだろうか。

「夫の定年後に離婚を目指していますけど、そのころには何歳が定年になるのか。もはやずっと同居するのはむずかしいかもしれないので、私も少しでも稼げるような手段を考えておかなければいけないとは思っています」

夫を支え、子どもたちを育ててきた妻が熟年になってろくに慰謝料ももらえずに放り出されるような世の中ではいけないと、つくづく考えさせられる。
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