All About『マネープランクリニック』でアドバイスをするFP深野康彦さんとマネーライターの清水京武さんが、2020年の確定申告シーズンに気をつけたいポイントをレクチャー。2019年に副業を始めたサラリーマン、ふるさと納税と医療費控除を両方申告したい人は特に注意が必要です。株式投資をしている人で確定申告をしておいたほうがいいケースについても解説します。
※『2020年の家計防衛』のバックナンバーはコチラ
第1回『働き方改革で減る収入と隠れ値上げに注意』
第2回『家計管理や支出で陥りやすいワナに注意!』
第3回『もっとお金が貯まる保険の見直し方』
第10回『サラリーマンが副業する時の税金の注意点は?』
FP深野が緊急メッセージ!新型コロナウイルスに負けない家計の守り方
【サラリーマンが確定申告をする際に気をつけたいこと】
2020年ならではの確定申告のポイントは副業収入?
深野康彦さん:皆さんこんにちは。ファイナンシャルプランナーの深野康彦です。清水京武さん:皆さんこんにちは。マネーライターの清水です。深野先生、今日もよろしくお願いします。今回はいろいろとテーマがありますが、まず2020年の確定申告についてです。特に「サラリーマンが確定申告をする際に気をつけたいこと」をテーマに、まずお話しいただきたのですが。
深野さん:サラリーマンの方は、会社で年末調整というかたちで税金を納めているので、特に何もなければそれで終わるのが一般的ですよね。そうではなく確定申告が必要な人は、例えば会社で年末調整が終わった後に子どもが生まれたとか、昨年マイホームを購入して住宅ローンを組んで住み始めたとか、医療費が10万円超かかったとか……。
そういう一定の条件がある人は確定申告が必要になります。必要というよりも、例えば医療費控除などは年末調整ではできず確定申告しないとメリットが得られませんので、積極的に控除やメリットがあるものはしたほうがいいということです。 あともう一つ、今年2020年ならではのポイントがあります。2019年あたりから副業などをした人も多いと思います。後ほど詳しくお話ししますが、そういう人も確定申告が必要です。昔から、2カ所以上から収入を得ている人は確定申告をすることが原則となっています。そのあたりがポイントになってくるかと思います。
清水さん:確定申告をすることによって還付金が得られる場合もあれば、逆に給与以外の収入があった人は確定申告で納税の必要が出てくるということになります。先ほど副業という話も出ましたが、確定申告する際に特に忘れがちな部分、気をつけたい部分があるのは、どういう人ですか?
ふるさと納税と医療費控除を両方使いたい人は注意
深野さん:まずはふるさと納税をしている人です。通常ワンストップ特例というものがあり、ふるさと納税の納税先が5カ所以下の場合であれば基本的に確定申告をしなくても寄附金控除が利用できます。寄附先の自治体からもらうワンストップ特例の書類を一定の期日までに自治体に対して郵送していない人は、実はワンストップ特例であっても確定申告をしないと適用されないんです。例えば5カ所でふるさと納税をしたという人の場合、ワンストップ特例の権利があります。ただ、そのうち1カ所でも提出が遅れていると、実は全部アウトになってしまいます。
そういう人の場合、基本的には確定申告をやらなくてはいけないということですよね。
あともう一つの例が、ワンストップ特例を利用しているけれど、同時に1年間で10万円超の医療費がかかったから医療費控除の申告をする場合。この場合はワンストップ特例の条件を満たしていても、確定申告しなくてはいけません。ふるさと納税を中心にお話ししましたが、ワンストップ特例はそれだけで税金が完結しているわけではないんです。それ以外に申告したい控除がある場合は、確定申告をする必要があるというのが一つのポイントです。
もう一つ、医療費控除について。実は今二つのパターンに変わっています。まず通常の医療費控除で、同一生計にある人で医療費が合計で10万円超かかったというケースです。しかし二つ目のパターンとして、医療費控除の特例という制度があり医療費が10万円以下の場合もスイッチOTCという医薬品を使っていると、実は控除が受けられるんです(セルフメディケーション税制)。
だから医療費が10万円以下の人も、スイッチOTCのレシートを取っておくなど条件付きですが、医療費控除を受けられる可能性があります。スイッチOTC商品の場合、金額の横あたりにマークが付いているので、分かるはずです。それを合計して一定額になると、医療費控除は使わなくてもスイッチOTC医薬品の控除が使えるので、そのあたりは注意しておいたほうがいいと思います。
清水さん:ふるさと納税のワンストップ特例の主な対象は会社員の方なので、確定申告が必要ない方がほとんどです。それで「何もしなくていいのかな」と思いがちなところが一つの落とし穴ですね。ふるさと納税の納税先が5カ所以内という条件もあり、6カ所以上になると特例が適用されないので、そこは注意したいです。 今の医療費控除の話でいうと、独身の場合なかなか控除額に達するには相当な金額だから「自分には関係ない」と思いがちです。でもさっきのスイッチOTCの薬の話のほうはもしかすると該当するかもしれないので、注意したほうがいいということですね。
深野さん:例えば10万円超の医療費がかかっているけれど、医療保険などで給付金をもらっている方もいると思います。その場合は給付金を差し引いた後の金額で計算するので、注意が必要です。自分で10万円超払っていれば給付金をもらっても関係ない、というわけではありません。給付金を引いた金額で10万円超という部分に注意してほしいです。
確定申告は今までは紙ベースでしたが、現在はインターネット、最近だとスマホからもできます。特に医療費控除、上場株式など配当金の場合、今まで基本的に別途領収書を送る必要がありましたが、今は基本的にインターネットとスマホの場合、添付する必要がなくなっています。 ただし、後からおたずねが来たらそれらは提示しなくてはいけないので(5年間は)、添付する必要がないからと破棄してしまうととんでもないことになります。注意していただきたいですね。
清水さん:取っておかないといけないんですね。分かりました! あと確定申告でもう一つ。最近投資をされる方が増えているので、株式での損得の話が出てきますよね。これは確定申告に関わってくる話だと思いますが……。
特定口座の源泉徴収ありを利用していたとしても、損失を被った人は確定申告をすること
深野さん:そうですね。昨年世界同時株高でやや良い1年間だったわけですが、当然中には銘柄選択に失敗して、残念ながら損失を被った人もいらっしゃると思うんですよ。上場株式の場合、基本的には特定口座の源泉徴収ありという口座を利用していれば、金融機関が税金の計算から徴収まで全部やってくれるので、原則何もしなくてもOKです。 ただし特定口座の源泉徴収なし、一般口座を利用している人は、そもそも自分で確定申告をしなくてはいけないというのが大前提です。それ以外に、例えば特定口座の源泉徴収ありを利用していたとしても、損失を被った場合は最長3年間翌年以降繰り越せます。その繰り越しを利用するには、確定申告をすることが条件になっています。 例えば2019年の100万円の損を、勝手に2020年の利益にぶつけようと思っても、申告していないと、実は昨年の100万円の損はなかったものと見なされてしまっています。特に損失を被って繰り越し控除を使う場合には、必ず確定申告が義務づけられているということです。これをやらないと残念ながら還付は受けられないので、注意していただきたいですね。
清水さん:損益通算という方法があって、その年の利益と損失を相殺できるのですが、その結果損失が出た場合、繰り越しによってさらに控除を受けられるということになるわけですね。
深野さん:そうです。例えば今だと2020年ですから2019年の申告をしますが、その場合には2019年1年間の利益(この場合の利益は売却益や配当金、債券の利子)と損失を計算して、それでも損失が残った場合には、申告をすれば今度は2020年の利益と相殺ができるということです。これが「損益通算の繰り越し控除」と呼ばれるものです。
清水さん:確定申告は自分に関係ないと思いがちですが、今お話に出たようないろいろな局面で確定申告をしなくてはいけない場合もあるし、することでメリットがある場合もあります。ぜひそのあたりを注意して、確定申告についてチェックしてみるといいですね。
深野さん:特にサラリーマンの方の場合、副業で例えばかなり収入があるとか、たまたま不動産投資ですごく利益が上がった方以外は、一般的には納税よりも還付を受けられるケースが多いので、そういう方の場合は必ず漏れなく申告していただくことが大切ですね。
清水さん:分かりました。副業については、次回詳しくお話ししていきましょう。ありがとうございました!
★『サラリーマンが副業する時の税金の注意点は?』に続きます