「結婚なんて信じてない」と軽やかに語る女性たち
結婚生活で悩む男女がいる一方、30代後半になっても「結婚なんて信用できない。自分の身は自分で守るだけ」と言いきる女性たちが増えているように思う。「ひとりで生きていくのが不安」「老後はどうなるんだろう」と不安はあるものの、「人間関係のストレスがいちばん心身に悪い」という結論に達するのだとか。
婚活をやめた2人のアラフォー女性たちに話を聞いてみた。
「結婚」という呪縛から解き放たれて……ユキコさんの場合
「どうして結婚しなければいけないと思っていたのか、今になるとわからないんですよね」
ユキコさん(39歳)はそう言ってほがらかに笑った。30歳から6年間、本気で婚活をしていたという。
「ネット上での婚活、リアルな結婚相談所、そして友だちや知り合いに紹介してと頼みまくって。一時期は週末すべてを婚活に注いでいました」
パーティーなどを含めると、どれだけの男性と会って言葉を交わしたかわからないという。それでもピンとくる人には巡り会えなかった。
「結婚、と思うと、目の前のこの人と毎日一緒に暮らしてセックスしてと、いろいろ想像するんですが、どうしてもそういうことができるとは思えなかった。そもそも、魅力的だからつきあいたいと思う人に会えなかった」
両親が不仲の家庭で育った。だからこそ、自分は「いい家庭」を作りたいと思っていた。20代では人並みに恋愛もしたが、やはりこの人と結婚したいと感じる男性はいなかった。
「めいっぱい婚活して36歳になったとき、私、結婚して何がしたいんだろうと思ったんですよね。どうしても子どもがほしいという強い願望があるわけでもないし、ひとり暮らしがつらいわけでもない。それなのに結婚しなければいけないと自分に課しているのはおかしいのではないか、と」
あらゆる婚活をやめてみた。週末はどこにも出かけず、家で本を読んだり好きな音楽を聴いたりした。慣れてくるとスポーツジムに通うようになった。毎週末、ジムで会う人たちと帰りに居酒屋に寄るのが楽しい。
「あれ、結婚してなくても楽しいわ、と。わかりませんよ、もしかしたらこの先、電撃結婚をするかもしれない(笑)。ただ、少なくとも結婚しなければならない呪縛から解き放たれて、気持ちがすごくラクになりました。会社の独身の先輩たちとも盛り上がっちゃって。今まで『結婚できない先輩たち』と思っていたけど、『結婚しない先輩たち』だった。人の生き方はいろいろ。頭でわかっていたけど、私は自分が『できない』人間だと認めたくなかったんですよね。本心は結婚したいわけではなかっただけなのに」
本心に気づいたとき、彼女が言うように人は生きづらさから抜けることができるのではないだろうか。
結婚がいいものだと刷り込まれていた……アサコさんの場合
今も結婚しない人より、する人のほうが多い。結婚はいいものだ、結婚すれば幸せになれると刷り込まれている部分もあるだろう。「これだけ多くの人たちが離婚しているのに、若いときは結婚さえすれば幸せになれる、結婚すれば人生がいい方向に転換すると思い込んでいるんですよね」
そう言うのはアサコさん(40歳)だ。20代のころからぼんやりとではあるが、「自分は結婚しないかもしれない」と思っていた。一方で、親や親戚からは「早く結婚しろ」と言われ続けたという。
「3年前、姉が離婚して子連れで実家に戻ってきたんですよ。最初は『恥ずかしい』『みっともない』と言っていた両親ですが、2カ月後くらいに私が帰ってみたら、孫ふたりとにぎやかに楽しそうに暮らしていた。姉も仕事をしながら生き生きしていて。母親なんて、私に『あんたは結婚しなくていいから、子どもだけ作っておけば?』と。あんなに結婚しろと騒いでいたのに、なに、この変わりようと呆れましたね」
人の価値観なんてそんなものだ、とも感じたという。姉の離婚以降、誰も彼女に結婚しろと言わなくなった。そうしたら「ぼんやり感じていたことは事実で、私は結婚したいと思っていなかった」という事実を自分で確認できたとアサコさんは笑った。
だがもちろん、結婚のようなものを否定しているわけではない。婚姻届を出さなくても誰かと一緒に暮らし始めるかもしれないし、交際ゼロ日で結婚するかもしれない。自分に起こる人生の変化を否定するつもりはないが、それは自然に任せようという気持ちが強くなっている。
「不倫だなんだと、結婚していると問題が起こる。結婚しなければ“不倫”も存在しないんですよね。だから結婚しないというわけではないけど、あえて結婚を選ばなくてもいいと思っています」
彼女もまた、人生をどう生きようが自分の自由だと心の底から言えるようになった。そしてそれが逆に一日一日を明るく前向きに生きようというエネルギーに変わっていったと話してくれた。