2019年10月から始まった消費増税やジワジワと物価が上がっているという報道に加えて、2020年4月からの「働き方改革」のことなど、収入も支出も受難の時代。マネープランクリニックに寄せられたお金の悩み相談をもとに、これから普通の人が自分のお金を守る方法について解説いたします。第4回のテーマは「家計を守る!資産運用の鉄則」です。
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資産運用の初心者はこれからの資産運用、どう考えていけばいい?
深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの深野康彦です。
清水京武さん:マネーライターの清水です。深野先生よろしくお願いします。今回は資産運用について考えてみたいと思います。「資産運用をしましょう」と世間で言われていますが、実際にどうしたらいいか分からない方も多いですし、悩んでいる方はクリニックでも多数いらっしゃると思います。資産運用について、特にビギナーの方はどのように考えていけばいいのでしょうか?
深野さん:資産運用を考えるときにまず大事なのは、金利が低いということです。「超低金利」という言葉をよく使いますが、これはなかなか解消されないと思いますので、いずれかの時点で始める必要があると思うんですよ。ただし、物事には優先順位があるんです。まずは現金をある程度持たないと、投資はできないじゃないですか。現預金がない人は、まずはしっかりそれを確保する必要があります。預金があれば、長期投資ができます。投資した商品の価格が下がって焦って売らずに、お金を使う必要があれば手持ちの現預金で対応できるわけです。現預金は資産運用をしっかりとしていくための保険でもあるということですよね。もう一つ考えなければいけないのは、例えばマネープランクリニックをやっていると、意外と投資をしている人は多いと感じます。ただその割には、例えばつみたてNISA、iDeCoとかに投資をしている人は、少ないと思いません?
清水さん:株式投資などでダイレクトに投資する感じですよね。
深野さん:ちょうど老後資金の2000万円不足問題というホットな話題がありましたよね。国が推奨するiDeCo、つみたてNISA(通常のNISAも含む)に関しては、基本的に流れに乗るメリットは大きいので、やっておいたほうがいいでしょう。 あともう一つ、つみたてNISAやiDeCoを見ると、金融庁は、「長期」「積立」「分散」投資という3点セットを推奨しているので、初心者の方もそれを守ることが基本になると思います。
iDeCoは30歳前後の人だと30年間は引き出せないリスクも考える
清水さん:ビギナーでも入りやすいようになってますよね。iDeCoは節税効果もある。ただ、iDeCoに関心のある方は多いのですが、積み立てたお金を引き出せるのは原則60歳以降といった注意点もあるので、しっかりと理解して取り組むことも大事ですよね。深野さん:おっしゃるとおり、iDeCoは60歳まで引き出せません。マネープランクリニックには若い方も相談にいらっしゃって、例えば30歳前後の方だと、30年間引き出せない。そのリスクを考えた上で利用しないといけませんね。
清水さん:積み立てを始める時期を遅らせるとか、あるいはごく少額から始めるとか、工夫できますね。途中で中断もできるんですよね。そういう工夫もしながら、うまくやっていくということですね。
深野さん:それに、人生の途中で大きな方向転換があるかもしれません。こんな時代ですからね、なかなか長期のライフプランを組むのは難しいじゃないですか。そう考えると、iDeCoの節税効果は確かに高いですが、何にでも使えるつみたてNISAの方が、汎用性があるかなとも思います。
清水さん:なるほど。例えば特に30代等の若い世代の方は、つみたてNISAから考えてみるというのも一つの手ですね。
深野さん:そうですね。投資は何から始めていいか分からないという質問は、多いです。つみたてNISAは一定の条件で選ばれた商品だけなんです。例えば2020年始めだと180弱ぐらいの商品があって、その中から金融機関が各自に扱う商品を選んでいるので、商品選びのハードルが非常に下がっていると思うんですよ。だから始めやすい。
ただ、つみたてNISA含め投資をする場合、分かりやすさの観点から、皆さんどうしても日本株を選ぶと思うんです。ストレートに株を買う人もいたり、銘柄選択に自信があるのならそれでもいいですが、投資信託の場合、私は日本株には若干、疑問符を付けているんですよ。
なぜかというと、日本で働いている人のお給料などは、基本的には円でもらっている。しかも、景気連動でしょ。景気が良くなればお給料は増えて、悪くなれば減りますよね。つまり円のお給料は、日本の景気にベットして(賭けて)いるわけです。それなのに資産の部分でも日本にベットすると、もう収入、資産、全てが日本と一蓮托生。もちろん日本人だから悪いことではありませんが……。ただ投資の原則である「長期」「積立」「分散」のうち、分散にならないじゃないですか。 だから私は、つみたてNISAだったら極論、日本株を投資対象とする投資信託は省いちゃってもいいかなと思います。海外株を投資対象とする 投資信託を普通に積み⽴てていきます。そうすれば、収入は日本景気(円)にベットして、資産は海外景気(外貨)にベットすることで、分散ができますね。そのくらいシンプルに考えていいと思います。
分散投資をするというときの3つのポートフォリオとは
清水さん:世界の株、債券を投資する商品として選んでみたらどうか、と。深野さん:分散投資という観点で、株や債券等いろいろな商品を交ぜて投資する「ポートフォリオ」というものがあります。このポートフォリオには3種類あります。一つ目は、証券ポートフォリオです。これはお金だけでどうやって分散投資をするか、ということ。二つ目は、マネーポートフォリオ。その人が持っている金融資産全体、つまり預貯金も含めてです。通常私はそれで考えるべきだと思います。 そして三つ目が、総資産ポートフォリオです。金融資産以外に例えば自宅、不動産等を総合的に考えるやり方です。
富裕層は総資産的な考え⽅をしますが、⼀般の⽅はマネーポートフォリオがいいかと思います。 今まで現預⾦100%だったら、例えばつみたてNISA、iDeCoでもいいけれど、それを始めるのが 外国株を投資対象とする投資信託だけだったとしても、金融資産全体から⾒るとたくさんのお⾦を投資に回しているわけではないのです。
これ実は、リスクは高くないんです。しかし証券ポートフォリオだと、預貯⾦がなくなるから、株100%は危ないでしょうということです。もう少しシンプルに考えれば、⾃分の持っている⾦融資産と、投資に回すお⾦とに比率を考えた上でポートフォリオを組めば、実は外国株100%だったとしても、リスクは高くなるわけではないのです。
そしてそれが⻑期保有になっていき、資産のほうも増えていって、金融資産全体に占める割合が多くなってきたら、リスクコントロールをしてください。投資に回すお金を少なくしたり、一部利益確定したりとかね。でもそれはあくまでも10年、20年たってからの話。投資を始めるときは、それくらいシンプルに考えて、そこから先は順調に積み立て投資でやっていけばいいと思っています。
清水さん:なるほど。投資はできれば余剰資金、使う予定のないお金を一部回すと。深野さんがいつもおっしゃるように、もちろん投資はできればやったほうがいい。ただやはり余剰資金でやるということと、家計を見ながらどのくらいを貯蓄に回して、どれくらいを投資に回していいのかを考えるということが大事。そしてつみたてNISA、iDeCoの場合、確定利益分は非課税というメリットもあるので、そのメリットも利用しながら、少しずつ投資に慣れていくのがよさそうですね。
深野さん:つみたてNISAやiDeCoは、数千円から始められます。それこそ毎月の家計の中から貯金をして、そのうちのいくらかを投資に回すという程度のスタンスからやっていけば、十分だと思いますよ。若い人ほど、時間という味方をつけられる。人生100年時代において、我々はまだ40~50年はありますから、十分長期投資できるんです。やはり「習うより慣れろ」という感じかな。少額でもいいからまずは始めてみて、だんだんとステップアップしていく上での相談もウェルカムです。どしどしマネープランクリニックに応募してもらえればと思います。
清水さん:分かりました。投資についてはそういうことで、皆さん頑張ってやってみてください。
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