皮膚・爪・髪の病気

急な皮膚炎で入院も!? よくある皮膚の炎症・蜂窩織炎とは

【皮膚科医が解説】切り傷ややけど、水虫などの傷口が腫れて痛くなる蜂窩織炎。子どものすりむきやひっかき傷などでも起こり、よくある症状ですが、悪化すると入院治療が必要になることもあります。自然治癒は稀なので、早めの受診と治療の開始が大切です。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

傷口からの腫れ・痛みが悪化? やけど、水虫が原因になることも

蜂窩織炎の原因になることもある足の傷

ちょっとした傷でも腫れや痛みがひどくなってきた場合は、早めに皮膚科を受診しましょう

傷口から腫れや痛みが出てきたと受診される患者さんが多い「蜂窩織炎(ほうかしきえん)」。蜂窩織炎になると、体の一部が赤く腫れて、痛みを伴います。やけどのあとの傷口や、水虫からの傷口など、原因は様々です。腫れが強いと入院になることもありますので、早めの治療が肝要です。
 

蜂窩織炎(ほうかしきえん)とは……原因・子どものすりむき傷からも

蜂窩織炎は、蜂巣炎(ほうそうえん)とも呼ばれ、皮膚の下の脂肪の組織が感染を起こす病気です。体のどこにでも起こる可能性がありますが、脚に最も多いです。通常は傷口から感染が深く広がることで起こります。
 
すりむいた傷、やけど、ひっかいたあとなど、どんな傷からでも起こる可能性があります。切り傷などの外傷でなくても、湿疹で荒れた箇所や、水虫で荒れた足指の間から腫れることもあります。
 
蜂窩織炎のなりやすさに年齢は関係なく、子どもも、虫刺されのかき壊しや、すりむいた傷から蜂窩織炎になることがあります。また、糖尿病など皮膚の感染を起こしやすくなる病気がある場合は、特に注意が必要です。
 

蜂窩織炎の症例画像・写真

蜂窩織炎の症例画像・写真

蜂窩織炎を起こした腕。全体的に盛り上がった腫れが確認できます

 

蜂窩織炎は感染する? 会社・会社に行っても大丈夫か

蜂窩織炎は皮膚の深いところが感染する病気です。そのため空気感染しないことはもちろん、腫れている部分に直接接触してもうつることはありません。ただし、膿が出ている場合やじゅくじゅくしている場合は、直接触るとうつる可能性はあります。
 
脚が腫れている場合は安静にしたほうが治りは早いですが、軽症であれば必ずしも学校や会社を休む必要はありません。
 

蜂窩織炎の自然治癒は稀・重症化する前に病院受診を

症状が軽度で腫れが少ない場合、自然治癒したケースも見たことがあります。ただ、通常は無治療では症状が悪化します。自然治癒を期待して放置し、腕や脚が赤くパンパンに腫れてから来院される患者さんも珍しくありません。症状がひどくなるほど治りにくくなるので、早めに抗生剤で治療することが大切です。
 
通常の蜂窩織炎はクリニックで処方される抗生剤の内服で治癒します。一番良く使われる抗生剤はペニシリン系もしくはセフェム系のものですが、これらが効かない菌が原因のこともあります。その場合は、ほかの抗生剤に変える必要があるので、3日ほど同じ飲み薬で腫れが引かない場合は必ず再診してください。腫れが強い場合は、炎症をとる意味で冷やすことも有効です。
 

蜂窩織炎で入院治療が必要になるケース・後遺症・リハビリ

通常の蜂窩織炎であれば、抗生剤の内服で治療が可能です。ただし、腫れが強い場合、発熱や倦怠感が強い場合、合併症で糖尿病など治りにくい要因がある場合には点滴治療のために入院が必要なケースがあります。そうならないためにも、腫れや赤み、痛みが広がらないうちに皮膚科を受診して治療しましょう。
 
入院で点滴治療になった場合には、通常1週間程度の点滴で改善します。蜂窩織炎で入院が必要になるケースは1割以下ですが、高齢者の場合、糖尿病や癌など悪化要因がある場合には点滴が必要になる可能性が上がりますので要注意です。
 
関節が近かった場合には腫れが長く残り、その後もしばらく関節の曲げ伸ばしに障害が残ることがあります。手首の関節が動きにくくなり、入院後にリハビリが必要になった患者さんを診たことがあります。
 
蜂窩織炎は特に糖尿病がある場合に悪化しやすいです。より深い部分まで感染が広がった場合、「壊死性筋膜炎(えしせいきんまくえん)」や「骨髄炎(こつずいえん)」という状態になり、足の指や脚を切断することになったり、集中治療室(ICU)への入院が必要になったりすることもあります。早めに治療すれば防げるものですので、傷の周りが赤く腫れている場合には早めに病院を受診し、適切な治療を受けるようにしてください。
 

蜂窩織炎の治療法・治療期間

蜂窩織炎の治療の基本は抗生剤の内服です。通常ですと、1週間程度で改善します。最初に使う抗生剤が100%効くとは限りませんので、3日ほどして効果を実感しない場合は必ずクリニックを再診してください。効かない抗生剤を続けても治らないので、変更する必要があります。
 
抗生剤の塗り薬は表面にじゅくじゅくした傷がある場合には一緒に使いますが、あくまで飲み薬のほうがメインの治療になります。蜂窩織炎は皮膚の深い部分の感染なので、皮膚表面の治療では効果は限定的です。
 
抗生剤内服で数日間治療しても効果が不十分な場合、腫れだけでなく倦怠感や発熱が強い場合、痛みが強い場合には抗生剤の点滴や入院が必要になることもあります。
 

蜂窩織炎がなかなか治らない場合に考えられること・蜂窩織炎に似た病気

蜂窩織炎と見分けが難しい病気として、脚の静脈に血栓が詰まってできる、「深部静脈血栓症(しんぶじょうみゃくけっせんしょう)」という病気があります。この場合は、脚が赤く腫れ、押すと痛いのですが、感染が原因ではありません。この場合は抗生剤の治療が効かず、別の治療法が必要です。採血や治療経過で診断がつくこともあります。
 
ほかには「下腿浮腫(かたいふしゅ)」といって、脚がむくむことによって痛みがでている場合があります。この場合は経過が長く、また片方だけではなく両方の脚に腫れと痛みが出ることが多いです。蜂窩織炎は通常、2~3日程度で腫れてきて、片方の脚だけに痛みが出ます。下腿浮腫の場合は赤みは強くなく、痛みも蜂窩織炎ほどは強くないのが特徴です。
 

蜂窩織炎は早期治療が肝心! 皮膚の腫れとあなどらず適切に対処を

蜂窩織炎は腫れが弱ければ抗生剤の内服で速やかに治すことが可能です。ただし、腫れが強い場合や糖尿病など合併症がある場合には重症になり、入院が必要になる場合もあります。たかが皮膚の腫れとあなどることなく、腫れや痛みがある場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
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