投資するなら、日本株は割高か
僕の専門は株式投資です。それもあり、株式投資に関するお問い合わせをよく受けます。中でも多いのが、「これから株式投資を始めたいのですが、もう日本株はバブルにならないのではないかと心配です。中原さんは、どう思いますか?」といった質問です。きっと、この質問者さんと同じように、用心深い人は「日本株は割高かも?」と心配しているはず。そこで今回は、この質問に回答する形で「日本株がバブルにならない可能性が高い理由」についてお話しします。
日本株はバブルにならない? そのワケとは
そもそもバブルの基準は?
議論をすすめる上で大切なのは、「そもそもバブルの基準はどこからか?」という点です。詳しい話に移る前に、まずはこの点から明らかにしておく必要があります。バブルの基準は曖昧で、人によって捉え方が違います。本記事では便宜上、以下の基準で「バブル」を判別することにします。
バブル:株を買うよりも、銀行にお金を預けた方がお金が増えること
一般に、株式投資の利回りは、「益回り」に近づく傾向があります(1)。
たとえば、毎年10億円を稼ぐ会社を100億円で買収できたとします。このときの益回りは「10億円÷100億円=10%」と表すことができます。つまり、元手100億円に対して、年率10%の利回りが期待できるということです。
「年率10%」という数字を見ると、「めっちゃ儲かる!」と感じるかもしれません。ですが、話はまだ続きます。年率10%が高いかどうかは、金利によって大きく変わるからです。
もし、預金金利が10%なら?
ここで、極端な例を考えてみます。まずありえないでしょうが、日本の預金金利が年率10%になったとします。僕らは、銀行にお金を預けるだけで、年率10%ずつ金利を受け取ることができます。この場合、株式投資で得られる「年率10%」という数字は、とても低く見えます。なぜなら、株式投資にはリスクがありますが、銀行預金にはリスクがないからです。
冷静に考えると、「リスクを取らないでも預金金利が10%もらえる」ときに、「リスクを取って年率10%のリターンを目指す」のはばかげています。ですが、金融史を振り返ってみると、このような状況が何度も繰り返されてきたのです。良い例が、1989年に崩壊した日本株バブルでしょう。
つまり、「金利の高さによって、株価の適正水準が変わる」ということです。この考え方は、FRB議長が示したFEDモデルなどにも応用されています(2)。
今の預金金利は「ほぼ0%」
とはいえ、ここまではあくまで例えばの話。今の日本を見ると、2021年3月現在の預金金利はほぼ0%です。銀行にお金を預けてもお金は増えません。リスクを取ることで年率1%でも利回りが期待できれば、バブルにはなりません。「株を買うよりも、銀行にお金を預けた方がお金が増えること」というバブルの定義から考えると、日本株はバブルになる可能性は非常に低いでしょう。
仮に日本株がバブルになるとすれば、以下の場合に限られます。
- 株価が短期間で数倍に上昇する
- 金利が急激に上昇する
- 日本企業の収益が急激に縮小する(または赤字化する)
今のところ、上記の一部が実現したとしても、株価がバブル水準となる可能性が低そうです。株価が3倍に上がり、金利が2%上がり、日本株の収益が今よりも縮小した場合は話が別ですが……。
財産はバランス良く分散を!
以上をまとめると、今の金利水準が続く限り、僕は「日本株はバブルにならない可能性が高い」と考えます。「未来は不透明だから株を買うのは怖い」という方もいますが、未来はいつだって不透明です。株を買わないことにもリスクはありますので、バランス良く財産を振り分けるのが大事でしょう。
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【参考文献】
- 論文:Robert J. Shiller, 2017, "The Many Colours of CAPE", Quantitative Investment Strategies, 13th Octover 2017
- 論文:Paulo Maio, 2013, "The Fed Model and the Predictability of Stock Returns", Review of Finance, 17, pp. 1489-1533