母親の介護に直面した、アラフォー独女の不安
高齢者夫婦や子どもが還暦を過ぎての「老老介護」がよく話題になるが、なかにはアラフォーで親の介護に直面する人たちもいる。仕事や結婚、そして介護。がんばりすぎる女性たちは将来をどう考えているのだろうか。
母の介護と結婚への不安
ひとりっ子で育ったアユミさん(42歳)。3年前に父が病死、その直後に母が脳梗塞で倒れた。今は身の回りのことは時間をかければ自分でできるようになったが、言語、記憶、そして判断力に多少の不安がある。「私もけっこう忙しい仕事をしているので、帰宅は夜9時くらいになってしまうこともあるんです。朝早く起きて、母の食事の下ごしらえはしておきます。夜6時にごはんが炊けるようにもしておく。母は朝昼兼用で軽く食べ、夕食は下ごしらえしてあるものを調理して食べています。お弁当の宅配なども考えたのですが、味の好みや栄養を考えると、やはり私が準備したほうがいいかなと思って」
夜遅くまでやっているスーパーに寄ることも多々ある。仕事の準備などが重なり、午前3時頃にやっとベッドへ入る日も。
「危険なのでガスはやめてIHにしたんですが、母はなかなか慣れてくれない。ときどきおかずを作れなくて、梅干しだけでごはんを食べることもあるようです」
母は洗濯はできても干すことがむずかしいので、乾燥機付きの洗濯機に切り替えたが、今度は使い方を習得できないという問題も生じている。
「怒ってもしかたがないので、母に合わせてゆっくり生活していくしかありません。とはいえ、気持ちが焦るからどうしても『なんでできないの』と言ってしまうこともあるんですけどね」
平日はひとりで外に出られないから、週末は母を車に乗せて行きたいところに連れていくこともある。外に出ると母も気分転換になるようだ。75歳の母と42歳の娘、つかの間の楽しい時間だ。
「母が喜んでくれると、私も張りが出ます。とはいえ、私もこの年齢で、この先どうしようかと不安になることも多いですね」
彼との関係
そんなアユミさんには、父が亡くなる前からつきあっている3歳年下の彼がいる。その彼が昨年から転勤で3時間ほどかかる場所へ行ってしまった。「月に1度は彼が会いに来てくれます。うちにも泊まって行きますよ。母も彼のことはよく思っているみたい」
結婚の話も出ていたのだが、彼の転勤で一時、棚上げしている。母を見捨てていくことも連れていくこともできそうにないからだ。
「彼が転勤から戻ってくるのはおそらく2年後くらい。延期になる可能性もありますしね。このままの関係がいつまで続くのか……。彼も待ちきれなくなるかもしれないし、そういうことがあったとしても私はひきとめることができません」
今のところ、彼とは毎日、連絡をとりあっているが、「いつか彼に他に好きな人ができるのではないか」という不安は強くなっているという。
「母には長生きしてほしい。本当にそう思っています。だけど母がいる限り、私は彼と一緒になれないのではないかという不安もある。もう子どもをもてる可能性も減っているし、彼は私以外の女性と一緒になったほうが幸せなのではないかとも思う」
さまざまなことを考えると、将来に希望がもてない。希望がもてない状況は、心を沈ませる。母を施設に預けることも考えるが、それほど重篤な状況でもなく、経済的にも余裕がない。考えれば考えるほど、気持ちが晴れないというアユミさん。他人事ではないと思う人も多いのではないだろうか。
「気軽に入れて、安心して預けられる場所があればいいけど。特養老人ホームも尋ねてみたんですが、2年待ちだと言われました」
凄まじい勢いで高齢化しているこの社会で、親のことを無視して結婚できる人はどんどん少なくなっていくのではないだろうか。